生成AI時代における新人教育について考えたこと
従来通りのことをやっていては教育にならない時代
2025年を迎え、世は生成AI時代となり様々なツールが出ています。それに比べて、開発現場の教育環境はそれに見合ったアップデートがされていないような気がします。今や「TODOアプリを作って動かしてみよう」のようなお題では、生成AIを使えばすぐにできてしまいます。従来通りのことをやっていては、通用しない時代と言えるでしょう。では、どうすれば良いのか、実際にやってみたことを含めて共有したいと思います。
複雑なアプリを作ってもらう
簡単なアプリを作ってもらっても教育にならないのであれば、ある程度複雑なアプリを作ってもらうほうが良いです。まず簡単なアプリを作ってもらい、機能追加を小刻みにするパターンです。生成AIに頼り切ってアプリを作った場合、初めは作るのが早いですが、機能追加はかなり遅くなるはずです。実際の仕事でも機能追加のほうが多いため、ある程度の経験が積めるはずです。
振るタスクの粒度に気をつける
「新人に振るタスクは細かければ細かいほどよい」と思っていたのですが、生成AI時代ではそれも考えものです。なぜなら、細かいタスクは簡単になるように設定しているからです。簡単すぎては成長につながりません。限度はありますが、時々大きめのタスクを投げるのも必要なことだと思うようになりました。
生成AIにどう尋ねればよいかを教える
新人が生成AIに尋ねる際によくある例として、エラーをそのまま投げたり、「なぜ」エラーが出たのかを尋ねたりするのが挙げられます。しかし、それでは問題解決につながらないケースが頻繁にあります(o1のような賢いツールであれば別ですが)。
エラーが出たら、まずは「どこ」(場所)に原因があるのかあたりをつける必要があります。経験のないうちはとくにこの「どこ?」が間違えている場合が多いです。Web開発であれば、フロントエンド・バックエンド・DBのうち、どこが原因なのか自信を持って答えられないのなら、「どうやったらエラーが起こった場所を特定できるのか」について、生成AIに尋ねてみましょう。
ゴールを徐々に明確にする
「結局どうなってもらいたいのか」を伝えるのは大切なことです。「現場で使えるような人材になってほしい」では、抽象的すぎるかもしれません。たとえば、自走力を持っている人を目指すのも良いゴールだと思います。ゴールははじめは曖昧でも良いのですが、徐々に具体的にしていきたいです。
シングルタスクを心がける
生成AI時代に突入し、エンジニアに求められるものが高度化しているように感じています。また、業界全体の変化が大きく、心が疲弊しやすい状態にあります。このような状態でマルチタスクを行うとタスクを切り替えるためのコストがたびたび発生して、さらに精神に負担をかけます。なるべく1個1個の仕事を着実に終わらせるようにしましょう。
たとえば、付箋のようなアプリ(Macならスティッキーズが標準で入っています)で、今やっていることを常に表示しておくのがオススメです。スティッキーズなら、「ウインドウ」>「常に手前に表示」と選択することで、常に表示することが可能です。同時に、シングルタスクにしたい場合、基本的には降ってきたタスクを保存して寝かしておく必要があります。こちらも付箋アプリなどで下記のようにまとめておいたほうが良いでしょう。
生成AIも資源の1つにすぎない
生成AIは自由度が高く、また賢いですが、仕事を進める上では資源の1つにすぎません。便利は便利なのですが、だからといってそれで完結できるものではないです。実際の仕事では、下記のような資源を使うことも大切なことです。その場に応じて、適切なものを使うようにしたいですね。
- 公式ドキュメントを読む
- 社内のドキュメントを読む
- Google検索
- GitHub Code Searchで該当技術を使っているリポジトリを調べる
- 会社の人に聞く
- 技術者コミュニティに入る
忠告するのも褒めるのも、ほどほどに
生成AI以前から気をつけていることですが、忠告や褒めることは、その人に合わせてちょうど良いぐらいにしようと考えています。褒めすぎてはこちらの真意が伝わりづらくなり、忠告しすぎては成長する機会がなくなります。逆に、褒めないと今の仕事のやり方が正解なのかわからなくなり、忠告しないと誤った道を進みやすくなります。
自戒を込め、海軍大将だった山本五十六の言葉を引用してこの記事を締めます。ではでは。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」
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