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音声入力を前提として作業や環境を見直す

2025/03/04に公開

1. はじめに:音声入力へのシフト

これまでエンジニアの作業といえば、キーボードでのタイピングが主流でした。しかし今後は、音声入力が当たり前になる時代がやってきます。すでに音声入力を活用している方も多いかもしれませんが、これからさらに普及していくことは間違いないでしょう。

筆者自身の作業比率は、すでに音声入力が7割、キーボードが3割ほど。今までは音声入力が実用的とは言い難かったですが、今後は「音声入力7:タイピング3」になっていくかもしれません。

2. なぜ今、音声入力が現実的になったのか?

従来の音声認識技術がたとえ95%の精度だとしても、残りの5%に含まれる誤字や意図しない単語が文章全体を破綻させるリスクがありました。この「誤った5%を探す手間」が著しく効率を落としていたのです。
さらに、人が口頭で話すときは必ずしも論理構成を意識して話すわけではないため、最終的には手動で大量の修正を行わなければ“まともな原稿”に仕上げられなかったのです。

しかし現在のLLM(大規模言語モデル)技術の発達により、音声入力の誤字脱字や表記ゆれ、同音異義語の齟齬などをAIが自然に修正してくれるようになりました。さらに、拙い口頭表現を整え、読みやすい形に仕上げてくれるため、単なる誤字修正を超えて“文章の質”そのものを底上げしてくれます。
以前は自分の文章力を100とすると70程度まで下がってしまい(誤字脱字、非論理的な構成)、それを自力で修正して100に近づける必要がありましたが、いまやLLMによって120や130の完成度が期待できるほどです(整った論理構成、冗長表現の削除など)。

3. 音声入力によるアウトプットの拡張

音声入力の進化は、さまざまなアウトプットを効率化する可能性をもたらします。ここでは主に2つの大きなカテゴリ—情報発信と制作作業—に分けて紹介します。

3-1. ブログ・SNSなどの情報発信

ブログ記事やSNSでの発信は、従来は「キーボードでじっくり文章を書く」ことが多かったでしょう。ところが今は、音声でざっと内容を語り、それをLLMに整えてもらうことで、驚くほどスムーズに文章化できます。たとえ拙い話し方でもAIが文脈を解釈し、表現をブラッシュアップしてくれます。

さらに、“AIオーケストレーター”として自分がどのようにAIを使っているのか、どんな成果を上げたのかを発信することは、自己ブランディングにも大きく貢献します。企業の人事や採用担当者はAIに詳しくない場合も多いため、「この人はAI関連で何か発信している」「知見がありそうだ」という印象を持ってもらえるだけでもアドバンテージになります。

3-2. コーディング・資料作成などの制作作業

音声入力は、情報発信だけでなくコーディングや資料作りといった“ものづくり”の部分にも役立ちます。ChatGPTやClaudeなどのLLMを使えば、30秒ほど口頭でアイデアや要望を伝えるだけで、コードのひな形やドキュメントのドラフトを生成することができます。修正や追加要望も音声で指示し、細かな修正やリファクタをAIに任せることが可能です。

コーディング自体が好きな人はこれまでどおり詳細を手動で書いても構いませんが、「そこまでコーディングにこだわりがない」方は、音声入力で大まかな要件をAIに伝え、アウトプットされたものを微調整するだけで、かなりの生産性向上が期待できるでしょう。

4. 複数デバイスの並行活用

音声入力時代になると、AIへの指示出しを同時並行で行いたい場面が増えます。例えば、あるデバイスで音声入力をしてAIからの応答を待っている間(数十秒から数分かかることもある)、別のデバイスで別のAIに指示を出す、というスタイルです。

一台の高性能PCで複数のブラウザを切り替えるより、ある程度低スペックでもいいので複数台用意して同時並行処理をするほうが効率的なケースがあります。

5. PC選びは高性能1台より低コスト複数台

5-1. 従来の価値観との違い

以前は「メインPCはなるべく高性能」「サブPCもそこそこ良いものをもう1台」という考え方が主流でした。しかしAI時代においては、クラウド上で動作するサービスを利用するケースが増え、自端末の高いスペックがそれほど必要なくなる可能性があります。

5-2. 安価なPCを複数台持つ利点

  • 動作要件が低い: AIの重い処理はクラウド側が行うため、ローカル環境にはブラウザ操作と音声入力が安定して動く程度の性能があれば十分。
  • 並行作業がしやすい: 1台で複数作業を切り替えるより、安価なPCを複数台並べてそれぞれのAIツールを同時に利用したほうが効率が高い。

5-3. 選ぶ際の注意点

  • 音声入力が可能か: Windowsの場合、Win + Hで音声入力を起動できるが、古いPCだとマイクドライバ等がうまく対応していないことがある。事前テストは必須。
  • 画面解像度: 1366×768などの低解像度だと作業がしづらい。1920×1080(フルHD)以上を推奨。
  • まず1台でテスト: いきなり大量に買わず、まずは1台で運用して問題なければ同じスペックを追加購入するほうが安心。

6. まとめ

  1. 音声入力の普及で作業スタイルが変化: キーボード主体から音声主体へと移行し、LLMの補完により高品質な文章やコードを効率的に生成可能。
  2. アウトプットは大きく2つに分けられる:
    • 情報発信(ブログ・SNSなど): AI活用ノウハウの発信は自己ブランディングにも効果的。
    • 制作作業(コーディング・資料作りなど): 音声で大枠を伝え、AIがドラフトを生成。修正指示も音声でOK。
  3. 複数デバイスの並行利用: 応答待ち時間を活かして別のPCで作業を進められるため、効率的。
  4. PC選びはスペックより台数重視: 高性能1台より、安価なPCを複数台揃えるほうがAI時代には有利な場面が多い。

AIと音声入力を活用した新時代、求められるのは技術力だけでなく、その技術をどのように使いこなし、どんな成果やアイデアを生み出せるかです。自分なりのやり方でAIを使いこなし、新たな働き方を見出していくことが、これからのエンジニアや“AIオーケストレーター”の大きな武器になるでしょう。

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