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自分より"できる人"たちをマネジメントしてきたことを振り返ってみる

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カウンターワークスの松浦です。
普段はシステム統括部という全社的なシステムのプラットフォームの構築、イネイブリングを支援するチームのマネジメントを担当しています。
私事にはなりますが、入社して気づけば2年6ヶ月が経過し、酸いも甘いも噛み分ける様々な経験を積んできました。
その中で感じた雑感をつらつらと書いていければと思います。
これからマネジメント業務に就かれる方やマネジメント業務に興味がある方がいれば、本当に少しでも参考になれば幸いです。
(重ね重ねですが、本当に雑感レベルです。)

入社時

入社時、先述したシステム統括部は元々は共通基盤という名称のチームでした。(2023年10月にシステム統括部という名称に変更)
名称は変われど、根本の役割は変わらず全社的なシステムのプラットフォームの構築、イネイブリングを支援するチームです。
チームの役割的にも、経験年数も技術の幅も深さもCTOクラスと言えるエンジニア達が集うチームでした。
私は最初からマネージャーとして入社したわけではありません。
ただ、チームマネジメントを任せていく前提の立場で、短いスパンで実際にマネジメントを任されることになりました。
ただ正直に言うと、入社直後は何をしていいか、自分には何ができるのか分かりませんでした。

入社直後からの挫折

転職直後なので、当たり前と言えば当たり前ですが、まずドメイン知識がありませんでした。
複数のプロダクトの実情を知る必要があるのに、どのプロダクトも「なぜこの設計になっているのか」「なぜこのサービスを使っているのか」が分からない。
いわゆる歴史的経緯というやつです。

技術スタックも、自分が触ったことのないサービスばかりでした。
弊社ではCloudflareやVercel、Sentryなどを利用しているのですが、名前は知っていても実務で触った経験はこれまでありませんでした。
そんな状態で他チームから問い合わせが来ます。
答えられない。判断できない。

結果、メンバーに丸投げしてしまうことが多々ありました。
丸投げしたとき、メンバーは普通に受け入れてくれましたし、メンバーは皆さん人間的にも成熟しているので、嫌な顔をされたことは一切ないです。
ただ、普通に受け入れてくれるからこそ甘えてしまう面がありましたし、それで自分は良いのか?
指示を出すにも自分より詳しい方々に指示を出していいのか、という葛藤は常にありました。

教科書的には、できない自分を受け入れることが大切と言われますよね。
マネジメントの本や記事には、大抵そういうことが書いてある印象があります。
いや、それができたら苦労しない。
「できない自分を受け入れることができない」という状態が、入社から暫く続いた気がします。

腹を括る

こんな状態が半年は余裕で続きました。
なんなら1年くらい経ってようやく、という感覚もあります。

何もできない状態から変わっていったきっかけは何だったか?
元も子もないですが、やるしかなかったからだと思います。
当時、日中のフルタイムのコアタイムで動けるのは私だけでした。
メンバーは素晴らしい方々ばかりと言ってもフルタイムではなかったので、常に対応できるのは自分しかいません。
だから、分からなくてもとりあえず動く、声を上げる。
チームを巻き込んで解決に向けて動くしかありませんでした。

例えば、歴史的経緯で構成が特殊な案件があります。
お客様環境も絡んでくる構成で社内で完全に再現できない環境で、トラブルシュートを一刻も早く求められるケースがありました。
自分一人では、過去経緯もわからなければ技術ノウハウもわからない状態で歯が立たない。
だからチーム全員に半ば無理やりにでも協力お願いしますと声を上げて、全員で協力して解決に向かうしかありませんでした。

自分の無力感との葛藤はありました。
でも手をこまねいているわけにはいきません。
そうやって業務で触れていくうちに、サービスの特性だけでなく、ドメイン知識や歴史的背景の理解も少しずつ深まっていきました。
時間をかけて、ようやく自信を持って判断を下せる場面が増えていきました。
自信がついたから動けるようになったという順序ではありませんでした。
動かざるを得ない状況だったから動いた。その結果、知識がついてきたという順序だったと思います。
銀の弾丸で一足先に飛ぶことはできず、サバイブしていくしかなかった結果かと思います。

振り返ってみて

振り返って、自分だからできたことは何かあるかなと考えました。
ただ正直、思い浮かびません。

チームメンバーに助けられただけ、というのが素直な感想です。
当たり前と言えば当たり前ですが、入社直後にドメイン知識に加え、触れてこなかった技術全般に精通し、これまで触れてきた人をすぐに追い越すのは、スーパーな人でも中々難しい。
私は全くスーパーではないので、尚のことです。

ただ、逆説的かもしれませんが、自分ができなかったからこそ、早めに人に頼ることができたのかもしれません。
自分で全部やろうとしなかった。というか、できなかった。
だから最初から「お願いします」と言えた。
それが結果的にチームとしてうまく回るようになった理由なのかと感じています。
巷のマネジメント記事では、「自分の強みを見つけて活かしました」みたいな話になります。
ただ私の場合は、強みを見つけたというより、弱みを隠せなかった、足掻くしかなかったかもしれません。

学び

入社後にも、新卒が入社しましたが、新卒も技術的な素養が元からあることもあり、グングン伸びていき、私よりも彼に直接依頼が来ることも度々あります。
さらに直近でCTO実績が実際にあるメンバーが加入したりと、チーム構成は変わっていきました。
自分よりできる人たちという状況は変わらないどころか、むしろ加速しています。

入社時から自分よりできる人たちをマネジメントしてきた2年半を通じて、自分なりに見えてきたことがあります。
できるからマネージャーではなく、知らない前提でもがいて解決していくしかないのがマネジメント職なのかなと。

入社当初は自分が一番詳しくないとマネージャーとして成り立たないと思っていました。
私が前職でこれまで所属してきたチームでは、基本的に一番できる人がリーダーとなっていたことが大きいと思います。

ただ実際は逆でした。
私ができなかったからこそ、あらゆる手段を駆使して問題解決に向かっていけたと思います。
最初は「マネジメント職が正解を示さなければ」、「自分が一刻も早く一番できるようにならなければ」と焦っていました。
ただ、このチームに正解を示す必要はなかったことに本記事を書いていて改めて気づきました。
メンバーは自分で正解にたどり着ける人たちでした。
自分がやるべきだったのは、その人たちが動きやすい空気/環境を作ることだったのかなと、今は思います。

できないことを隠そうとしていた時期は、正直しんどかったです。
でも途中から「できません、助けてください」と言えるようになってから、むしろ楽になりました。
自分が強い必要はない、変に壁を作らない。
透明でありコトに向かっていったことが、結果的に私もチームも醸成していったのかと思います。

最後に

再現性があるかどうかだと正直ないです。
ノウハウではなくほぼ精神論になってしまいましたが、ドメイン知識やサービスの経験がない中だと、行き着くところは結局やるしかない精神なのかなと思います。

もし今、同じような状況で悩んでいる方がいたら、伝えたいことがあります。
自分より優秀な人たちをマネジメントするのはしんどいです。
正直、今でもしんどい時は全然あります。
でも、できないことは恥ずかしいことではないし、頼ることは弱さではない。
むしろ、早めに「助けてください」と言えることが、チームを前に進める一番の近道だったりします。

偉そうなことは言えませんが、2年半もがいてきた人間の実感として、それだけは伝えておきたいです。

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