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学術論文のND(改変禁止)ライセンスと日本語による解説について考える
この記事について
最近、 学術出版物を「改変禁止」ライセンスで共有する?(Creative Commons Japan)を読んで、オープンアクセスでありながらもND付きの論文は日本語によるレビューや図表の引用の範疇がどのような考えで行えば良いのかを自分なりには整理できたのでここにまとめます。
記事の目的
学術論文のND(改変禁止)ライセンスと、日本語による論文レビュー・解説の関係について、法的な観点と実践的なガイドラインを整理します。
学術的レビューとNDライセンス
レビューの本質的な役割
学術的なレビューには以下のような重要な役割があります:
- 学術的な議論の促進
- 知識の普及と共有
- 新しい視点からの考察の提供
これらの活動は、著作権法上の「公正な利用」として広く認められています。
CCライセンスにおけるレビューの位置づけ
クリエイティブコモンズのFAQでも、以下のような解釈が示されています:
- レビューや批評は著作権法上の例外規定として扱われる
- これらの権利はライセンスによって制約されない
- 学術的な目的での翻訳を伴うレビューも、この例外に含まれると解釈できる
適切な論文レビュー・解説の実践
1. レビューとしての性質を明確にする
基本的なアプローチ
- 単なる翻訳ではなく、論文の内容を解説・評価する
- 原著の主張や発見を正確に伝える
- 必要に応じて批評や考察を加える
具体的な実践方法
- 解説の意図を明確に記述
- 原著の内容と追加の考察を明確に区別
- 学術的な文脈での議論を展開
2. 図表の引用と解説
基本方針
- 元の図表はそのまま使用
- 説明は別枠で追加
- 出典を明確に表示
実践的なアプローチ
- 図表の引用時:
Figure 1より引用. [論文DOI]. CC BY-NC-ND 4.0
- 解説の追加:
【解説】この図が示すポイント: - 主要な発見 - 重要な特徴 - 注目すべき点
3. 適切な出典表示
必要な情報
- 原著論文の完全な書誌情報
- DOI
- 適用されているCCライセンス
- レビュー・解説であることの明記
表示例
本記事は、[論文タイトル](著者名, ジャーナル名, 年)の内容をレビュー・解説するものです。
原著:[DOI]
ライセンス:CC BY-NC-ND 4.0
4. 利用の範囲と制限
守るべき原則
- 必要な部分に限定した翻訳・解説
- 原著の本質を変えない
- 商用利用を避ける
- 学術的な議論の文脈を維持
5. 投稿プラットフォームと執筆立場の明確化
個人としての執筆立場
- 研究者・技術者個人としての知識共有
- 企業活動や営利目的と明確に区別
- 一般の技術ブログプラットフォーム(Zennなど)での発信
実践的なアプローチ
- プロフィールでの明記例:
本記事は筆者の個人的な研究・技術への関心に基づく解説であり、 所属組織や事業活動とは無関係です.
- 記事冒頭での立場の明確化:
この解説は、一研究者として学術論文の内容を理解し共有したいという 個人的な動機に基づくものです。
このように個人の立場を明確にすることで:
- 商用利用との線引きが明確になる
- より純粋な学術的議論が可能になる
- NDライセンスの趣旨により沿った利用となる
まとめ:バランスの取れたアプローチ
NDライセンスの学術論文を日本語で解説・レビューする際は、以下のバランスが重要です:
-
正確性の維持
- 原著の主張を忠実に伝える
- 誤解を招かない説明
-
付加価値の創造
- 学術的な考察の追加
- 文脈の提供
- 関連研究との関係性の説明
-
適切な区別と表示
- 原著と解説の明確な区別
- 適切な引用と出典表示
- ライセンスの尊重
このようなアプローチにより、NDライセンスを遵守しながら、学術的な議論と知識の共有を促進することが可能と考えます。
参考文献
- 学術出版物を「改変禁止」ライセンスで共有する?(Creative Commons Japan)
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