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ナッジとセキュリティ:横浜市 YBiT
なぜ作成したのか
- 自社のセキュリティ教育に頭を悩ましていりときに目に入った横浜のナッジを用いた施策が気になったので調べてみる
参考
横浜市が抱える課題
- 高齢者を狙った特殊詐欺被害が深刻(年間933件・被害総額約20億7200万円)
- 従来の「注意してください」という呼びかけだけでは注目度や行動変容が十分に得られない
仮説と検証
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実際の詐欺に近い状況を示すことで注意喚起を高められる
- 一見して「詐欺の注意喚起」と分からないようにし、リアルな詐欺電話のような感覚を体験してもらうデザインにすることで、実際に電話を取った際の“気づき”を促す。
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具体的な行動指示(留守番電話の設定)を示せば、利用者がとりやすい対策をすぐ実行できる
- 「電話に出ないように」といった抽象的な訴えではなく、「留守番電話を設定しましょう」といった具体的なアクションを呼びかける。
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「電話を録音している」ことを犯人に伝えるメリットを強調すれば、より積極的に行動できる
- 留守番電話を設定すると犯人が嫌がって電話を切るという利点を明確にし、行動変容を後押しする。
チラシ配布後、電話やメールなどを通じて市民からの反響は増えたものの、実際に留守番電話を設定してもらった数などは未集計のため定量的な効果測定は行われていません。しかし「関心を引く工夫」によって問い合わせが増えた点からも、従来より高い注意喚起が期待されると評価されています。
効果
- ナッジを活用した新チラシへの反響(問い合わせ)が例年より増加
- 具体的なデータはないものの、市民の関心を引き出し、行動喚起につながる可能性を示唆
YBiT(横浜市行動デザインチーム)
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主な活動
- cases and toolkits(優良事例や業務に使えるツールキットの紹介)
- 事例やツールキットを地方自治体の職員向けに分かりやすく体系的に紹介
- 現在は英国BITのEAST®を参考に、YBiTにて邦訳・加工したものを公開
- workshops(人材育成)
- 横浜市の区局や他自治体などの要望に応じて開催する研修
- case creation(事例創出)
- 庁内外を含め既に80以上(令和6年1月時点)の案件実績
- 分野は防災、健康、医療、温暖化対策などと多岐にわたる
- network(ネットワーク構築)
- 日本版ナッジユニット(BEST)やイギリスのThe Behavioural Insights Team、アメリカideas42、シンガポール持続可能性環境省、OECD、WHO Western Pacific Regional Office、世界銀行などの国内外の行動デザイン推進チームとも連携
- cases and toolkits(優良事例や業務に使えるツールキットの紹介)
当該事例とYBiTのかかわり
- 横浜市市民局の職員3名と、YBiTの2名、科学警察研究所の研究者を含む計6名のチームで制作
- デザインや文言などナッジ要素を具体化するうえで、YBiTが持つ行動経済学・行動デザインの知見を生かして協力
今後の展開
- より効果を高めるためには、**具体的な数値評価(留守番電話の設定率や被害件数の変化など)**を追い、今後の施策にフィードバックする必要がある
- 「留守番電話の設定」以外にも、“自発的に身を守る行動”を促すナッジ的手法を防犯以外の行政施策へ広げられる可能性
- YBiTを含む複数部局や専門家との連携を継続し、市民の行動変容を後押しする取り組みが拡充される見通し
所感
- 「あとで読んでおいてください」「各自で学習を進めてください」が実を結ぶことはほとんどない。実を結んだらそれはもうもともとそういう資質のあった突然変異だと思う。
- 誰かがやってくれるセキュリティに、気を払うひとはいない。自分事にしてもらうためにナッジが必要なのだろうなと思う。
- 日々の情報発信に生かしていけるだろうか。。。?
Discussion