AI時代こそソフトウェアエンジニアは英語を学ぶべき2つの理由
今日が誕生日のnu2 です。こちらは株式会社ココナラ Advent Calendar 2025 7日目の記事です。
冒頭:3行まとめ(TL;DR)
この記事の要約
- 結論: AIを高度に使いこなしたいなら、翻訳機能に頼らず英語で直接指示を出した方が幸せになる。
- 理由1(量): LLMの学習データの大半は英語であり、英語で思考させた方が推論精度が高い。
- 理由2(構造): 英語の文法はRubyなどのコード構造と酷似しており、バグのない「擬似コード」として機能する。
はじめに:翻訳ツールがあれば「十分」でしょうか?
「DeepLやChatGPTの翻訳機能がこれだけ進化すれば、これからのエンジニアに英語学習は不要になる」
そうお考えの方も多いかもしれません。しかし、私は少し違った見方をしています。
「AIという強力な演算装置を使いこなすためにこそ、英語というインターフェースを直接叩く必要がある」 と考えているからです。
これからのエンジニアにとって、英語は単なるコミュニケーションツール以上に、LLM(大規模言語モデル)のポテンシャルを100%引き出すためのプロトコルとしての重要性を増しています。今回はその理由を、技術的側面とキャリア生存戦略の両面から解説します。
Reason 1: 学習データの偏りと「翻訳」というノイズ
まず、LLMのアーキテクチャ上の事実として、「AIにとって英語は母国語であり、日本語は第二言語である」 という点は無視できません。
- データ量の非対称性
GPT-4やClaude3など、主要モデルの学習データは圧倒的に英語が占めています。日本語のデータも含まれていますが、AIの「思考の解像度」は、英語で推論させている時が最も高くなります。 - 翻訳による不可逆圧縮
日本語で思考し、日本語で出力させるプロセスは、内部的に「概念の変換」というオーバーヘッドを伴います。技術文書やエラーログを翻訳してAIに入力し、返答をまた翻訳する。この伝言ゲームの中で、エンジニアリングに不可欠な「厳密性」が失われるリスクがあります。
Reason 2: 言語仕様の「ハイコンテキスト」問題
エンジニアとして最も強調したいのが、言語仕様の違いです。
日本語特有の「察する文化(ハイコンテキスト)」は、AIへの命令言語としてバグを生みやすい性質を持っています。
- 日本語: 主語の省略、述語の先送り、文脈依存。
→ AIは隠されたパラメータを「確率的に推論」しなければなりません。 - 英語: SVO(主語・動詞・目的語)の強制、ローコンテキスト。
→ 誰が、何を、どうするかが構文レベルで縛られます。いわば**「Strictモード」でコードを書く感覚**に近く、AIの解釈揺れを最小化できます。
Example 1: 英語公用語化企業の「AI実装」における優位性
この「英語×AI」の親和性は、個人の生産性だけでなく、企業の競争力にも直結しています。
すでに社内公用語として英語を採用している楽天グループやメルカリのようなテック企業が、純粋な日本企業に比べてAI活用で先行している事実をご存知でしょうか。
彼らがAI活用において有利な理由は明確です。
- 社内ドキュメントが「英語」である
社内ドキュメントや仕様書、Slackのログが英語で蓄積されているため、AIにコンテキストを読み込ませる際のトークン効率が良く、翻訳プロセスなしで高精度な検索・応答が可能になります。 - グローバルなエンジニアリング文化
例えばメルカリでは、開発組織の公用語として英語が浸透しており、GitHub CopilotなどのAIツール導入もスムーズでした。楽天も自社特化のLLM(Rakuten AI 7B)を公開しましたが、これも膨大な英語データセットと多言語対応の基盤があったからこそ成し得たスピード感と言えます。
日本語ベースの企業が「翻訳レイヤー」の実装や「日本語特有のトークン肥大化」に苦戦している間に、英語ベースの企業はダイレクトにAIの能力を開発プロセスに組み込んでいるのです。
Example 2: 英語はそのまま「擬似コード」になる
個人のコーディングにおいても、英語の優位性は明らかです。Rubyistの方なら直感的にご理解いただけるかと思いますが、英語のセンテンスはそのまま実行可能なコードの構造を持っています。
- 日本語思考: 「ログインしてなかったらエラーにして」(エラーとは? 例外? false? 解釈が揺れる)
-
英語思考:
Raise AuthenticationError unless user is signed in.
英語で思考することは、自然言語で精度の高い擬似コード(Pseudo-code)を書いているのと同義です。論理構造の変換ステップがゼロになるため、AIへの指示精度が劇的に向上します。
Tips: TOEIC L&Rで「語彙」という武器を増やす
では、具体的に何をすべきか。私はTOEIC L&Rの学習を通じて語彙(Vocabulary)を増やすことをお勧めします。
「今さらTOEIC?」と思われるかもしれませんが、これには2つの明確な効能があります。
1. スキルとしての効能:プロンプト解像度の向上
LLMへの指示出しにおいて、適切な動詞や形容詞を知っているかどうかは、出力の質を決定づけます。
TOEICで頻出するビジネス英語や論理的な構文は、スラングの多い日常会話よりも、AIが学習元としている「整った英語テキスト」に近いため、プロンプトとして非常に相性が良いのです。
2. 環境としての効能:高年収とAI活用環境の獲得
TOEIC高得点は、英語を常用する外資系企業やグローバルテック企業(前述の楽天やメルカリなど)への転職パスポートになるでしょう。
- 年収アップ: 一般的に、英語必須のポジションは年収レンジが高い傾向にあります。
- AIフレンドリーな環境: 英語が飛び交う職場に身を置くことで、英語で情報を検索し、英語でAIを叩くことが「当たり前」になります。この環境要因こそが、AIスキルを飛躍させる最大の加速装置になります。
Conclusion: 英語を「実装」しましょう
AIがいかに進化しても、その深層にある論理構造が英語ベースである事実は変わりません。
- 翻訳APIという中間レイヤーを排除し、ダイレクトにモデルの知能にアクセスする。
- 「英語力」を磨くことで、よりAIを活用しやすい企業・環境へと自分自身をデプロイする。
これらはもはや単なる語学学習ではありません。「自身のエンジニアとしての市場価値と、AI操作能力を最大化するための実装」 です。
AIに「よしなに」と日本語で祈るのをやめ、英語という正確な仕様書を渡せるエンジニアになりませんか?
いかがでしたでしょうか?今回の投稿はもはやタイパ重視で記事全文を読む事は稀でありAIに要約してもらった文章を読まれる事を想定に「AIに読ませることを意識した」文章構造にしてみました。
明日は卍ちゃんによる記事です。
ココナラでは積極的にエンジニアを採用しています。
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Appendix:
今年無事。
今年も無事にこのフレーズをAdvent Calendar に投稿する事ができました。
というかその為だけに記事を投稿したまである。
今年もILL-BOSSTINO の言葉を捧げます。
皆さま良いお年をお迎えください。
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