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リファラル採用の発達段階

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はじめに

フリーランスの人事としてさまざまな企業に関わる中で、リファラル採用には一定の発達パターンがあることが見えてきたので記事にしてみました。
〜〜期という表現は僕の趣味で、特に暗喩などでもないです。

段階1 幼年期

CEOや創業メンバーがコアとなる別のメンバーを連れてくる(しかない)段階を指します。
立ち上げ期なので事業プランさえ新奇性があれば往々にリーダークラスの方にとっても魅力的な環境になっており、ボーナス期間とも言えるほど上手くいく印象です。
やることもシンプルで、個人のネットワークのほか、銀行やVC、経営者ネットワークなどを手繰りに手繰ってなんとかするのみです。単純な行動量が成果に線形に比例します。
任せるミッションも不定形のためカルチャーマッチしているかだけに注目することになり、専門スキルを確認する面接の手法もあまり凝る必要がありません。

段階2 青年期

単一あるいは少数の見込みのある事業へ数名のCXOまたはその期待があるメンバーが集まり、リーダーも必要ですがメンバーの採用が視野に入った段階を指します。事業の軸をどこに置くのかが固まってきたあたりです。
コアメンバー以外の採用も進むとは言えそこまで業務も固まってないため、専門性を強く求めるというより、カルチャーマッチしているメンバーが別のメンバーを連れて来る状態で、このあたりまで採用チャネルのほとんどがリファラルを占めます。伴って採用費も殆どかかりません。
このあたりもまだ行動すれば成功します。
徐々にスカウトや人材紹介企業経由の採用など他のプッシュ型の手法も着手するものの、思い切って投資しているわけでもないのでそこまで成果も出ず、なんとなく採用できる対象のキャップを感じ始めます。
また、同質化も進むのでこの時期の成功体験に依存するとその後の段階でアンラーン(あるいはそれをする必要があることへの気付き)に苦労します。

段階3 成人期

事業がある程度伸び始め、組織内のキーマンが定まってくる段階を指します。最近だとマルチプロダクト戦略が珍しくなくなってきているのでこの時点で複数プロダクトがあることもよくあるでしょう。
体制も拡大して既存のリーダーだけではマネジメントが難しくなってきます。新しいリーダーが必要です。しかし組織が短い期間で成長したために、あるいは少人数のために、次のリーダーは育成が間に合っていない状況です。
メンバーがリーダーを紹介することは難易度が高いので、引き続きCXOやリーダー層がリファラルをしなければなかなかリーダーが採用できない一方で、これまでネットワークの外部から採用できる体制も構築してないので、試行錯誤が始まります。
このあたりからリファラル採用施策が色々動き出す印象です。リファラルインセンティブの強化、メンバーへの目標設定など。
しかし段々単純な行動量では線形の成果が出なくなってきます。取り組んでいる人数は増えているのに成果はそこそこになります。特に面談数は増えても採用人数が伸びないといった状況が起きますが、これは事業の進捗に伴って採用要件も明確化していき、カルチャーマッチに加えて専門性の観点も入るためです。

段階4 壮年期

人数も成人期に比べて多くなり、幸いにもリファラルや外部ネットワークからの採用で、それなりに体制が厚くなってきた段階を指します。
この段階になると事業側にある程度の成長が見られ始め、新しい事業にチャレンジする印象作りが難しくなり始めます。加えて組織も大きくなり育成するリソースも得られるため、採用ターゲットも若手の比率が高まります。リファラルとしてはインフラが整備されていればそれなりに獲得できる一方で、在籍が長いメンバーが出てきて、既存の友人知人からの採用は見込めなくなります。
なのでネットワーク自体を拡大する必要が出てきます。メンバーへコミュニティへの参加を促したり、登壇・発信を強化することになります。
恐らくこのフェーズに来るとこれまでの単純な行動量に対して線形に得られた成果が時期限定的だったことがわかってきて、広報活動への積極的な投資など戦略的な行動が重要になってきます。
この時点で前段階からネットワークを広げる活動のインフラが敷けてないと苦戦する印象があります。

段階5 老年期

一通りの採用活動が行われ、リファラルにおいても数年分のデータからある程度年間の採用数が見込める状態になります。事業も組織も大きくなってきているので、採用活動自体にかける予算も大きくなります。インセンティブ=成果報酬だけではなく採用会食の費用を出しまくるなどの潜在層向けの活動が増えます。
在籍メンバーの規模も大きいので、社内広報にコストをかけるだけでも数字が動く状態になります。裏返すとメンバーと採用の距離が遠くなりがちなので、自分ごとにしてもらうために苦労が生じます。
継続年数に比例して退職者の人数も累積で増えてきているのでアルムナイ(退職者のコミュニティ)向けの施策で出戻りするメンバーを作ることもできるようになってきます。
こうなってくると採用活動としてはだいぶ未着手の領域は減ってきて、最適化は試みられるものの既存施策を大幅に改善することは難しくなります。なので、メガベンチャー系の採用広報に代表されますが、コスト効率は落ちるもののコミュニティへの投資や課外活動への投資が強化されていきます。

ちなみに

読みやすさのためにフェーズを定義して書き分けてみていますが、ポジションやチームごとにリファラル採用の徹底具合が違うと同じ組織の中でもフェーズが違ってくることがあります。

あと図があるとそれっぽいかと思って作りました。

気をつけたいこと

2つありまして、
ひとつは実行者側の目線として、フェーズが違う施策をやると効率が落ちること。やっても無意味では全くないのですが、リファラル採用はやはり組織のネットワークの大きさに依存する施策ですから、ネットワークが小さい時に要求されるネットワークが大きい施策をやるのは大変で成果出づらいです。
もうひとつはマネジメント側の目線として、メンバーに要求する水準を見極めたいこと。「自分より優秀な人を連れて来る」は実践されるべきリファラルの哲学な一方で、リクルート社の方が言ってたのだったか…違ったらすみませんが「自分よりも上の等級(seniority)の人材の紹介は難しい」とする話も耳にしたことがあります。そもそも組織の構造を考えても同僚や部下は複数いてリファラルできる人数が多いですが、その人が関わる上司や先輩はどう考えても同僚・部下の人数以下しかいません。
なので、優秀な人=上の等級の人と定義するとデスマーチになりかねずメンバーが疲弊します。優秀な人の定義にはseniority以外の観点を含めるべきです。実現できたら大いに評価するのは賛成ですが、実現できないことで減点すべきでないです。

おわりに

リファラル採用も果てしないんですよね、予測できないことが多くて...。
「リファラル採用」という語が出てきてから色々言われてますが、企業からした時の効果は詰まるところ社内メンバーによる確かなリファレンスがあること、他の採用手法と比べて(一般的に)コストが低いことに尽きますが、やはり推進側は私的な交友関係に乗っからせてもらっている立場であることは意識すべきです。一番の推進は友人知人を紹介したくなる素敵な環境を作ることですよね。
やっていきましょう。

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