ソフトウェア開発における「スタブ」の起源と普及
要約
スタブ(stub)とは、ソフトウェア開発で未完成のモジュールの代わりに使われる簡易な部品のことです。
1970年代初頭、IBMの技術者Harlan D. Mills(ハーラン・ミルズ)がトップダウン開発の中で初めて採用し、下位モジュールの「切り株」が上位モジュールの成長を支えるように、システム全体の構築を助ける役割を担うことから生まれました。
その後、テストや分散システムなど多くの場面で活用され、今では幅広い開発現場で利用されています。
スタブって何?
スタブとは、「ダミー実装」とも呼ばれるもので、実際の機能がまだ完成していない部分に代わって、あらかじめ決められた結果を返す簡易なコードです。
全体のシステムが完成していなくても、スタブを使うことで個々のモジュール同士の連携や動作確認が可能になります。
なぜ「切り株」?
「スタブ」という言葉は、もともと英語で「切り株」を意味する stub に由来しています。
切り株は木としての大切な上の部分(枝葉等)がすべてない状態ですが、上の部分を支える力があります。
そのイメージで、ソフトウェア開発における下位モジュールのスタブは、まだ完成していない部分を仮に補完する「基盤(根)」として機能します。
下位モジュールのスタブが存在することで、上位モジュールはその「切り株」を頼りに、木が根元から成長するようにシステム全体の機能を拡充・発展させることが可能になります。
スタブの起源
トップダウン開発の文脈で広く知られるきっかけになったのは 1970 年代初頭の Harlan D. Mills (ハーラン・ミルズ)の論文のようです。
IBMの技術者 Harlan D. Mills がトップダウン開発手法を提唱する際、未完成の下位モジュールの代替として簡易な実装(スタブ)を使うアイデアを発表しました。
論文『Top-Down Programming in Large Systems』でこの概念が詳細に説明され、IBM内部での成功事例を通じて、スタブの考え方は広まっていきました。
スタブの普及と広がり
1970年代後半になると、構造化設計や統合テストの分野でスタブは一般的な手法となりました。
Ed Yourdon (エドワード・ヨードン)や Larry Constantine (ラリー・コンスタンチン)の書籍 『Structured Design』、Glenford J. Myers (グレンフォード・マイヤーズ) の『The Art of Software Testing』など、数多くの技術文献でスタブの概念が取り上げられ、業界全体で認知されるに至りました。
また、70 年代末~80 年代にかけて分散システム(RPC)の実装でも、クライアント側の「スタブ」として利用されるなど、その用途はさらに広がりました。
こうして、下位モジュールの「切り株」が上位モジュールの成長を支えるように、スタブはソフトウェア開発の多くの現場で重要な役割を果たすようになりました。
まとめ
-
スタブとは?
未完成のモジュールの代替として使われる簡易な実装 -
なぜ「切り株」と呼ばれるのか?
切り株は木の主要部分が失われても、新たな芽や成長の基盤となる。下位モジュールのスタブも、上位モジュールが機能拡充・成長するための仮の基盤として機能する。 -
起源と普及
1970年代初頭、IBMのHarlan D. Mills(ハーラン・ミルズ)がトップダウン開発の中で提唱。
構造化設計や統合テスト、分散システムでの利用を通じ、業界全体に広まる。
感想
チームメンバーの「スタブってなんでスタブなんだろう?」と疑問に思った発言から調べました。
「切り株みたいに下にあるものだよ」と遥か昔に教えていただいたことはありましたが、
今後は下位モジュールの「切り株」が、上位モジュールの健全な成長を支える姿を思い浮かべながら開発しようと思いました。
Discussion