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LLM導入を迷子にしない7つの作法 ― 合意・指示・接続・来歴・運用

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1. はじめに――最初は頼もしいのに、だんだん不安になる話

最初は驚くほど働いてくれるのに、要件が増えるほど小さなズレが目につきます。うっかりの上書き、意図と違うまとめ方、誰にも説明できない挙動。
よく見ると、原因は「どこまで任せてよいか」と「結果の見届け方」を曖昧にしたまま走り出したことでした。ここでは、導入初速は保ちつつ、後から困らないための“地図”を作る話をします。

2. 「つなぐ」前に決めておきたいこと

接続そのものより先に、合意を作ります。難しい道具は要りません。紙でも十分です。

  • 目的:何を手伝ってもらうのか(検索なのか、下書きなのか、変換なのか)
  • 苦手にしてほしいこと:触れてはいけない領域、越えてはいけない境界
  • 見届け方:作業の痕跡をどこに残すか、誰がいつ確認するか
  • 更新の窓口:振る舞いを変えるときの連絡先と順番

これが“導入ドキュメント”の芯になります。短くても、ここがあると後で助かります。

3. 指示文の作り方――意図→制約→入出力例

うまくいく指示は、三つのブロックが自然につながっています。

  1. 意図:なぜそれをやるのか(誰の、どんな判断を助けたいのか)
  2. 制約:使ってよい資料・語調・長さ・避けたい表現
  3. 入出力例:最低限のサンプル(入力1つ、出力1つで十分)

この順に書くと、読み手が変わってもブレにくくなります。長文化が気になったら、なくせない情報だけを残して、言い回しは後で軽く整える程度にします。

4. 接続の作法――誰が、何に、どこまで

道具に触れられる範囲は、人ではなく“用途”で区切るのが安全です。たとえば「要約専用」「変換専用」のように役割ごとに分けます。ひとつの接続に多機能を詰め込むより、用途を分けたほうが管理しやすく、説明もしやすい。
そして、用途ごとに責任者をひとり決めます。困りごとが起きたら、その人にまず声が届くようにしておきます。

5. ファイルの扱い――作られたものの“由来”を残す

自動で作られたファイルほど、来歴が大事です。

  • どこから素材を得て
  • どの指示で生成され
  • 誰が確認したか

最低でもこの三つは一緒に残しましょう。ファイル名や末尾の追記だけでも構いません。後から検証できるだけで、運用の空気が落ち着きます。

6. 運用を回す――小さく直すための仕組み

最初から完璧は目指しません。代わりに、小さく直す前提で回します。

  • 代表パターンを数個だけ用意して、定期的に試す
  • 振る舞いが変わったら、原因を「指示」「接続」「素材」のどれかにまず仮置きする
  • 直したら、合意文書に一行だけ変更を追記する(日時と理由)

この繰り返しで、広げても崩れない土台になります。

7. おわりに――拡張は合意の上に

頼もしさは、勢いでは長続きしません。任せる範囲を言葉にすること結果の見届け方を決めること。この二つが先にあるだけで、導入後の不安は驚くほど小さくなります。拡張は、その合意の延長でやればいい。慌てなくて大丈夫です。

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