伴走型SRE支援との協業で見えた、SRE as a Serviceの真価
こんにちは!SREグループの三橋です!
弊社では昨年12月よりTopotal社の提供するSRE as a Serviceを利用しています。
本記事では、SRE as a Serviceを導入するに至った背景から、約半年間の取り組みの中で実感した価値や関係構築の工夫、そしてこれからの展望についてご紹介します。
SREグループの現在の体制については、過去のテックブログでもご紹介しています。ご興味があればあわせてご覧ください。
想定する読者
- 社内にSRE人材が不在、もしくは少人数で改善まで手が回っていないと感じている方
- SREプラクティスを組織に取り入れたいが、実践する体制や進め方に悩んでいる方
- SRE as a Serviceにご興味がある方
- 弊社のSREグループにご興味がある方
SRE as a Serviceと一般的な業務委託の違い
Topotal社の定義によると、SRE as a Serviceとは『サービスの価値を最大限に引き出すためのエンジニアリングを提供するサービス』とされています。
「エンジニアリングを提供する」と聞くと、いわゆる業務委託をイメージする方もいるかもしれません。しかし、SRE as a Serviceはサービスの価値を最大限に引き出すことが目的であり、指定された業務を遂行することが目的の一般的な業務委託とは異なります。
またTopotal代表の高村さんが以前どこかで話されていたのですが、SRE as a Serviceとは組織にSREプラクティスを取り込む仕組みを残すためのサービスであり、長期に渡って契約し続けることは必ずしも健全な状態とは言えないとも語っていました。
この「最終的には自走できるように仕組みを残す」という考え方も、従来の業務委託とは異なる大きな特徴のひとつだと感じています。
参考
なぜ導入したのか
SRE as a Serviceの導入は、私が昨年入社してから早々に検討を始めていました。
当時はインフラチームから名称を「SRE」に変えた、いわゆる『なんちゃってSREグループ』のような状態で、プロダクトのインフラ周りの運用保守をすべて担っている状況でした。
そのため日々の運用保守業務に追われ、中長期で取り組むべき改善タスクに十分に時間が割けていないというのが正直なところでした。
「運用で手一杯で改善ができない」というだけでなく、「改善できていないから運用が減らない」という構造的な課題も顕在化し始めていました。
このような状況を抜け出すには、業務委託で運用を巻き取ってもらうというよりも、改善タスクを自分たちと一緒に進めてくれる存在が必要だと感じていました。
なぜTopotal社のSRE as a Serviceなのか
実は、前職でもTopotal社のSRE as a Serviceの導入を検討したことがありました。
当時はSRE体制が充実していたため契約には至りませんでしたが、高村さんの登壇資料などを通じて、技術力の高さや思想の深さに以前から着目していました。
またTopotal社のSRE as a Serviceは限られた領域に特化して対応するというスタイルではなく、幅広く仕組みづくりから支援してくれるという印象が強く、弊社のようなスタートアップのフェーズとは非常に親和性が高いと感じました。
実際に感じた価値
実際に契約してみて、最も驚いたのは細かい指示がなくてもいい感じに動いてくれることでした。
契約当初は弊社SREが2名しかいなかったため、コミュニケーションで弊社側がボトルネックになってしまいSRE as a Serviceを活用し切れないのではないかという懸念がありました。
しかし実際には、ドキュメントやコードを丁寧に読み込んだうえで状況を整理し、必要な作業を自発的に進めてくれました。さらに、事前にお願いしている業務範囲にとどまらず周辺領域を含めて気を配ってくれる動きも見られました。
たとえば、改善の種を見つけてチケットを立ててくれたり、私たちがチーム内で進めていたPRに自然と参加して的確なフィードバックをくれたりと、自分の“担当分”という線を引かず、あくまでプロダクトやチーム全体の観点で動いてくれる姿勢に助けられる場面が何度もありました。
また、毎週の定例では、構えたMTGというより雑談に近いトーンで技術的な相談や現場の悩みを話せる空気感があり、そうした距離感も含めて、私たちにとってとてもありがたい存在になっています。
良い関係性を築くために実施したこと
SRE as a Serviceは単なる外部委託というよりも、一緒にプロダクトを育てていくパートナーとして関係を築いていくことが重要だと考えています。
契約開始から現在に至るまで、Topotalさんとはとても良い関係性が築けていると感じていますが、そこには自然な連携に加えて幾つかの仕組みやちょっとした工夫も作用していたと思います。
特に以下のような点は意識的に取り組んできた工夫です。
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毎月のフィードバックでの価値観の共有
Topotal社のSRE as a Serviceでは毎月のフィードバックがお願いされています。この場を活用して私たちから「このような動き方をしてもらえると嬉しい」といったスタンスや期待値を継続的にお伝えしてきました。
たとえば弊社代表青井が社員に推薦している図書『ベンチャーの作法』には「とにかくスピード感を持って自分がやる」といったマインドセットが記されています。私たちのチームでもこうした姿勢を大事にしており、フィードバックの場を通じて自然と共有することができました。 -
サービス思想に合わせた利用
SRE as a Serviceの「組織に仕組みを残していく」という思想を尊重し、
日々の運用保守をお願いするのではなく、仕組み作りや改善につながるタスクを中心に依頼するようにしています。 -
スピード感のあるコミュニケーション
非同期コミュニケーションでは、Topotalさんの動きや提案を止めてしまわないようこちらもスピード感を持ってレスポンスを返すようにしています。 -
オフラインでの接点
オフラインのイベントでは、Topotal社がブース出展をしていたため、ご挨拶をしに伺いました。
その場には、普段から一緒にお仕事をしている方々をはじめ、Topotal社の皆様がいらっしゃいました。
サービスを提供する側と顔を合わせて言葉を交わせたことで、日々のやりとりがより身近に感じられるようになり、信頼感も一層深まったように思います。
こうしたやりとりの積み重ねを通じて、現在では提案から実行までを安心して任せられるパートナーとして日々頼りにする場面が増えています。
SREチームとしても、少人数体制の中で改善業務を前に進めるうえで、チーム外に確かな支援先があることのありがたさを実感しています。
参考
これから
現時点では、SRE as a Serviceを活用する主な理由は「改善業務に割くリソースの不足を補うため」という側面が大きいのは事実です。
ただ、たとえチームの人数が増えたとしても、私はこの関係性を継続したいと考えています。
その理由は、高い技術力を持ったエンジニアがそばにいることで、組織としても個人としても学びが多いと感じているからです。
Topotalさんはさまざまなクライアントと向き合いながら支援を提供しており、その中で蓄積されたノウハウやプラクティスの厚みを日々の業務の中でも感じています。
今後は、これまで通り伴走していただきながら徐々にアプリケーションアーキテクチャに関わるような、より本質的な技術課題の領域にも踏み込んでいっていただきたいと考えています。
一方でSRE as a Serviceは長期的な支援を目的にしたサービスではありません。
私自身この考え方にも強く共感していて、将来的には自分たちだけで自走できるようになることが理想だと考えています。その意味でも、単に依存するのではなく、組織としてSREを実践していくプロセスに寄り添ってもらえる存在として引き続きお願いしていけたらと考えています。
まとめ
今回は、Topotal社のSRE as a Serviceを導入してから約半年間で感じたことを、導入の背景・実際に感じた価値・関係構築の工夫・これからの展望という観点でご紹介しました。
私たちのように、日々の運用保守に追われて改善まで手が回っていない状況において、SRE as a Serviceのような形で信頼できるパートナーが伴走してくれるのは非常に心強い選択肢だと感じています。
コスト面では一定の検討を要するサービスかもしれませんが、ただの人手不足を埋めるための手段ではなく、SREという考え方を組織に根付かせていくためのプロセスでもあると捉えています。その点において、大きな価値があると感じています。
SREの実践や仕組みづくりに課題を感じている方や、SRE as a Serviceに興味のある方にとって、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
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