世帯単位でセグメンテーションとアクティベーションをやってみた
はじめに
個人の単位ではなく、世帯の単位でセグメントを切って、マーケティング施策を行いたいと思ったことはありませんか。
ちなみに、このブログのタイトルに含まれている「セグメンテーション」と「アクティベーション」というキーワードですが、Data Cloudでは下記の意味で使われます。
- セグメンテーション:顧客データを分析して、顧客を共通の特性を持つグループ(セグメント)に分けるプロセスを指します。
- アクティベーション:セグメンテーションによって作成された顧客セグメントに対して具体的なマーケティングアクションを実行するプロセスで、より具体的には、セグメントに含まれる顧客レコードに対して、パーソナライゼーションに必要な情報を付加した上で、MA(Marketing Automation)システムなどに連携することを指します。
この記事では、Data Cloudを使用して世帯統合(同じ世帯に属する個人を統合するプロセスのこと)を行い、その上で世帯単位でセグメントとアクティベーションを実施する方法について解説します。この記事を通じて、Data Cloudの世帯統合の価値と設定手順を理解していただければと思います。
なお、世帯単位でのマーケティングの価値については、こちらの記事がわかりやすいと思いますので、合わせてご参照ください。
具体的な設定手順と実行結果の確認
では、ここから具体的な設定手順の説明に移ります。CRM上の取引先(Contact)オブジェクトに格納されている顧客情報がSalesforce CRMコネクタを利用してData CloudのDMOに取り込まれている状態からスタートします。
世帯単位でセグメントテーションおよびアクティベーションを行うには、統合世帯が必要で、統合世帯には統合個人が必要になります。したがって、大きく下記の設定および処理が必要になります:
- 統合個人の作成(ID解決機能を利用)
- 統合世帯の作成(ID解決機能を利用)
- 統合世帯に対するセグメントの作成(セグメント機能を利用)
- 作成したセグメントに対するアクティベーション(アクティベーション機能を利用)
この説明のために今回こちらの2つの顧客レコードを準備しました。住所と姓は同じですが、名は異なります。また、取引先ID(Contact ID)をキャプション内に記載しておきます。スクリーンショットには表示されていないのですが、後でデータをクエリする際に使用します。

顧客1:田中 一郎さん (Contact ID: 003KZ00000GCizNYAT)

顧客2:田中 二郎さん (Contact ID: 003KZ00000GCizMYAT)
1. 統合個人の作成
ID解決機能を利用して、個人(Individual)から統合個人(Unified Individual)を作成します。今回は標準で提供されている名前とEメールアドレスで同一顧客かどうかを判断するマッチングルールを利用しています。

個人統合用のID解決ルールセット

個人統合用のマッチングルール
2. 統合世帯の作成
再びID解決機能を利用して、今度は統合世帯を作成します。
こちらも、マッチングルールは、標準で提供されている、姓と住所を利用して同一世帯かどうかを判断するものを利用しています。

世帯統合用のID解決ルールセット

世帯統合用のマッチングルール
ここで、データを確認したいと思います。クエリを考えるにあたりこちらのER図が参考になります。

UnifiedHousehold-UnifiedIndividual間のER図
ER図を参考に、田中 一郎さんと田中 二郎さんのContact ID(=Individual ID)を指定してクエリを実行すると、下の結果が得られました。統合世帯のIDが格納されている"UnifHouseholdId__c"列のデータは同じですが、統合個人のIDが格納されている"UnifiedRecordId__c"列のデータは異なっていることから、田中 一郎さんと田中 二郎さんは別の顧客として認識されているが、同じ世帯であると認識されていることがわかります。

Query Editorでのクエリ結果
クエリに利用したSQLはこちらです。簡略化している部分があるため、参考程度にご活用ください。
SELECT
"UnifiedHousehold__dlm"."UnifHouseholdId__c"
,"UnifiedLinkssotIndividualIdi1__dlm"."UnifiedRecordId__c"
,"ssot__Individual__dlm"."ssot__Id__c"
,"ssot__Individual__dlm"."ssot__FirstName__c"
,"ssot__Individual__dlm"."ssot__LastName__c"
FROM
"UnifiedHousehold__dlm"
,"HouseholdMemberLink__dlm"
,"ssot__Individual__dlm"
,"UnifiedLinkssotIndividualIdi1__dlm"
WHERE
"UnifiedHousehold__dlm"."UnifHouseholdId__c" = "HouseholdMemberLink__dlm"."UnifHouseholdId__c"
AND "HouseholdMemberLink__dlm"."SourceRecordId__c" = "ssot__Individual__dlm"."ssot__Id__c"
AND "ssot__Individual__dlm"."ssot__Id__c" = "UnifiedLinkssotIndividualIdi1__dlm"."SourceRecordId__c"
AND "ssot__Individual__dlm"."ssot__Id__c" IN ('003KZ00000GCizNYAT', '003KZ00000GCizMYAT')```
3. 統合世帯に対するセグメントの作成
統合世帯ができたので、いよいよセグメントを作成します。
今回は、ご家族のうち誰か1人でも東京都に住まわれているご家族を対象にセグメントを作成します。UI上で件数をカウントしたところ、想定通り1件抽出できていることが確認できました。

セグメント作成画面
今回、セグメント作成時にスケジュール設定で"Not Published"を選択したので、自動的にセグメント作成が実行されません。このような場合は、画面右上のメニューから"Publish Now"を選択して、明示的にセグメント作成を開始することをお忘れなく。

セグメントの公開実行メニュー
セグメントのデータは"<Segment Onで指定したDMO> - Latest/History"という名称のDMOに格納されます。Data Explorerで"Unified Household - History" DMOのデータを確認したところ1件格納されています。

セグメントのデータ確認
4. 作成したセグメントに対するアクティベーション
最後にアクティベーションを行い、パーソナライゼーションに必要な情報をセグメントに付加して、外部システムに出力します。今回は、アクティベーション先をData Cloudとし、Data CloudのDMOにアクティベーションされたデータを出力したいと思います。
まず、アクティベーション・ターゲットを作成し、次にアクティベーションを作成します。

アクティベーション・ターゲットの設定画面
Activation MembershipにはUnified Householdを選択します。こうすることで、世帯に対して1つの宛先のみがData Cloudに出力されます。

アクティベーション・メンバーシップの選択画面
アクティベーションタイプにEメールを選択します。Eメールなので、出力する項目にEメールアドレスが自動で追加されます。

アクティベーションタイプの設定画面
また、それ以外にセグメントの各レコードに対して必要な情報を付加します。今回は姓(Last Name)を追加します。

追加で必要な情報の選択画面
設定後のアクティベーションはこちらのような感じです。

アクティベーション画面
アクティベーションはセグメントの作成(公開)をトリガーにして実行されるよう設定されているため、セグメントの作成で行ったように、セグメント画面右上のメニューから"Publish Now"を選択します。しばらくすると、アクティベーションの実行が終了します。ステータスはアクティベーション画面の"Insights"タブで確認できます。

アクティベーションの実行結果確認画面
最後に、アクティベーションされたデータを確認します。アクティベーションされたデータは"Activation Audience - <Activation Target Name>"という名前のDMOに格納されます。
今回のケースでは、アクティベーション・ターゲットの名前を"Data Cloud"と設定したので、アクティベーションされたデータは"Activation Audience - Data Cloud" DMOに出力されます。
実際のデータは"Activation Record"列にJSON形式で格納され、追加した属性であるEメールアドレスや姓(Last Name)が含まれていることがわかります。

アクティベーションで出力されたデータの確認画面
まとめ
世帯単位でマーケティング施策を行うために必要な対象顧客を世帯単位で抽出し、出力するところまで行ってみましたが、いかがでしたでしょうか。
これらの一連の作業がノーコード・ローコードで行えてしまうので、マーケティングチームだけで行えるところがData Cloudの良さだと思います。
Data Cloudにはまだまだ使える機能がたくさんありますので、色々と触ってみてください。
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