ブレボで制作したマイコン包含回路をプリント基盤で量産するお話
はじめに
どうも、らまです!
皆さんはマイコンを使った回路を作ったりしますか?私はセンサーデータをアプリケーションに送信するときによく使っています!
今回はそんな回路をブレッドボードからプリント基盤化し、丈夫かつ量産する方法についてお話していきます。
ブレッドボード回路じゃダメな理由
そもそも、なぜブレッドボードからプリント基盤化が必要になるのでしょうか?
ブレッドボードは試作でよく使われますが、それが家電やデバイスの中に入っていることはまずありません。
自由な付け替えを行えるが故、ジャンパ線が折れたり、緩んだり、外れたり、外力を少しでも受けるようなことがあれば回路の誤動作につながってしまうのです。
これを防止する方法には、導線部分を基盤内に掘る、素子の抜けを防止するはんだ付けを行うことなどがあります。
回路切削器などの設備が使える環境にない人間(私...(´;ω;`))は、これらの防止方法を満たすために以下の2つの手段を取っています。
- ユニバーサル基盤上に手作業で実装
- Gerberデータを作成⇨業者にプリント基盤を発注
まず、ユニバーサル基盤について
ユニバーサル基盤とははんだ付け用のパッド穴が裏表にたくさんついた板のことです。これに導線(スズメッキ線やビニル電線など)と素子を全て実装していきます。結構時間がかかります。
なので、私がユニバーサル基盤で回路を作成するときは、プリント基盤の発注〜到着までの時間が惜しく、導線が緩んだりしない回路が必要な場合です。(アクチュエータとつないだり加速度センサーで加速度を取得する場合、ジャンパ線がすぐ外れる...)
対してプリント基盤は?
プリント基盤化はブレボのデメリットを防止しつつも、さらに業者で発注するもののため量産が可能となっています。(ユニバーサル基盤で量産は大変なことになります...)
Gerberデータ作成フロー
ここからはKicadを使ってプリント基盤を発注するために必要なGerberデータを作っていきます。
ブレッドボードで試作が終わったら...
- Kicadインストール(Eagleでも可)
- 使用するマイコン・ICのシンボルおよびフットプリントがライブラリ内にあるか確認
- 2.がなければ検索して手動でライブラリに入れる
- 3.もなければシンボル・フットプリントを自作
- ブレッドボードの回路図を作成
- 5.の回路図をフットプリント対応
- Gerberデータのエクスポート
の順で進めていきます。
1. Kicadインストール
これを参考にすると良いかも
2. 使用するマイコン・ICのシンボルおよびフットプリントがライブラリ内にあるか確認
シンボルエディタまたはフットプリントエディタを選択します。

左上のライブラリから使用するマイコン・ICの部品をフィルタータブから検索します。

3. 2.がなければ検索して手動でライブラリに入れる
これを参考にするとよい 例)Seeed Xiao ESP32C3
4. 3.もなければシンボル・フットプリントを自作
自作(シンボル)ライブラリファイルの作成
まず回路図エディタで使用するシンボルを作成します。
シンボルエディタを選択します。
ファイルから新規ライブラリ>グローバルを選択

以下の場所にシンボルが格納されているので任意のライブラリ名で保存します。
C:\Program Files\KiCad\9.0\share\kicad\symbols
次に設定>シンボルライブラリを管理を選択>左下+ボタンでテーブルに空行を追加します。

空行のニックネームにライブラリ名(ex.@ModuleLibrary)
空行のライブラリのパスに先ほど保存したパスを選択してOKを押します。
C:\Program Files\KiCad\9.0\share\kicad\symbols/@ModuleLibrary.kicad_sym

シンボルの作成
次に追加したライブラリ(@ModuleLibrary)を右クリック>新規シンボルでシンボル名を設定しOKを押します。(ex.M5Stack-ATOM-LITE)


すると以下の画面が表示されるので、ピンの追加をクリックします。

以下のプロパティをマイコンやICのデータシートを基に各ピン情報を設定していきます。

ATOM-LITEの場合には、公式のデータシートからピンマップが次のようであることがわかります。

IN/OUTを行えるGPIOピンはデータシート上ではG22、3.3Vは3V3、0VはGNDで表されます。
今回はGroveピン(下の4ピン)は使用せずに、左右のピンソケットのみを使用しようと思います。(Groveピンも必要な場合には同じ要領で追加実装してください)
以下の表に追加する全ピンのプロパティを示します。向きが右のものは左側に、左のものは右側に寄せて仮で配置してください。
| ピン名 | ピン番号 | エレクトリカルタイプ | 向き |
|---|---|---|---|
| 3V3 | 1 | 電源出力 | 右 |
| G22 | 2 | 入力 | 右 |
| G19 | 3 | 入力 | 右 |
| G23 | 4 | 入力 | 右 |
| G33 | 5 | 入力 | 右 |
| G21 | 6 | 入力 | 左 |
| G25 | 7 | 入力 | 左 |
| 5V | 8 | 電源出力 | 左 |
| GND | 9 | 電源出力 | 左 |
するとこのようなシンボルが作れるかと思います。

次に短形を描画を選択します。

ピン名を囲っていきます。(1回目のクリックで基準点、2回目のクリックで終点を設定でき、それを繋げた線を対角線とした四角形ができあがります。)

四角形の線上を左クリックすると右側のプロパティタブが表示されます。
塗りつぶしをNone→Fill colorに変更すると四角形の中に色が塗られます。

塗りつぶしの色はプロパティの塗りつぶしの色から変更することができます。
最後にシンボルの基準位置であるアンカーを調整します。

作成した四角形の中心を左クリックすることでアンカーを中心にもってくることができます。
回路図エディタで回転移動するときにこの設定をしておくことでストレスなく作業を進めることができます。
これによって自作シンボルの完成です。

回路図エディタで自作のシンボルを呼び出せるようになりました。
自作(フットプリント)ライブラリの作成
フットプリントエディタを選択します。
ファイルから新規ライブラリ>グローバルを選択
以下の場所にシンボルが格納されているので任意のライブラリ名で保存します。
C:\Program Files\KiCad\9.0\share\kicad\footprints
次に設定>シンボルライブラリを管理を選択>左下+ボタンでテーブルに空行を追加します。

空行のニックネームにライブラリ名(ex.@ModulePad)
空行のライブラリのパスに先ほど保存したパスを選択してOKを押します。
C:\Program Files\KiCad\9.0\share\KiCad/9.0/footprints/@ModulePad.pretty
フットプリントの作成
次にシンボルを実際の基盤スケールに変換したフットプリントを作成します。これを作成することで物理的な干渉や導線の干渉を防ぐことができます。
まず初期設定としてグリッドサイズを2.54mmピッチにします。

これによってブレッドボードの間隔2.54mmをフットプリント上で再現することができます。
また、部品配置を楽に行うためにカーソル設定を変更します。
設定>設定を選択します。

表示オプションを以下の通りに変更します。

またフットプリントのプロパティを次のように設定します。


次にシンボルのピン番号に沿う形でパッド(はんだ付けを行える穴)を設置していきます。
まずデフォルトのパッドプロパティを変更します。

以下のように設定してください。

次にパッドの追加を選択します。

するとこのようにパッドを自由に設置できます。

計9個のパッドを下の通りに配置してください。

次にマイコン筐体やIC基盤の寸法に合致する四角形でこれらのパッドを囲む作業を行います。
まず、フットプリントのアンカの配置を選択します。

7ピンと3ピンの中点にアンカを移動します。

グリッドサイズを1.0mmに変更します。

ATOM-LITEは寸法が縦24mm、横24mm(以下参考)なのでアンカ中心に上下左右12mmの位置が四方の角部分になります。

短形を描画を選択します。

左上の角から右下の角に対して四角形を作成します。

次にテキストボックスを描画をクリックします。

テキストには
21
25
5v
G
またレイヤーをF.Silkscreenに設定します。

このようなボックスが完成しました。

アイテムを選択して、6-9ピンの横に設置してください。(大体で大丈夫です。)

同様の手順で1-5ピンのピンアサインもテキストボックスに記して設置します。

最後に作成したシンボルとフットプリントを関連付けます。
これによってこの部品をPCBエディタで使用する際に毎回フットプリントを割り当てる作業がなくなります。
シンボルエディタを開き、シンボルのプロパティを選択します。

オレンジボタン内のライブラリマークを選択します。

自作したフットプリントファイルを選択します。今回の例では、@ModulePadフォルダ内にあるM5Stack-ATOM-LITEを選択し、OKを押します。

これによって、以下の通りライブラリシンボルのプロパティを設定できます。

5. ブレッドボードの回路図を作成
今回は以下の構成の回路を作成します。
まず、回路図エディタを開きます。
キーボード上でAを押します。(これがシンボルを配置するショートカットになります。)
すると、シンボルを選択が表示されるため、作成したM5Stack-ATOM-LITEを選択、OKを押します。

適当な場所で左クリックを1度押します。

次に一般的なボタンを導線で接続するためのパッドを2つ配置します。
キーボード上でAを押し、TestPadを選択します。

するとこのように表示されます。
キーボード上でRを押すことで、シンボルを回転することができます。
1回回転させて、次のように配置してください。

これを2つ設置します。

テキスト上で左クリック長押しすると、文字の移動ができます。

また、テキストのプロパティからテキストの表示を消すことができます。

以上を駆使して次のような配置にします。

次にラベルを作成します。グローバルラベルを配置を選択します。

するとグローバルラベルのプロパティが表示されるので以下の通り設定してください。

ラベルが表示されたら1ピンの横に配置します。

次に電源シンボルの配置を選択します。

検索フィルタにGNDを入力することでGNDが表示されます。選択して、OKを押します。

9ピンの横に配置します。

次にワイヤーをドラックを選択します。(ショートカット:W)

TP1の〇マークを押したあとに5ピンの〇マークを押します。

同様に3V3とGNDのシンボルをワイヤーで繋いでいきます。

あとはTP2からGNDの横までワイヤーを引き(1回左クリック)、上に導線との交点を作ってください。(もう一度左クリック)

これで導線を配置できました。

最後に空き端子フラグを配置を選択します。

2,3,4,6,7,8ピンの〇を左クリックすると次のようになります。(escapeで空き端子フラグ配置モードから通常の選択モードに戻れます。)

これで回路図は完成です。
基盤にネジなどの通し穴を開けたい場合には、ここでキーボード上でAを押し、MountingHoleを選択します。デフォルトのフットプリントがありませんをMountingHole_3.2mm_M3に変更し、OKを押してください。

配置画面になるので、MountingHoleを適当な場所に4個配置してください。

6. 5.の回路図をフットプリント対応
そのまま回路図エディタを開いたままで、ツール>フットプリントの割り当てを選択します。

するとフットプリントを割り当て画面が表示されます。

TP1をクリック、検索フィルターにpadと入力してTestPoin:TestPoint_THTPad_D1.5mm_Drill0.7mmを左ダブルクリックしてください。

これで直径1.5mm,ドリル穴直径0.7mmのパッドを割り当てることができます。
TP2も同様の設定をしてください。
U1に関しては先ほど自作フットプリントを割り当てているため変更不要です。
そのままOKを押します。
次にツール>回路図から基盤を更新を選択します。

すると自動でPCBエディタが開きます。

基盤を更新を押してください。割り当てた全ての部品を束として設置することができるようになります。適当な場所で左クリックしてください。

マウスホイールでカメラを近づけたりしながら、左クリック選択しドラッグ&ドロップで各部品を位置を変えていきます。配置の際はフットプリント作成時と同様に2.54グリッドや1.00mmグリッドを選択しておきましょう。

ATOM-LITEを基準に作ると分かりやすいと思います。今回MountingHoleはネジ固定用の通し穴にするので四隅に配置しました。

次に製造する基盤の外径を作っていきます。
短形描画を選択します。

左上から右下を囲います。基盤の寸法に指定がある場合にはここである程度合わせておきます。(ex.横の寸法30.5mmの基盤を作りたい場合にはそれに合わせて0.5mmグリッドを選択した上で作業を行う。)
作成した短形の線上を左クリックすると縦横の編集が可能となります。(ドラッグ&ドロップで線ごと操作可能に。)

なお、このときの短形サイズは左下に表示されています。(41mm*37mm)

また作成した短形の線上を左ダブルクリックすると短形プロパティが表示されます。レイヤーをEdge.Cutsにしましょう。

また、いらないフットプリント値のテキスト表示をオフにします。


次に、ブレッドボードではジャンパ線で接続していた導線部分を引いていきます。
レイヤーのF.Cuを選択した状態で単線を配線を選択します。(ショートカット:X)

まず5ピン(G33)の中心をクリックすると、赤いワイヤーが出るので、その真下でクリック、そしてTP1の中心に接続してください。(内角135度くらいに折り曲げられると良い。)

同じようにTP2も接続していきます。
今回は学びも兼ねて、レイヤーB.Cuに配置してみましょう。
レイヤーのB.Cuを選択した状態で単線を配線を選択します。(ショートカット:X)

9ピン(G)の中心をクリックすると、赤いワイヤーが出るので、その真下でクリック、そしてTP1の中心に接続してください。(内角135度くらいに折り曲げられると良い。)

これで、ワイヤーを引くことができました。
PCBデータの完成です。

基盤の出来上がりイメージの見方
これにて回路設計が完了しました。
しかし、2D表示だけではどんな回路を制作したかわかりづらい部分もあると思います。特にワイヤーが裏表どのように配置されているのか3次元的に把握できないという問題があります。
これを解決するために、3次元表示モードを紹介します。
表示>3Dビューアーを選択します。

すると次のような画面が表示されます。

回路オブジェクトを左長押ししながらマウスを動かすことで様々な角度から回路を見ることができます。

しっかり表裏でワイヤーが描かれているのがわかります。
ここで修正があるようであればPCBエディタで修正しましょう。
また、回路の左右が逆転してしまっていることもあるかと思います。
そんなときには、回路全体を囲んで選択したあとに、、、

水平反転を選択します。

これによってワイヤーが反転されます。

この左右対称にワイヤーを引いていない場合には、画像のように少しずれた配線になってしまうのでここは手動で修正しましょう。(修正したいワイヤーを左クリックすることでワイヤー移動モードになります。)
また、単に左右反転で基盤を見たいという場合、基盤ビューを反転で基盤の見え方を逆転させたりもできます。(これは見え方が変わるだけの設定のため、基盤本体には何の影響も与えません。戻したいときには、基盤ビューを反転を解除してください。)

その他、PCBエディタ設定項目
よりGNDの電位を安定させる!
ベタ塗りの仕方
ビアの設置の仕方
7. Gerberデータのエクスポート
以下を参考にするとよいです。
おわりに
プリント基板を発注するまでの一連の流れを紹介しました!
コントローラーやセンサー基盤を作る上で重要な作業になるのでしっかり確認しておきましょう。
では!
参考
Discussion