テイラー展開は、高校でも「発展的な内容」としてやる気のある人なら触れると思います。物理の近似計算をきちんと理解しようとすると、ほぼ必須の道具です。
ただ、高校レベルだと「元の関数と多項式が何となく近そうだから ≒ で結んでおく」くらいで終わってしまい、「本当に (=) で結べる条件は何なのか」があまり説明されません。そこでこの記事では、テイラー展開のラグランジュ型剰余項をきちんと導出して、「どんな意味で元の関数と多項式が一致するのか」を整理してみます。
この証明にはコーシーの平均値の定理を使います。この定理は
- 普通の平均値の定理を
- 「パラメータ付きの関数」に対して適用しているだけ
と見ることができます。2つの関数 (F, G) に対して、パラメータを1つ固定した関数を作り、その関数に平均値の定理を使うというだけの話で、発想さえ分かれば自明に近い定理だと思いますし、平均値の定理から証明することも容易です。
コーシーの平均値の定理そのものの証明については、次の動画がとても丁寧なので、そちらに譲ることにします。
https://www.youtube.com/watch?v=4ZC7zMoUKjw
ここでは「コーシーの平均値の定理は成り立つものとしてよい」と仮定し、その定理を前提にしてテイラー展開の剰余項を導いていきます。
テイラー展開の剰余項について導出
区間[a,x]で
- fは(n+1)回まで微分可能
- ここでは一旦 (x>a) とする
テイラー展開で作る「n次までの部分」を
T_n(t) = f(a) + f'(a)(t-a) + \frac{f''(a)}{2!}(t-a)^2 + \cdots + \frac{f^{(n)}(a)}{n!}(t-a)^n
としておきます。
目標は
f(x) = T_n(x) + \frac{f^{(n+1)}(\xi)}{(n+1)!}(x-a)^{n+1} \quad (a<\xi<x)
という「ラグランジュ型剰余項」を出すことです。
コーシーの平均値の定理を使いたいので、2つの関数を用意します。
F(t) \equiv f(t) - T_n(t)\\
G(t) \equiv (t-a)^{n+1}
F(a)=0, G(a)=0なので、後で利用していきます。
区間[a, x]で関数の組(F,G)に対してコーシーの平均値の定理を使っていきます。
コーシーの平均値の定理は以下です。
関数F,Gが[a,x]で連続、(a,x) で微分可能で、G(x)-G(a)\neq 0かつ(a,x)のすべてのtでG'(t)\neq 0なら
\frac{F(x)-F(a)}{G(x)-G(a)} = \frac{F'(\xi_1)}{G'(\xi_1)}
となる\xi_1\in(a,x)が存在する。
F(a)=G(a)=0なので
\frac{F(x)}{G(x)} = \frac{F'(\xi_1)}{G'(\xi_1)}
が言えます(なおt\in(a,x)でG'(t)=(n+1)(t-a)^n\neq 0)。これを繰り返していくことを考えます。
F(a)=F'(a)=\cdots = F^{(n)}(a)=0\\
G(a)=G'(a)=\cdots = G^{(n)}(a)=0
なので区間を狭めながらコーシーの平均値の定理を繰り返し使っていきます。
具体的には、まず[a,x]上で(F,G)に、次に[a,\xi_1]上で(F',G')に、さらに [a,\xi_2]上で(F'',G'')に、というように区間を狭めながら適用していきます。その結果、
\dfrac{F(x)}{G(x)} = \dfrac{F'(\xi_1)}{G'(\xi_1)}=\cdots=\dfrac{F^{(n)}(\xi_n)}{G^{(n)}(\xi_n)}\quad (a<\xi_n<\cdots<\xi_1<x)
となる。ここでもう一度コーシーの平均値の定理を利用したい。
F^{(n)}(t)=f^{(n)}(t)-f^{(n)}(a), \quad F^{(n+1)}(t)=f^{(n+1)}(t)\\
G^{(n)}(t)=(n+1)!(t-a), \quad
G^{(n+1)}(t)=(n+1)!
ここで[a,\xi_n]上でもう一度コーシーの平均値の定理を適用すると、ある (\xi\in(a,\xi_n)) が存在して
\dfrac{F^{(n)}(\xi_n)-F^{(n)}(a)}{G^{(n)}(\xi_n)-G^{(n)}(a)}=\dfrac{F^{(n+1)}(\xi)}{G^{(n+1)}(\xi)}\quad (a<\xi<\xi_n<x)
ここでF^{(n)}(a)=G^{(n)}(a)=0より
\dfrac{F^{(n)}(\xi_n)}{G^{(n)}(\xi_n)}=\dfrac{F^{(n+1)}(\xi)}{G^{(n+1)}(\xi)}=\dfrac{f^{(n+1)}(\xi)}{(n+1)!}
よって
F(x)=\frac{f^{(n+1)}(\xi)}{(n+1)!}G(x)=\frac{f^{(n+1)}(\xi)}{(n+1)!}(x-a)^{n+1}
なので
f(x)=T_n(x)+\frac{f^{(n+1)}(\xi)}{(n+1)!}(x-a)^{n+1}
つまりn次までのテイラー展開の結果は\dfrac{f^{(n+1)}(\xi)}{(n+1)!}(x-a)^{n+1}を足せば=で結ばれます。この項は剰余項と呼ばれます。
この剰余項がn\to\inftyで0に収束するならテイラー展開の結果で近似できるし、収束しないならできない、とすっきり整理できます。
剰余項が収束しないケース
例えば以下の関数の0まわりのテイラー展開で考える剰余項は収束しません。計算してみましょう。
f(x)=\begin{cases} e^{-1/x^2}&(x\neq0)\\ 0&(x=0)\end{cases}
Discussion