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第4回:VBA開発の注意点 〜陥りやすい落とし穴〜 VBA一人情シス

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Excel VBAで業務効率爆上げ!一人情シスが語る「真の使えるアプリ」の作り方

第4回:VBA開発の注意点 〜陥りやすい落とし穴〜


1. 「動けばOK」の罠: 保守性を欠いたコードの危険性

前々回、そして前回と、Excel VBAの「手軽さ」や「小回り」の利点を強調してきました。しかし、この手軽さこそが、VBA開発で陥りやすい最初の落とし穴でもあります。それは、**「とりあえず動けばOK」**という思考に陥りやすいことです。
PythonやWebアプリの開発では、フレームワークの規約やテストコードの文化があり、ある程度の品質が保たれやすい傾向があります。しかしVBAは、シート上でサッと動かすマクロから、本格的な業務アプリまで、様々なレベルで利用されます。その手軽さゆえに、目の前の課題解決を優先し、コードの可読性や保守性を意識しないまま作成してしまうケースが少なくありません。結果として、作った本人ですら数ヶ月後には内容を思い出せない「ブラックボックス」と化し、結局誰もメンテナンスできない負の遺産になってしまうのです。


2. スパゲッティコード対策: 可読性を高める工夫

「とりあえず動けばOK」で作られたVBAコードは、往々にして**「スパゲッティコード」**になりがちです。順序がバラバラで飛び飛びの処理、意味不明な変数名、コメントが一切ないコード…。これでは、後から機能を追加したり、エラーが発生した際に原因を特定したりするのが非常に困難になります。
VBAのコードを書く際も、基本的なプログラミングの原則を守ることが重要です。
• 命名規則の徹底: 変数やプロシージャ名には、その役割がわかるような名前を付けましょう(例: strCustomerName、calcTotalPrice)。
• 適切なコメント: 複雑な処理や意図をコード内に明記します。未来の自分や、もしかしたら他の人が読むことを意識してください。
• 処理の分割: 長いプロシージャは、機能ごとに小さなプロシージャに分割し、それぞれに役割を持たせます。
• インデントの活用: コードの階層を明確にし、視覚的に見やすくします。
これらの工夫は、見た目の美しさだけでなく、コードの理解しやすさ、ひいては保守性の向上に直結します。


3. エラー対応の重要性: 予期せぬトラブルへの備え

VBAアプリを運用していく上で避けて通れないのがエラーです。ユーザーが誤った入力をしたり、想定外のデータが読み込まれたり、ネットワークが一時的に切断されたりするなど、エラーの発生要因は多岐にわたります。
エラーが発生した際に、VBAがただ停止してユーザーを困らせるだけでは、「使いにくいアプリ」という烙印を押されかねません。
• On Error GoTo ステートメント: エラーが発生した際に、特定の処理にジャンプするように設定し、ユーザーへのメッセージ表示やログ記録を行います。
• エラーハンドリング: ユーザーが次に何をすべきかを明確に指示するメッセージを表示する、エラーの場所を特定できるような情報をログに出力するなど、適切な対応を組み込みます。
• 入力値チェック: ユーザーが不正な値を入力できないように、入力規則を設定したり、コードで値をチェックしたりする仕組みを導入します。
堅牢なアプリを作るためには、**「エラーは必ず発生する」**という前提で、その対策を事前に講じておくことが不可欠です。


4. パフォーマンス考慮: 処理速度を意識したコーディング

Excel VBAは非常に便利ですが、大量のデータを扱う際や、シートへの書き込み・読み込みを頻繁に行う際には、パフォーマンスの問題に直面することがあります。特に、Webアプリと比べてVBAの実行速度は劣るため、意識しないと処理が遅くなり、ユーザーのストレスに繋がります。
• 画面更新の停止: 処理中に画面のちらつきを抑え、速度を向上させるためにApplication.ScreenUpdating = Falseを使用します。処理の最後にTrueに戻すのを忘れずに。
• 計算モードの変更: 大量の数式があるシートで処理を行う場合、一時的に自動計算を停止し、処理後に手動で計算させることで速度を向上できます。Application.Calculation = xlCalculationManual
• メモリへの一括読み込み/書き込み: セルへの読み書きをループで一つずつ行うのではなく、配列にデータを一括で読み込み、処理後にまとめて書き込むことで劇的に速度が向上します。
• 無駄なループや参照の削減: 効率的なアルゴリズムを検討し、不必要な処理を省きます。
処理が遅いVBAアプリは、せっかくの自動化も台無しになってしまいます。ユーザーが快適に使えるよう、速度を意識したコーディングを心がけましょう。


5. 変更管理の必要性: バージョン管理と変更履歴

「一人情シス」だからこそ、変更管理が重要になります。VBAアプリはExcelファイルとして存在するため、誰かが誤って上書きしてしまったり、複数のユーザーが同時に変更を加えてしまったりするリスクがあります。
• 定期的なバックアップ: 最低限、重要なExcel VBAファイルは定期的にバックアップを取る習慣をつけましょう。
• バージョン管理システム: Gitなどのバージョン管理システムを導入できればベストですが、一人情シスでそこまで手が回らない場合でも、ファイル名に日付やバージョン番号を付与するなどの工夫をします(例: 業務アプリ_v1.0_20250630.xlsm)。
• 変更履歴の記録: VBAモジュール内に簡単なコメントで変更履歴を残したり、別途テキストファイルで修正内容を記録したりすることで、いつ、誰が、何を修正したのかを追跡できるようにします。
これらの対策は、万が一のトラブル発生時に迅速に復旧するため、そして将来的な機能追加や改修をスムーズに行うために不可欠です。


今日の言いたいこと: VBAの手軽さに甘えず、**「保守性」と「堅牢性」**を意識して作ろう。

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