PMBOKガイド®第8版(の目次)から読み解く これからの時代のPjM
みなさん、こんにちは!BABY JOB株式会社 開発部 手ぶら登園開発課のOKWRKです。
主にプロジェクトマネージャー(以下、PjM)として、おむつサブスクのプロダクト開発に関わっています。
PMBOKについて
突然ですが、皆さんは 「PMBOK(ピンボック)」 をご存知でしょうか。
これは Project Management Body of Knowledge の略で、世界中のプロジェクトマネジメントのノウハウを体系化した、いわば 「プロジェクトマネジメントの世界標準の教科書」 です。
PjMの仕事が時代とともに大きく変化してきたことを反映して、PMBOKも現場のプロジェクトマネジメント業務の変化に合わせて、内容を劇的に変えてきました。
かつて管理手法はウォーターフォールが主流だった時代、PMBOKは 「具体的なプロセスの辞書(第6版以前)」 でした。 しかし、社会の急激かつ大きな変化とともにアジャイルが一気に普及すると、2021年の第7版では アジャイルを念頭に置いた 「抽象的な原理・原則のガイド」 へと、変貌を遂げたのです。
そして先月の2025年11月14日。最新の PMBOKガイド 第8版 が英語で公開されました。
今回は和訳本の出版に先駆けて、英語版の目次など公開情報から読み取れる「これからの時代のPjM」について考えてみたいと思います。
管理(Management)から権限委譲(Enpowerment)へ
まず、PMBOKガイドは
- プロジェクトマネジメント基準(The Standard for Project Management)
- プロジェクトマネジメント知識体系の手引(A Guide to the Project Management Body of Knowledge)
の2部構成になっています。
この中で、最初に注目したいのが、プロジェクトマネジメント基準 の 3章「プロジェクトマネジメント標準(Project Management Principles)」です。
ここには6つの原理・原則が掲げられているのですが、これは第7版の12の原理・原則に対応するものです。

第7版の12の原理原則と第8版の6つの原理原則
(※第8版はまだ和訳が出てない為独自翻訳を記載・表記は実際の目次順)
数も半分になり、洗練された印象がありますが、このなかでも特に注目したのが PjMが発揮するマネジメントスタイルに関する項目(画像で赤く着色した箇所) です。
第7版では スチュワードシップ(管理者責任) や リーダーシップ の発揮が求められているのに対し、第8版では 「エンパワーされた(権限委譲された)文化を築く(Build an Empowered Culture)」 ことと、「説明責任のあるリーダーになる(Be an Accountable Leader)」 ことが求められています。
私はこのことから、PjMはチームを管理・牽引することに責任を持つという考え方から、チームが自律的に動ける環境や状態を作ることに責任を持つという考えに変革することが求められているのだと受け止めました。
今後、私たちPjMには、チームの自律性を尊重し、その能力を最大限に引き出す環境を整備する力が求められているのです。
「コスト」を超えた「財務」への視座
プロジェクトマネジメント知識体系の手引の2章「プロジェクトパフォーマンス領域(Project Management Performance Domains)」からは、PjMがパフォーマンスを発揮するべき領域、つまり責任の範疇の変化が読み取れます。

第7版の8つのパフォーマンス領域と第8版の7つのパフォーマンス領域
(表記は実際の目次順)
計画パフォーマンス領域(Plannning Performance Domain)が スケジュールパフォーマンス領域(Schedule Performance Domain)になっているなど、わざわざ別の単語に変更しているパターンも内容にどのような変化があるのか気になるところですが、私が特に注目したいのは 「ファイナンスパフォーマンス領域(Finance Performance Domain)」 です。
第7版では複数のパフォーマンス領域の観点の1つとして 「コスト」 は扱われていました(第6版では知識エリアとして「コスト・マネジメント」が掲げられていた)が、第8版では 「財務(Finance)」 が独立したパフォーマンス・ドメインとして定義されたことになります。
このことは、PjMは単にコストを予算内に抑えることが求められているだけでなく、プロジェクトが組織にどのような 価値 をもたらすか、そして 財務的な健全性 にどう貢献していくのか、という ビジネス的な視点 を持ってプロジェクトマネジメントに当たることが求められてるようになっていくことを示していると考えます。
今後PjMは従来のコスト管理を超え、より経営的な視点を持つことが求められているのです。
プロジェクトマネジメントと「AI」
また、今の時代の社会人にとって非常に重要な課題が「AIとの付き合い方」ですが、PMBOKガイド 第8版でも付録(Appendix)に AI が登場しています。
その小見出しを見てみると、組織やプロジェクトがAIをどのように採用すべきかということが書かれていると思われる「採用戦略(Strategies for AI Adoption)」や、プロジェクトマネジメントの現場で実際にどう使われるかのノウハウが書かれていると思われる「一般的なユースケース(Common Use Cases)」などがあります。
その中でも私が特に注目したのは 「責任ある使用と倫理的懸念(Responsible Use and Ethical Concerns)」 というセクションです。
これは、AIをプロジェクト管理に使用する際は、技術的な利便性だけでなく、その倫理的な影響についてもPjMが責任を持つべきであることを示唆してると考えています。これは 当社のAIに対する考え とも合致するもので、私自身今後 PjMとして働く中で重要視していきたい点でもあります。
AIによってプロジェクトの効率化を追求しつつ、その「責任ある使用(Responsible Use)」を監督する役割が新たにPjMに求められています。
おわりに
公開されている『PMBOKガイド®第8版』の目次から、今後のPjMに求められる能力や責務を考察する試みはいかがでしたでしょうか。
時代や環境の変化に対応したマネジメントスタイルの変革、より高い視座の必要性、そしてAIという強力な新ツールの有効かつ責任ある活用。これらが今後のPjMに求められるという予測に、厳しさを感じないといえば嘘になります。
しかしながら、日々の業務や様々な情報収集を通じて、この予測には深い納得感があるのも事実です。
まだ英語の原著が出たばかりですが、日本語版が出たら(あるいは頑張って原著を)読んでみて、この記事の答え合わせをしたいと思います。
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