QAコミュニケーションアンチパターン 2章 再始動するチーム・メビウス
再始動するチーム・メビウス
黒々さんと大榊さんの話し合いから2週間後。
「チーム・メビウスは、この2週間で通知登録機能を作り上げました。この調子だと、編集機能と削除機能、さらに通知そのものの機能も完成しそうです。先行着手している部分を見る限り、そんなに時間はかからないでしょう。」
「そ、そんなわけない。設計だけで3ヶ月はかかるはずだ。」
「でも、実際に動いていますよ。」
「見かけ上、そう見せているだけですよ。」
「スプリントレビューに参加しましたよね?黒々さんの質問に答える形で、データフローも見せてくれました。疑う余地はないと思いますが。」
「まさか…」
「ゼロベースで開発する狙いは、俗人化の解消とナレッジの共有です。それがうまくいったということです。」
「そんな…」
「プロダクトバックログやスプリントバックログにはストーリーポイントもついていて、見積もりもされているので、ある程度の予測が立てられます。透明感が全然違います。以前の開発の問題点は、進捗状況が見えなかったことです。」
「…」
「進捗を聞いても毎週80%だと言われ、さらに深く聞くと『難しい機能で時間がかかっている』という説明でした。」
「…」
「黒々さんの経験を、今のチームで活かしませんか?」
「あ、いや…」
どんなやり取りがあったかはわからないが、黒々さんは別のプロジェクトに移動となり、チーム・メビウスが再始動した。
そして、新たにQAメンバーを迎えることになった。第三者検証会社から来ていただくことになった。
「QAの来世でーす!よろしくお願いしまーす!」
「ウォー!」
先輩たち3人が大喜びしている。QAの採用を含め、人材のアサインに困っていたが、意外にも大榊さんの紹介だったそうだ。お子さんも大きくなり、仕事に復帰されたらしい。リモートで仕事ができることで、こういったメリットもある。来世さんならフルリモートでも問題ない。たまにオフィスに来てくれるし。
こうして、また、あの時のチームのような雰囲気で仕事ができるようになった。
半年後、一つのプロダクトに通知機能をリリースできた。大きなバグもなく、以前のプロジェクトでは2年かかっても何一つリリースできなかったが、今回は自分たちのチームが初めてリリースに成功した。他のチームの士気も上がっているそうだ。
大変なこともあるが、このチームなら乗り越えられるだろう。
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