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Notionでは足りず、Jupyterは敷居が高い人へ向けたアプリを作っている話

に公開

はじめに

Lablate という Web アプリを個人開発しています。
ざっくり言うと、

研究現場の「記録 → 集計 → 報告」を、ひとつのアプリで完結させる

ためのツールです。
ブロックエディタに、表計算と科学グラフ(散布図・ヒストグラム等)をそのまま貼り付けられて、データはすべて手元の .md / .csv/.json ファイルとして残ります。

この記事は技術的な詳細というより、なぜこれを作っているのか の話です。

ちなみに私は、研究機関で働く、(元々?)データ分析職の人間です。
普段は研究系の業務をしつつ、Lablate は一人で設計・実装・運用しています。


なぜ作ったのか

きっかけ

私自身は、研究などの記録から軽い報告共有まで Jupyter Notebook だけで完結 できます。
データの読み込みと可視化を Python、記録や考察をマークダウンで書いて共有すれば事足ります。(求められれば、PDF, HTML化)

しかし、多くの人にこれを求めるのは現実的ではない

ラボの実験助手さん、研究補助員さん、研究者の方々の多くは Python はもちろん、そもそも 「コードを書く」という選択肢が日常にない
LLM が当たり前になった現在でも状況が一変しているとは言えません。
これは、触ったことがないために便利さが分からない ことが大きいと思います。

この根本の解決策は、記録・集計・報告を一元管理できるソフトがあればいいだけだと思いました。
Jupyter を使える人は、それを一元管理ツールとして転用しているだけです。
コードを書かない人にとっての「Jupyter 相当」が、いま世の中に無い。
ここに注目したのが "Lablate" の開発を始めたきっかけです。

現場で起きていること

たとえば、報告資料を作る場面

  • 数値データは Excel ファイルとして存在する
  • 報告用には PowerPoint を作る
  • Excel と PowerPoint は 別々に管理されている
  • 報告書を見て気になった数字があっても、元の生データに即座にアクセスできない

この非効率が認識されていない、というより、「しょうがないこと」として受け入れられている 状態です。

Microsoft 依存と LLM 親和性

もう一つ、現場で強く感じている課題があります。
研究機関の業務は、ほぼ Microsoft 製品(Excel / Word / PowerPoint)に依存 しています。
セキュリティ・ガバナンスの観点で組織として統一されているのは合理的ではあります。

ただ、副作用として LLM との親和性が極端に低い
.xlsx.pptx も、中身はバイナリ + XML の塊で、LLM に渡してもうまく扱えないことが多いです。
近い未来そうでなくなる可能性も大いにありますが、、、

また、 MSやサードパーティが用意している LLM 連携機能は、機微情報を扱う研究機関の情シスからすると そう簡単には承認できない代物 です


Notion は?

ここまで読むと、「Notion でいいのでは?」と思う方もいると思います。
私も Notion は使っていますし、素晴らしいツールだと思っています。

ただ、研究現場のユースケースに当てはめると、いくつか構造的に合わない点があります。

  • グラフ:Notion のグラフは Database View の派生で、連続値の XY 散布図 が作れません。(作成可能の場合、ごめんなさい)
    「検量線」や「複数系列プロット」のような頻出するグラフの描画が構造上難しい。
  • データの置き場所:クラウド保存のため、機微情報を扱う研究機関のセキュリティ部門に通すのが難しい。
  • 独自データベース構造:素直な .md / .csv ではないため、別ツール移行や LLM 連携でひと手間かかる。(NotionAIは知っています)

狙っている領域が違うわけです。


Jupyter は?

私は、Jupyterも愛用していますが、また別の壁があります。

  • そもそも Python を知らない人が多い
  • 知っていても、業務で書く人はさらに少ない
  • LLM 前提の時代でも、この状況はあまり変わっていない
  • 触ったことがないので、何が便利なのか想像する手がかりがない

「コードを書けば楽」なんですが、コードを書いたことのない人にはなかなか届きません
少しだけツールの敷居が高いのです。


Lablate の立ち位置

そこで、

Notion では届かない領域と、Jupyter を使いこなせない人の間

を埋めるアプリとして Lablate を作っています。

  • ブロックエディタ(Notion 系の使い心地)に
  • 表計算ブロック科学グラフブロック(散布図、ヒストグラム、回帰など)を直接配置できる
  • データは 手元の .md.csv として保存される
  • 報告書を書きながら、ワンクリックで生データに遡れる
  • ローカル保存 or OneDrive 共有フォルダで運用できる

このことによって、

  • 記録から報告書、マニュアル作成までを 同じアプリで完結 できる
  • 報告書から気になった点があれば、生の数値データにすぐアクセス できる
  • .md.csv なので、将来 LLM に渡して要約・整形させるのも自然

LLM 連携機能は、あえて搭載していません
(技術的な部分も多少ありますが、、)
「LLM 機能搭載」を前面に出すと、情シスで通りにくくなるという現場感があるためです。
代わりに、ユーザー自身が好きな (もしくは使用が許されている)LLM に .md.csv を渡せる、という外部接続を前提の設計にしています。


ローカル保存というこだわり

技術スタック自体には正直そこまで強いこだわりはありません。
(Next.js, React, BlockNote, Plotly.js, Jspreadsheet など、定番の選定)

ただ、「データを自社サーバーに置かない」 という点には、こだわりました

理由を順番に挙げると、

  1. 情シス・セキュリティ部門を通しやすい
    研究機関にいると、機密性を理由にできないことが多い。
    「サーバーにデータがない」というアーキテクチャは、現場で求められると思っています。
  2. ユーザー側がデータの主導権を持てる
    .md.csv の塊として手元に残るので、ベンダーロックインがありません。
    Lablate のサービスが終わっても、データはそのまま使えます。
  3. .md / .csv ベースは LLM と組み合わせやすい
  4. 機微情報を個人開発者として預からなくて済む(後付けですが)
    これは正直、設計を決めながら「ラッキー」だなと思っていました

特に 1 番目が大きいです
導入されないと意味がないですからね


おわりに

  • 自分は Jupyter で完結できるが、周りはそうではない
  • Notion はよくできているが、研究用途の散布図やローカル保存という点で重なりが薄い
  • Jupyter は強力だが、コードを書かない人に敷居がすこし高い
  • その間を埋めるアプリがほしくて、自分で開発している

という話でした。

現在、ゲストモードでログイン不要で試せるようにしてあります。
触っていただけるとうれしいです(フィードバックはもっとうれしいです)。

ここまで読んでくださってありがとうございました。

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