短時間のLLM対話で見る思考の癖
新年になって、昨年のNotionを漁っていた。
その中に「超高速探究学習」というメモがあり、久しぶりにやってみることにした。
私がよくやっていたこの超高速探究学習は、
15分という時間制限のなかでLLMを相手に問いを投げ、思考を回す遊びに近い。
正解を出すことは目的にしていない。
最初にやるのは、始点と終点を決めることだけ。
短時間で間をどう繋ぐかを考える。
今回の始点は「魔法少女」。
多くの魔法少女は、普通の日常を送っていたところから物語が始まる。
ある日突然なにかに巻き込まれ、「実は素質がありました」と告げられる。
本人はそんな力があるなんて思っていなかったのに、気づいたら戦っている。
なぜあんなに早く適応できるのか。
魔法少女は最初、だいたいこう言う。
「なにこれ!?聞いてない!」
「意味わかんないんだけど!」
それでも体は動いている。
説明より先に行動が出る。
戦いが終わってから「なんだったの今の……」と我に返るけど、
拒絶しきる前に一歩踏み込んでしまっていることが多い。
この「理解より先に動ける」構造を今回の論点にしてみる。
周知の通り、LLMは文脈を補完して会話を前に進める方向に返してくる。
多少ロジックが荒くても、「通った感じ」に整ってしまうことがある。
普通に考えると、これは危ない性質だ。
出力をそのまま信じると、だいたい事故る。
モデルが進化して幻覚が減ったとしても、
「それっぽく整える」性質自体は残る。
だから、出力は最初から“根拠にしない”前提で扱う。
ただし、15分という制限をかけた探究では、
この性質を逆に使うことができる。
一発目に投げるのは、自分の中でも整理できていない雑メモ。
論理には穴もあり、前提も抜けている。
それでも返ってくる文章は、だいたい整っている。
一応「通った感じ」がする。
ここで起きているのは、粗い論理が通っていく錯覚に近い。
長時間これをやると危険だが、短時間ならちょうどいい。
否定されにくいので止まらないし、とりあえず思考は前に進む。
完璧主義で「考え始められない」状態を抜ける用途としては、かなり強い。
時間制限も効く。
15分は、ちゃんと考えるには短すぎる。
調べきれない。検証できない。正しさを確認する余裕もない。
でも「なにか出さないと終わる」という圧はある。
その結果、人は理解より先に反応する。
魔法少女が「なにこれ!」と言いながら戦ってしまうのと、
かなり近い状態が起きているのかもしれない。
何度か問いを投げるうちに、
全部を考えているつもりでも、
毎回触っているポイントが限られてくる。
・ここは毎回気になる
・ここは毎回スルーしている
・ここは無視しても平気だ
自分が何を選び、何を無視しているのかが、はっきりしてくる。
この時点では「要素を分解しよう」などとは考えていない。
でも後から振り返ると、ちゃんと要素らしいものが浮いている。
・何に集中したか
・何を無視したか
・どこで足を止めなかったか
それが、そのまま構造になる。
実務的にやるなら、それをメモしておくと再現しやすい。
たとえば、
・整合性(設定、ルール)
・感情(誰の感情を優先したか)
・安全性/倫理
・コスト/時間
・実装可能性
・誰が得するか(利害)
ここで、この癖が普段のLLMの使い方にも影響していることに気づく。
私は普段、いきなりLLMの出力を全文読むことはほとんどない。
コーディングやプログラミング支援を除けば、
だいたい数秒で「読む/読まない」を判断している。
ざっと眺めて見るのは、
・筋がありそうか
・論点が拾えそうか
・前提がズレていそうか
・断定が強すぎないか(条件が書けているか)
正しさはここでは見ない。
全文も精読しない。
根拠として採用するかどうかは、後で一次情報に当てて決める。
この判断の癖が、思考の立ち上がりを早くする。
LLMの出力を結論として扱わない。
でも、捨てもしない。
仮置きとして置く。
「これは違うかもしれない」
「でも今はこれでいい」
信じない=根拠にしない。
でも思考の素材としては使う。
依存しないけど、拒絶もしない。
魔法少女が非日常に適応できるのも、
納得したからではない。
拒絶する前に「自分が反応できた」という事実が先に積まれるからではないか。
人はやってしまった自分をあとから完全に否定するのが難しい。
しかもそれが短時間で、誰にも評価されず、
自分の判断で動いたものならなおさら。
15分探究も同じで、終わったあとに残るのは正しさではない。
「ちゃんと考えていた」という感覚や、「自分はこういうところに反応する」という手応え。
それが次の思考の足場になる。
今回の終点は、この「超高速探究学習」そのもの。
始点として置いた魔法少女から、終点へ向かって思考を回してみる遊び。
粗くてもつながったなら、そのつながり方自体が今の自分の思考の形を表すものになる。
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