5α-還元酵素欠損症(5ARD)を持つ人々は生物学的男性であり、女性ではない
5α-還元酵素欠損症(5ARD)を持つ人々は生物学的男性であり、女性ではない
by Dr. Emma Hilton(英マンチェスター大学 発生生物学/遺伝生物学者)
キャスター・セメンヤ選手らを擁護する論拠として、多くの人々は以下のように主張する。
- 5ARDを持つアスリートは女性である。
- 5ARDに関連する特徴は、正常な女性の変異の範囲内である。
- これらのアスリートは女子スポーツに参加を認められるべきである。
最初の主張は、論理的一貫性がなく支離滅裂である。
5-ARDを理解するために、健常な生殖系の発達を見てみよう。
男性と女性のどちらの発達も、よく理解されている。
*男性の発達
機能的なSRY遺伝子を持つY染色体が精巣の発達を指示する
精巣がホルモン、特にテストステロン(T)を産生する
Tがまず男性の内性器の発達を促進する
TからDHTへの変換が男性の外性器の発達を促進する
*女性の発達
Y染色体もSRY遺伝子もないため、卵巣の発達が誘発される
卵巣からのテストステロン産生が低いか、まったくない
Tが低いか、まったくない環境で女性の内性器が発達できる
DHTが低い環境で女性の外性器が発達できる
私はしばしば生殖系の発達を次のように説明する。
連続的 (Sequential) 構造は既知の時間的順序で発達する
協調的 (Coordinated) 生殖器系の解剖学的構造は、各部分が他の部分と機構的に連関したシステムとして発達する
性別(sex)の「寄せ集め説 (cluster account)」は、個々人を部分の総和によって分類しようとする試みである。
「これらの男性的な部分と、あれらの女性的な部分を足し合わせると、この性別になる」といった具合だ。
これは、機能的なシステムの連続的かつ協調的な発達を記述する発生生物学を完全に無視している。
したがって、実際に生物学を反映した機能的な性別の説明を踏まえた上で、性分化疾患である5ARDを見てみよう。
5ARDの連続的 (Sequential) な発達過程を、健常な性別の発達と比較してここに図示する。
注意深い読者は、私が5ARDを説明する際に「協調的 (Coordinated)」という言葉を省略したことに気づくだろう。
それは、協調的ではないからだ。発達の連鎖に、断絶が生じているのである。
そしてそれは、5ARDを持つ人々が、健常な男性が陰茎(ペニス)を作るためにTをDHTに変換するのに必要な酵素を欠いているからである。
外性器は、両能性の組織領域 (bipotential tissue field) から分化する。
(健常な男性における) DHTシグナルは、その領域の発達を陰茎と陰嚢の方向へと促す。
(健常な女性における) DHTシグナルがないことは、その領域の発達を陰核と陰唇の方向へと促す。
5ARDを持つ人々は、SRD5A2と呼ばれる遺伝子に変異があり、これはTをDHTに変換する酵素が正常に機能しないことを意味する。
その結果、5ARDを持つ人々は外性器の発達に欠陥を持つ。健常な男性と比較して、彼らは男性化不全 (undervirilised)(virile = 男らしい 😉)であると言われる。
5ARDを持つ人々は、いくらかのDHTを持つか、低いレベルのDHTを持つか、あるいはDHTを全く持たない可能性がある。これは、外性器の領域が、マイクロ陰茎のような問題を伴いつつも明らかに男性として発達するかもしれないし、あるいは女性のように見えるように発達したり、両者の中間(曖昧な状態)になったりする可能性もあることを意味する。
5ARDを持ち、男性的な外性器を持つ人を考えてみよう。
彼らの発達経路を遡ってみよう。陰茎(ペニス)の成長に影響を与えた変異を除けば、ほとんど典型的である。
もちろん、男性として、彼らはXY染色体とSRY遺伝子、精巣などを持っている…。
では、女性であると議論される人々について考えてみると、どうだろうか?
うーむ、彼らには多くの点で「異常」があることになる。
彼らの遺伝情報はすべて逆だ。なんと奇妙なことか。
そして彼らのホルモンは? なるほど、男性の範囲まで上がっており、それは女性としては異常だ。
そして彼らの解剖学的構造は? 外性器を除けば、すべて非典型的で、「異常」で、逸脱している。
その「女性」というスキーマ(枠組み)は、発生生物学の観点からは全く意味をなさない。
最終的な指標である「性別(セックス)」に固執し、それゆえにシステムの他のすべてを「誤り」とラベル付けする必要があるのはなぜだろうか? むしろ、その最終的な指標自体が問題である可能性を認めるべきではないだろうか? 特に、その最終的な指標がなぜ生じたのかを正確に知っている場合には。
しかしさらに、5ARDを「女性」とする擁護者たちは、自らの主張がもたらす含意に直面しなければならない。
5ARDを持つ男性はSRD5A2に変異があり、この遺伝子は陰茎の成長に必要である。これは単純であり、十分に確立された発達プロセスに完全に合致する。
「これが発達プロセスの連鎖であり、ここが断絶箇所であり、これが結果である」
しかし、5ARDを持つ女性の場合はどうだろうか? 遺伝学界は揺るがされるだろう、断言する。
なぜなら、彼女はSRD5A2に変異を持つことはできないはずだ、そうでしょう?
結局のところ、彼女が持つ配列は女性であることと完全に一致しているのだから。
さらに、SRD5A2は、今やヒトの性決定の「マスター・スイッチ」と見なされなければならなくなる。
それだけではない。
以前は完全に健常と考えられていた「XY核型」を持つことが、今や染色体異常となり、以前は完全に健常と考えられていたSRY配列を持つことが、今や変異となる。
この特別な弁解は、馬鹿げている。
彼らが必死に主張しようとしている、「多くの異質な特徴を持つ女性」とは、実際には、ごく単純に外陰部を持つ生物学的男性 (male with a vulva) なのである。
発生生物学を少し学んだらどうか、というのが私の提案だ。
さらに言えば、彼らのスキーマによれば、セメンヤ選手は、実際には5ARDを持っていないことになる。
😅
Cat Bohannon著『Eve』のこの一節を思い出す。
(遺伝的には男性だが、)外見は少女。「卵巣が通常あるべき場所に、2つの精巣がある」
彼らの卵巣は、通常どこにも「あるべき」ではない。卵巣は彼らの発達系列の一部ではないのだ。
連鎖の断絶は、彼らが遺伝的に男性であり、精巣を持っていることの下流 (downstream) で起きている。
そしてその連鎖の断絶の結果、彼らは陰茎が通常あるべき場所に外陰部を持つことになったのだ。
(本記事は 英マンチェスター大医学・生物科学部の発生生物学者 Dr Emma Hilton のX投稿スレッド下記 3/27を日本語訳したものです)
(翻訳の助力 ... Gemini-2.5 pro)
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