2025年エンジニア採用とAIに関するトピック振り返り
今年もいろんなことがありましたね
責任と詫びのデザイン
ここ一年で採用領域でも多くの業務が生成AIでの代替、高度化を目指して検証されましたが、あまり語られなくて違和感があったのは責任の取り方をどうデザインするかです。Human Oversightとか呼ばれる概念です。
こんなことができたとか、何時間効率化したとか、それは素敵ですけど例えばそのフローで誤りを起こしたら、目の前の転職候補者に迷惑かからないようにこうしています、という話がセットでされてないように思います。(少し過敏に思われるかもしれませんが界隈では同様の事例で既に問題になっています ※1)
何らかの形で自然と取り組まれていたことですが、AIができる範囲の拡大に連れてワークフローとその責任の取り方のデザインの難易度は上がっていくので、活動を俯瞰する視座と、それでもままならなかった時にどう詫びるかが更に重要になっていきそうです。
生成AIの限界
加えて、ソフトウェアエンジニアを始めとした専門職に対して、高度な求人・スカウト文章を生成することは多くの場合まだ難しそうであることがいくつかの報告から確認できました。
反論がありえるので補足すると、全く無理とは言いません、一部の限定的なケースでは可能性があると思います。それ以外ではできてる気がしているだけで、誤った訴求や強調になっているリスクを排除しきれていないと思います。スカウトの自動生成を謳うサービスなどでは職務経歴を機械的に要約するケースが散見されましたが、例えば「XXX社のYYYという経験を拝見しました」と言及する時、自社との関連は果たして検証されているのでしょうか。面談でなぜこの経験に着目したのか質問された時に滞りなく理由が説明できるのでしょうか。そのリスクを取って返信率を数%上げることにそこまでの価値があるのでしょうか。
採用ができてなくて面談数を増やすためにスカウトテキストを生成しているなら改善すべきはそこではないです。そもそもの採用対象や訴求の見直し、或いは、例えば生成AIは送信先のマッチング判断に留めるべきです。
媒体の返信率低下
あるスカウト媒体で全体の平均率が3割ほど低下した報告を確認しました。
特に初手からスカウトテキストを送るタイプではない媒体であれば影響は少なそうですが、それでも探す・判断する・書くという従来ルールベースではタッチできなかった知的作業部分が半自動化されたことで流通量が増えたことも一因と思います(確証がないので一因と言ってますが多分最大要因です)
人材紹介会社の設立数の増加も影響してるかと思って調べましたが、特にここ2-3年で急激に増えている数字は得られませんでした※2ので、流通量の増加の方がもっともらしい説明になりそうです。また、返信率の下降トレンドが生まれると、目標の採用人数を簡単には減らせない事業会社側が送信数の目標を引き上げるのも自然な流れかと思います。
これらの状況を総合して振り返るとスカウト媒体の返信率が下がるのは違和感がありません。今後しばらくの返信率は1年前の数字より目減りする想定で活動計画を設定した方が良さそうです。
新興スカウト媒体の登場と退場
検索エンジン経由で他社のスカウト媒体をスクレイピングして候補者情報を統合するサービスがいくつか登場して、情報ソースのスカウト媒体がスクレイピング禁止を改めてアナウンス、新興サービスは退場しそうな方向へ…という流れが観測されていました。今年はトレンドになるような、これと言った採用関連のサービスがなかったように思います。
個人的に気になったのは自社のリファラル採用の文化づくりをスキーム化してコンサルティングパッケージとして販売していたサービスくらいですかね…(内容は素敵そうでしたが結構高かったです、数十人単位でコンサルタントを採用するならペイしそうだけど…という水準)。
真面目な人事がいればある程度最適化が済むような、下流のアプローチをどうこうするのでは、もはや採用は成功しなくなりつつあるのかもしれません。
ミドルレンジが空白に
ソフトウェアエンジニア職種について、いくつかのレポート※3 や内々の話を総合すると、去年まで700-900万くらいの年収帯の層をミドルレンジと定義したとき、外資のオファーが弱気になり、国内のオファーが強気になることで、この従来ミドルレンジだった層の年収帯が900-1000万になっている傾向がある可能性が見えてきました。レビュー・意思決定できる層は依然必要ということなのだと思います。
また、若手エンジニア層の採用をストップしたケースも散見されています。外資ではなく国内スタートアップです。エンジニア職はとりあえずどんどん採用するというムードが弱まり始めている印象です。ちなみに労働集約型の事業の会社はまだ活発に採用している様子です。
仮にこの方針が失敗とみなされて揺り戻すとしてもすぐには課題が顕在化しなさそうなので、多分この傾向はもう少し続くと思います。
出社回帰
話題になって久しいですが大手Web/IT系の出社回帰の決定は大体今年でした。ビジネス職種はもう出社になってしばらく経ってる覚えですが、エンジニア職種にも広がってきているという意味でこの記事では今年の話題に位置付けています。(どこがオープンでどこがクローズに話されてるか記憶が曖昧なので社名挙げるのは控えます)
施行は来年のところもありますがもうフルリモートの方が珍しくなりつつありますね。採用競争力の獲得のためにリモートワークにするメリットは大きくなってきています。
スタートアップの人員削減
自主退職の募集も今年はなんだか多かった気がします。この手の話はエンジニア職種は対象外になりがちだったのですが、ここ1年はもう垣根がないですね...。Dinii社の件があったから目につくようになってる気もしつつ、クローズドで進めているものの小耳に挟む会社もいくつか…。VCからの圧力も高まっていると聞きます。スタートアップではないですがLINEヤフー社がそのような取り組みをしている件も公表されていましたね※4。
以下はポエムですが、スタートアップにおいて自主退職の募集が行われること自体は、経営側の責任等はもちろん注意しつつ、元々あるリスクを考えるとやむを得ない側面だと考えています。明らかに市場の小さい会社や事業難易度が明らかに高い会社もある中で、入社する側もスタートアップに行くことのリスク評価をする余地はもっとありそうだと思いますし、会社側も事業縮小の想定を何らか織り込んだアサインや報酬制度が考えられたりするといいのかなと思います。
たぶんリードタイムは長期化する
これまでの話をまとめて、少し先の状況がどうなりそうかを考えてみます。
スカウト媒体の返信率が下がり、若手採用を控える形で採用ターゲットが引き上がると、転職顕在層から思うように採用ができなくなります。ターゲットを変えずにひたむきに頑張るか、報酬を工夫する・引き上げるか、海外・若手採用に踏み切るか、あたりに取り組む企業はじわじわ増えている印象ですが、ここ数年で更に増えるのではないかと思います。引きやすいレバーとしては相対的に報酬になるんでしょうか。
手法的にはタレントプール系のアプローチの重要性が増していきそうですよね。タレントプールのアプローチはルールベースの効率化が効きづらい領域でしたがこれこそ生成AIが正しく活用される方向になり得そうです。従前手のかかる作業が山盛りな施策でしたが、大量のコミュニケーションログの要約、コミュニケーション戦略の素案の作成、コミュニケーション状況の記録などの用途とすれば、生成AIとの相性はとても良さそうに見えています。みなさまにはよくわからないプロダクトにいきなり投資するのではなく、小さく効果検証を始めて自社の課題の特定をまずは進めて頂きますよう陰ながら願っております。
さいごに
今年もお疲れ様でした。2026年も頑張っていきましょう
お知らせ:
合同会社タラクテでは採用コンサルタントの募集をしています。ご興味がある方がいましたらお問い合わせフォームよりご連絡ください。
※1
https://diamond.jp/articles/-/215312
https://jp.reuters.com/article/world/-idUSKCN1ML0DM/
https://www.talenta.co.jp/blogs/ai-ethic_20211201/
※2
厚生労働省 "民営職業紹介事業所数の推移【事業報告】"より。
※3
TokyoDev - “2025年TokyoDev開発者アンケート結果” より。
※4
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2510/28/news123.html
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