軽量分子軌道ビューア MOrbVis をリリースしました
こちらも御覧ください
はじめに
量子化学計算の結果を可視化したいとき、どんなツールを使っていますか?
多くの場合、GaussView や Avogadro、Molden などのデスクトップアプリケーションを使うことが多いと思います。しかし、これらは環境構築が必要だったり、OSが限定されたりと、手軽に使えるとは言い難い面もあります。
MOrbVis は、Molden 形式や Gaussian Cube 形式のファイルを読み込んで分子軌道の等値面を3Dで表示するツールです。ブラウザ上で動作するため、インストール不要ですぐに使い始めることができます。Windows 向けのデスクトップアプリも用意しています。
以下のURLからすぐに試せます:
ソースコードは GitHub で公開しています:

動画への書き出しもサポートしています:
主な機能
分子軌道の3D可視化
Molden ファイルや Cube ファイルを読み込むと、分子構造(Ball-and-Stick モデル)と分子軌道の等値面(正・負)が3Dで表示されます。マウスで回転・ズームしてさまざまな角度から確認できます。
電子密度の可視化
占有分子軌道から電子密度を計算し、等値面として表示できます。MO / 密度のタブで切り替え可能です。
断面図 (Cross-section)
XY / XZ / YZ 平面でのスカラーフィールドの2D断面をピクチャー・イン・ピクチャーで表示できます。バイリニア補間による高品質なカラーマップ描画、等値線の表示、断面上の原子位置の表示にも対応しています。
エネルギーダイアグラム
全分子軌道のエネルギー準位を棒グラフで可視化します。占有 / 非占有 MO の色分けや HOMO-LUMO ギャップの表示に対応しています。
MO 比較
2つの分子軌道を同時に表示して比較できます。選択中の MO はソリッド、比較対象はワイヤーフレームで表示されます。
描画のカスタマイズ
見た目を細かく調整できます。
- 等値面の値(Isovalue): スライダーで等値面のしきい値を調整
- グリッド解像度: 計算の粗さ・細かさを変更
- レンダリングプリセット: Standard、Matte、Glossy、Glass、Toon、Minimal の6種類
- HQ モード: SSAO(Screen Space Ambient Occlusion)と Bloom エフェクトによる高品質レンダリング
- カラースキーム: 正・負の等値面の色を複数のパターンから選択
- 表面モード: Solid、Wireframe、Solid+Wire の3種類
- 背景色: カラーピッカーで自由にカスタマイズ可能
- ライト/ダークモード: UIの表示テーマを切り替え
分子表示のカスタマイズ
- 原子・結合サイズ: スライダーで調整可能
- 原子ラベル: 原子記号の表示/非表示
- 原子カラー: 周期表UIで各元素の表示色を個別にカスタマイズ可能
エクスポート機能
- PNG 保存: DPI スケール(1x〜4x)と透明背景オプションに対応。論文やプレゼン資料に使えます。
- バッチエクスポート: 複数の MO を一括選択し、各 MO の PNG 画像を ZIP アーカイブとしてダウンロード
- 動画録画: 3D ビューの自動回転を WebM 動画として録画。回転数・方向・速度を設定可能
- Cube ファイル出力: MO / 密度のスカラーフィールドを Gaussian Cube 形式でエクスポート
- STL 出力: 等値面メッシュをバイナリ STL で出力(3D プリント等に対応)
インタラクション
- 自動回転: 方向(CW/CCW)と速度を調整可能
- フルスクリーン: ワンクリックでフルスクリーン表示
- 原子間計測: 2点間距離(Å)や3点間角度(°)を計測
-
キーボードショートカット:
?でヘルプ表示、←/→で MO 切替、Spaceで HOMO にジャンプ
多言語対応
英語 / 日本語の2言語に対応しています。ヘッダーの EN/JA トグルで切り替えできます。
サンプル分子
48種類のサンプル Molden ファイルが組み込まれているため、手元にファイルがなくてもすぐに試すことができます。追加のサンプルファイルは GitHub の Releases ページからダウンロード可能です。
使い方
今すぐ試す
以下のURLからアクセスすれば、すぐに試せます:
Windows デスクトップアプリ
Windows 向けのインストーラを Releases ページで配布しています。ダウンロードしてインストールするだけで使えます。
ブラウザで使う(ソースから実行)
Node.js (v18以降) がインストールされている環境であれば、以下のコマンドで起動できます。
git clone https://github.com/Yasuaki-Ito/morbvis.git
cd morbvis
npm install
npm run dev
ブラウザで http://localhost:5173 を開くと、MOrbVis が起動します。
対応ファイル形式
Molden 形式
Molden 形式 は、分子の座標・基底関数・分子軌道係数をテキストで格納するフォーマットで、多くの量子化学プログラムが出力に対応しています。
対応が確認されているプログラム:
Gaussian Cube 形式
Gaussian Cube 形式は、3次元グリッド上のスカラーフィールドデータを格納するフォーマットです。Gaussian をはじめ、多くの量子化学プログラムが出力に対応しています。
なお、MOrbVis に同梱されているサンプルファイルは GANSU を使って作成したものです。
技術スタック
| 項目 | 技術 |
|---|---|
| UI | React + TypeScript |
| 3D 描画 | Three.js (React Three Fiber) |
| ポストプロセッシング | @react-three/postprocessing (SSAO, Bloom) |
| MO / 密度計算 | Web Worker による非同期処理 |
| 等値面抽出 | Marching Cubes |
| バッチエクスポート | JSZip |
| デスクトップ版 | Tauri (WebView2) |
計算処理は Web Worker で行うため、ブラウザがフリーズすることなく、計算の進捗がリアルタイムで表示されます。
おわりに
MOrbVis は BSD-3-Clause ライセンスで公開しています。
分子軌道を手軽に可視化したい方はぜひ試してみてください。
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