第2回:使われるアプリの真実 〜Excelの底力〜 VBA一人情シス
Excel VBAで業務効率爆上げ!一人情シスが語る「真の使えるアプリ」の作り方
第2回:使われるアプリの真実 〜Excelの底力〜
1. 「使えるアプリ」とは: ユーザーが自分で修正できる重要性
前回の記事で、私がWebアプリからExcel VBAに回帰した理由についてお話しました。「動くアプリ」と「使われるアプリ」の間にある深い溝に直面したからです。では、一体「使われるアプリ」とは何なのでしょうか?
私がたどり着いた答えの一つは、**「ユーザーが自分で、ある程度の修正や調整ができるアプリ」**です。もちろん、システムの根幹に関わる部分をユーザーが勝手にいじるのはNGです。しかし、日々の業務で発生する「あとちょっとだけこうだったら…」「この表現を変えたい」「このデータだけ一時的に別の方法で集計したい」といった細かな要望に、開発者がいちいち対応していたらキリがありません。ユーザー自身がちょっとした変更を加えられること、これがアプリが現場に根付き、真に「使える」ようになるための重要な要素だと気づいたのです。
2. Excelの普及力: 誰もが使うツールとしての強み
なぜExcelなのか。それは単純に、ほとんどのビジネスパーソンがExcelを使えるからです。新しいWebシステムを導入しようとすると、操作を覚えるための研修やマニュアル作成が必要になり、社員のITリテラシーによっては定着に時間がかかります。しかし、Excelはもはやビジネスの共通言語と言っても過言ではありません。
入力の仕方、データの並べ替え、フィルタリング、簡単なグラフ作成など、多くの人が日常的にExcelの基本操作に慣れ親しんでいます。この「慣れ」は、新しい業務ツールを導入する上で計り知れないアドバンテージになります。ユーザーにとって馴染み深いインターフェースの中で業務が完結できることは、アプリの導入障壁を劇的に下げるのです。
3. Excelの柔軟性: ユーザーによる簡単な修正、ピボットテーブルや関数を使った分析
Excelの最大の強みは、その圧倒的な柔軟性です。私が作った分析資料をWebアプリで提供しても、結局ユーザーは出力されたデータをExcelに貼り付け直し、自分たちでピボットテーブルを組んだり、SUMIFやVLOOKUPといった関数を駆使して再加工・再分析したりしていました。
これは、Webアプリが提供する固定されたレポート形式だけでは、現場の「生の声」や「その場限りで知りたいこと」に応えきれないという事実を物語っています。Excelであれば、ユーザーは必要な列を追加したり、計算式を書き換えたり、グラフの種類を自由に変えたりと、まさに「使い慣れた道具」として、自分の知りたい形にデータを変形させることができます。システム側で全てのパターンを網羅しようとするのは不可能ですし、仮にできたとしても、改修コストがかさみます。Excelは、この「ユーザーが自分で加工できる余地」を自然に提供してくれるのです。
4. VBAの価値: 身近なExcelにロジックを組み込む強み
そして、このExcelの柔軟性をさらに強力なものにするのがVBAです。VBAを使うことで、普段使い慣れているExcelのシートやセル、ボタンに**「業務ロジック」**を組み込むことができます。複雑なデータ整形、定型的なレポート生成、外部データとの連携など、手作業では時間がかかる・ミスしやすい作業を自動化できるのです。
「あのExcelファイルを開いて、ボタンを押せばデータが自動で集計される」「このセルに品番を入力すれば、自動で商品情報が呼び出される」――。このように、ユーザーが日常的に使っているファイルの中に魔法のような機能を埋め込むことで、特別なシステム操作を覚えることなく、業務効率を向上させることが可能になります。ユーザーはExcelというインターフェースから離れることなく、複雑な処理を実行できる。これがVBAの最大の価値です。
5. ユーザー視点: ユーザーが求める「便利」の形
結局のところ、「真に使えるアプリ」を作るには、ユーザー視点が何よりも重要だと痛感しました。開発側の「最新の技術でかっこいいものを作りたい」という思いと、ユーザー側の「とにかく早く、簡単に、正確に仕事を終わらせたい」という思いは、必ずしも一致しないのです。
ユーザーが本当に求めている「便利」とは、複雑なシステムを覚えることではなく、日々の業務がスムーズに進むことです。そのためには、彼らが慣れ親しんだツールを最大限に活用し、その中で必要な自動化や効率化を実現してあげることが、一人情シスとしての最善手だと今は考えています。Excel VBAは、まさにその橋渡しをしてくれる強力なツールなのです。
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