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【KNOTS 2026】デザイナー・エンジニア・PMの境界が溶け出す、12のセッションまとめ

に公開

はじめに

はじめまして、株式会社アトラエのブルと申します。

2026年1月25日の今日、日本橋のサイボウズさんで開催された「KNOTS 2026┃デザイン・AI・エンジニアリング 境界を結び、共創をひらくカンファレンス」に参加してきました。

AIによって職能の境界が溶け出す今、僕ら作り手はどう動くべきか。
2つのトラックで並行して進む豪華なラインナップから、エンジニアの視点で「明日から何をレバレッジすべきか」を軸に選んだ、計12セッションの熱量をレポートします。

📅 当日のタイムライン(参加セッション一覧)

実際の一日のセッション一覧はこちらにあります。
https://knots.crossrel.jp/

私はその中から以下のセッションを聴講してきました。
そこで詳細を以下にまとめました。

時間 参加したセッション 登壇者
11:10 Figma MCPを活用したデザイン品質の自動管理 中江 亮 氏(DeNA / ニンテンドーシステムズ)
11:30 AI時代の製品開発:役割の再定義と実践 片芝 亮友 氏(Sansan)
12:00 アウトプットからアウトカムへの道筋 たかなこ 氏(ファインディ)
12:30 AIで加速する"作りながら整える"開発プロセス matsushima 氏(Gaudiy)
14:00 AI時代におけるインターフェースと身体性のゆえん 渡邊 恵太 教授(明治大学)
14:30 ドキュメントからはじめる未来のソフトウェア──PKSHAのプロダクト開発 藤岡 和真、清水 遥 氏(PKSHA)
15:10 デザイナーが主導権を握る、AI協業の本音と実践 佐藤 咲 氏(GMOペパボ)
15:30 「余白」と「欲望」を味方につける越境の作法 小山 直樹 氏(コンセント)
15:50 LLMプロダクト開発の「実態」:価値創造の原則 結城 浩太 氏(ログラス)
16:30 本番のコードをなるべくAIに書かせるには何が必要か 石川 洋資 氏(10X)
17:00 シリコンバレー発:AIがデザインプロセスを変える Brandon Hill 氏(btrax)
17:20 大企業インハウスデザイン組織におけるDesignOps改革 桑原 真一郎 氏(NTTドコモビジネス / KOEL)
17:40 結びながら、ひらく ― にじむ境界のデザイン 谷 拓樹 氏(Figma)

11:10〜 Figma MCPを活用したデザイン品質の自動管理

中江 亮 氏(DeNA / ニンテンドーシステムズ)

中江さんは、Figma MCPを活用した自動化の「現実解」についてお話しされていました。派手な生成機能よりも、実務で本当に「痛い」デザインチェックをどうAIに任せるかという、実務に即した内容でした。

特に共感したのは、フレームの構造によっては1つ読み込むだけで9万トークンも消費してしまうケースがあるという「コンテキストの限界」や、API経由で画像を取得する際のセキュリティリスクなど、実際に手を動かした人だからこそ分かる具体的な「壁」について語られていた点です。

最後は「面倒なことはAIに任せて、楽しいこと(0→1のデザインや、犬の散歩など)を人間がやりましょう」という言葉で、AIを「プロジェクトの記憶の守護者」にする未来を提示されていたのが印象的でした。

11:30〜 AI時代の製品開発:役割の再定義と実践

片芝 亮友 氏(Sansan)

Sansanの片芝さんは、生産性が劇的に向上した先に残る「PMの本質」についてお話しされていました。

仕様書の作成やデータの可視化といった作業は、AIの手を借りれば圧倒的なスピードでこなせるようになりますが、ユーザーが現場で漏らす「小さな苛立ち」や「わだかまり」といった定性的な情報は、AIには決して掴めないという話でした。

効率化で浮いた時間を使って自ら現場へ足を運び、事実を掴むこと。
そしてロジックを超えた「このサービスは必要だ」という強い執念(意志)を持って判断を下すことの重要性を説かれていたのが、非常に印象に残っています。

12:00〜 アウトプットからアウトカムへの道筋

たかなこ 氏(ファインディ)

「AIでアウトプット(作る量)は増えたが、それはアウトカム(事業成果)に繋がっているのか?」という、鋭い問いから始まったセッションです。
AI導入企業の約9割が効果を実感している一方で、実質的なアウトカムを生み出せている企業はわずか5%(BCG調査)というデータの乖離には衝撃を受けました。

原因は、各職能がそれぞれの「サイロ(専門領域)」の中でAIを使っているため、領域間の「隙間」にある摩擦が解消されていないから。たかなこさんは解決策として、AIを「職能の内部」ではなく「職能の交差点」で活用する事例を紹介されていました。

例えばKlarnaではマーケターがAIを使って自ら画像制作を行い検証サイクルを劇的に短縮し、Duolingoではエンジニアが教材コンテンツの生成プロセスを担うことで質と量を両立させています。

AIを「共通言語」としてお互いの専門領域に踏み込み、バトンパスをなくして「領域を溶かし合う」ことこそがアウトカムへの近道である、というお話は非常に説得力があり、明日からの動き方が見えてくるような内容でした。

12:30〜 AIで加速する"作りながら整える"開発プロセス

matsushima 氏(Gaudiy)

Gaudiyのmatsushimaさんは、AIで開発サイクルを逆転させるフロントエンドの新常識についてお話しされていました。

ラフ段階で「実機で動くもの」をAIで最速実装し、触りながら仕様を確定させる「フィードバック先行型」へのシフトです。

このイテレーションを支えるために、コンポーネント仕様をAIに伝える「デザインシステムMCP」を自前で実装されているのが、印象的でした。
実装工数を削り、余った時間をUX向上に投資するという、ポジティブな変化を語られていました。

14:00〜 AI時代におけるインターフェースと身体性のゆえん

渡邊 恵太 教授(明治大学)

『融けるデザイン』の著者でもある明治大学の渡邊先生からは、UIの本質を「自己帰属感」というキーワードで解き明かす、非常に思索的なお話がありました。
心地よさの正体は「自分の身体の一部」と感じられる(身体化)ことにある、という視点です。

UXにおいて『軽い』ということは、認知的負荷や想像、シミュレーションも含めた概念。それは、軽いのか?という問いをこれからは大切にしたい」という言葉が、指針として強く響きました。

これからのUXは、物質的な制約を超えて「想像世界」をデジタルで拡張すること、そのために徹底的にUXの「軽さ」を設計することが役割になるという提言でした。

14:30〜 ドキュメントからはじめる未来のソフトウェア──PKSHAのプロダクト開発

藤岡 和真、清水 遥 氏(PKSHA)

人とAIがシンクロするためのドキュメンテーション術(ADR/DDR)の重要性についてお話しされていました。
AIは「今のコード」は見えますが、そこに至るまでの「棄却された選択肢」や歴史的背景は知りません。

「なぜこのデザインにしたか」という意図(Context)を言語化して残すことが、AIが当時の決定軸に基づいた適切な提案を行うためのインフラになる、という視点が非常に新鮮でした。
ログを丁寧に残すことは、AIの推論精度を最大化するための強力なハックになるという気づきがありました。

15:10〜 デザイナーが主導権を握る、AI協業の本音と実践

佐藤 咲 氏(GMOペパボ)

GMOペパボの佐藤さんは、デザイナーがAIに仕事を奪われる恐怖をどう乗り越え、主導権を確保していったかという、リアルな葛藤と試行錯誤を共有されていました。AIにあえて自分の案の欠点を指摘させるなど、リスクの低い「素振り」を繰り返すことで、AIの特性を掴んでいくプロセスです。

AIの出力をそのまま出すのではなく、納得いくまで自分の手で直し、責任を持って「私が作りました」と言える状態にすること。AIを完成品ではなく「きっかけ」と捉えることにクリエイターの価値を見出す、という力強いメッセージでした。

15:30〜 「余白」と「欲望」を味方につける越境の作法

小山 直樹 氏(コンセント)

コンセントの小山さんは、AI時代に生き残るための生存戦略として、「自分の欲望をどう解放するか」という本質的なお話をされていました。
AIが正解を瞬時に出せる時代だからこそ、人間を突き動かす「欲望」こそが価値を生むという視点です。

効率化によって生まれた「余白」を、自分の「やりたい!」「これが見たい!」という強烈な「欲望特性」に従って注ぎ込む。それが職能の境界を自然と溶かしていくんだ、というお話でした。

自分自身の欲望を可視化し、それを活かせる環境を自ら整備することが、変化に強い組織を作る近道であると語られていたのが印象的でした。

15:50〜 LLMプロダクト開発の「実態」:価値創造の原則

結城 浩太 氏(ログラス)

ログラスの結城さんは、徹底したユーザー理解に基づくプロダクト論を展開されていました。
プロンプトを打たせるUIではなく、ユーザーが意識せずに価値を享受できる「勝手に価値が表示されている状態」こそがLLMネイティブである、という提言です。

結城さんは、AIが80点のドラフトを作り、人間が10点の確認をし、最終的な残りの10点の責任を人間が負うという「80/10/10モデル」の重要性を説き、「AIにお礼メールを書かせたら、それはもうホラー。人間がやるべき10点の責任を履き違えてはいけない」という言葉で、AIプロダクトが陥りがちな落とし穴と、僕らが最後まで守り抜くべき役割を明確に示していました。

16:30〜 本番のコードをなるべくAIに書かせるには何が必要か

石川 洋資 氏(10X)

10Xの石川さんからは、AIに本番コードを任せるための、納得感のある戦略が語られました。
AIに仕事を任せられるかどうかは、AIの性能よりも、僕らが作る「アーキテクチャ」にかかっているというお話です。

AIに任せることは実現方法を忘れることではない。むしろ人間が「責任を果たせる構造」を設計する力が問われている。アプリフロント、バックエンド、インフラ、さらにはデザインまで、あらゆる領域を越境して積み上げてきた石川さんだからこその視座の高さが印象的でした。

17:00〜 シリコンバレー発:AIがデザインプロセスを変える

Brandon Hill 氏(btrax)

サンフランシスコの最新事情と、現場で実践されているデザインワークフローのお話でした。
実際のプロジェクトで、アニメのコンセプト制作リードタイムを「40日から15日」に短縮するなど、すでに実際のプロジェクトで目に見える成果を出されているのが刺激的でした。

Perplexityでのリサーチや、Manusを使ったインタビュー分析の自動化など、用途に合わせてツールを徹底的に使い分けている点が印象的でした。「Garbage in, garbage out」という言葉の通り、AIを使いこなすためのインプットの質が、そのまま作り手の価値になるという力強いお話でした。

17:20〜 大企業インハウスデザイン組織におけるDesignOps改革

桑原 真一郎 氏(NTTドコモビジネス / KOEL)

大企業のインハウス組織で、いかにAIプロセスへの変革を仕掛けるかという「DesignOps」の実践録でした。
11名から始まり、今では38名まで拡大した有志の勉強会コミュニティの力で、組織文化そのものをアップデートしていくプロセスが語られました。

大企業という高いハードルを、コミュニティの熱量でじわじわと突破していく試行錯誤は、僕自身の今後の活動にとっても非常に参考になる、背中を押されるようなお話でした。

17:40〜 結びながら、ひらく ― にじむ境界のデザイン

谷 拓樹 氏(Figma)

最後を締めくくったのは、Figmaの谷さんでした。
谷さんは職能の境界を飛び越える「越境」ではなく、お互いの強みがじわじわと重なり合う「にじむ」という表現を使われていたのが印象的でした。

「Code is a Material(コードは素材である)」という考えのもと、デザイナーも素材を理解してクラフトにこだわることで、AIが生み出す「平均的なアウトプット」との差別化ができる。職能の境界がにじむ中で、自分たちの「色(強み)」をどう磨き上げ、コミュニティで新しい可能性を開いていくか。

カンファレンスの締めくくりに相応しい、前向きな気持ちになれるセッションでした。

まとめ

今回のKNOTS 2026を通じて感じたのは、AIによって職能の境界が溶け出す今、大切になるのは「何を作るか(How)」以上に、「なぜそれを作るのか(Why)」という作り手の意志なのだということでした。

Figma MCPもADRも、各社で実践されているエージェントワークフローも。それらは単なる効率化の手段ではなく、AIという強力な実行力を自分たちの「意志」と同期させるための、新しい共創の作法なのだと感じました。

効率化によって生まれた「余白」を、誰かの小さな苛立ちを解決するためや、触れた瞬間の「心地よさ」を磨き上げるために使っていく。
デザインとエンジニアリングがにじみ合うこの領域で、プロダクトエンジニアとしてどう「執着」し、価値を編み出していけるか。

明日からの開発に向けて、非常に前向きな刺激をいただいた一日でした。
KNOTS2026の運営の皆様や懇親会で話してくださった方々ありがとうございました!
また次回の開催も期待しています!!

いけなかったセッションのスライド

全員が「作り手」になる。職能の壁を溶かすプロトタイプ開発。

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