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Claude Codeの生みの親 Boris Cherny が語る、AIコーディングの未来

に公開

AnthropicのCLIツール Claude Code が止まらない勢いで伸びています。公開GitHubコミットの4%を占め、DAUはこの1ヶ月で倍増しました。筆者もここ数ヶ月ほぼ毎日触っていますが、アップデートのたび別物になっていく感覚があります。

そんな Claude Code を作ったのが Boris Cherny氏です。複数のポッドキャストやインタビューで語られた開発の裏側が面白かったので、ここにまとめておきます。

Boris Cherny氏について

Cherny氏はAnthropicのStaff Engineerで、Claude Codeのプロダクトリーダーです。Anthropicに来る前はMetaで約10年間エンジニアとして働いていました。Facebook GroupsやInstagramの大規模プロジェクトを率いてIC8、いわゆるPrincipal Engineerまで昇進しています。TypeScriptの書籍を書いたり、OSSへ貢献していたりと、もともと手を動かすタイプのエンジニアですね。

そんな人がAnthropicに移って、ターミナル上でClaudeと対話するだけのシンプルなプロトタイプを作った。それがClaude Codeの始まりでした。

CLIになったのは偶然だった

Claude Codeがターミナルベースのツールになったのは、実は狙ったわけではないんです。一番早くプロトタイプを動かせる方法がそれだった、というだけの話でした。Cherny氏はAnthropicのAPIを叩いて、ターミナル上のClaudeにbashを使わせてコードを書かせる実験を始めました。GUIなんか作っている暇はなかった。でも結果として、開発者にとっては自然なインターフェースになったのです。

Cherny氏はこのやり方を「Unixユーティリティ」に例えています。grepcatをパイプで繋ぐように、Claude Codeも他のツールと組み合わせて使う。このシンプルさがパワーユーザーに刺さりました。

面白いエピソードがあります。Cherny氏がClaudeに「今なんの音楽聴いてる」と聞いたところ、モデルが勝手にApple Scriptを書いてMacのミュージックプレイヤーにアクセスし、再生中の曲名を返してきた。モデルはツールを使いたがっている。そう確信した瞬間だったそうです。

6ヶ月後のモデルのために作る

Cherny氏がインタビューで何度も繰り返しているのが、今日のモデルではなく6ヶ月後のモデルのためにプロダクトを作るという話です。

LLMの進化はとにかく速い。今のモデルの弱点を補うためツール側で足場を組みすぎると、次のモデルが出た瞬間すべて無駄になります。scaffoldingのやりすぎは禁物なんです。

実際にCherny氏は、Sonnet 4.5のリリース時にシステムプロンプトから約2,000トークンをごっそり削除したと言っています。モデルが賢くなって、以前は必要だった細かい指示がいらなくなったから。

モデルの性能を10〜20%上げるために複雑なコードを書くより、次のモデルでその問題が自然に解決されるのを待つ方が賢い場合がある

Claude Codeのコードベースは常に書き換えられていて、6ヶ月以上前から残っているコードはほとんどないそうです。

ユーザーが既にやっていることを機能にする

プロダクトを考えるとき、Cherny氏が一番大事にしているのが Latent Demand、つまり潜在的需要です。ユーザーがすでにやろうとしていることを、もっと簡単にできるようにする。

Plan Mode

GitHubやSlackのフィードバックを見ていて、「コードを書く前にまず計画を立ててほしい」というユーザーの声に気づいた。それを週末の夜に30分で実装して出した。このスピード感がClaude Codeの開発チームらしいところです。

Claude.md

プロジェクトごとの指示ファイル Claude.md も、ユーザーが勝手にMarkdownファイルを作ってモデルに読み込ませていたのを見て生まれました。Cherny氏いわく「ファイルに色々書いておけば自動的にコンテキストに入る。それだけ」と。

bashモード

これはCherny氏自身がターミナルを行き来するのが面倒で作った機能です。Claudeにアイデアを聞いて、そのまま実装した。ユーザーにも好評だったので正式機能になりました。!を打つだけでbashコマンドを直接実行できるショートカットです。

とにかくシンプルにやる

Claude Codeの開発チームが一貫して守っているのは Do the simple thing first という方針です。

コンテキスト管理

会話が長くなってコンテキストが膨れ上がったとき、複雑なアーキテクチャは組まない。Claudeに前のメッセージを要約させて返す。やっていることはそれだけです。

検索

RAGは使わず、エージェント型の検索を採用しています。社内で比較したら、エージェント検索の方が圧倒的に良い結果を出したからです。インデックス構築の手間やセキュリティリスクがなくなる利点もあります。

ツール設計

ツールはできるだけ少なくして、モデルにとってシンプルに保ちたい

専用のラッパーを作り込むより、bashを渡してモデルに自由に使わせた方がうまくいく。この発見がClaude Codeの設計を決定づけました。

社内での生産性はどれだけ変わったか

Anthropic内部の数字も驚きです。

Claude Codeの導入後、エンジニア1人あたりの生産性が約70%上がりました。会社の規模が3倍に膨らんでいるにもかかわらず、です。Claude Codeのコードベース自体も、80〜90%がClaude Codeによって書かれています。一部のチームではコードの90%以上がAI生成。IDEをアンインストールして、自分では一行もコードを書かないエンジニアまで出てきました。

コストはアクティブユーザー1人あたり約6ドル/日です。月額20ドル前後のサブスク型ツールと比べると高く見えますが、エンジニアの給与を考えれば50〜70%の生産性向上で十分にペイします。Cherny氏はこれをROIの問題だと言い切っています。

ただし、AIが書いたコードだからといってレビューの基準を下げることはない。

コードの質が低ければマージしない。人間が書いたコードとまったく同じ基準を適用している

コーディングは解決済みの問題になる

2026年2月、Y CombinatorのLightconeポッドキャストでCherny氏はかなり踏み込んだ発言をしています。

今日、コーディングは実質的に私にとって解決されている。そしてこれは、ドメインを問わずすべての人にとって成立するようになるだろう

ソフトウェアエンジニアという肩書が消え始めるだろう。ビルダーかプロダクトマネージャーに変わるか、痕跡的に残るだけになるだろう

AIがコーディングを片付けるようになると、人間の仕事は仕様策定やユーザーとの対話、システム全体の設計へとシフトしていきます。プロダクトマネージャーやデザイナー、財務の人までコードに触れる時代がやってくるという見立てです。

ローンチ前夜の話

個人的にぐっときたエピソードがあります。Claude Codeのローンチ前夜、Cherny氏はClaude Codeに「Markdownパーサーをゼロから書いて」と頼んだそうです。1〜2回のプロンプトで、ターミナル上にきれいに整形されたMarkdownを表示するパーサーが出来上がった。これがそのまま本番コードとして出荷され、複数の既存ライブラリを置き換えてしまいました。

エンジニアへのアドバイス

Cherny氏がこれからのエンジニアに伝えたいのは、特定のツールや過去のベストプラクティスにしがみつかないことです。

第一原理から考え、科学的に思考し、自らの間違いを認められる謙虚さが大切だ

モデルが進化するたびに、昨日の常識が書き換わる。だから Beginner mindset、つまり初心者の気持ちで取り組むことが大事なんだと。

具体的には、Claudeで定型作業を自動化する方法を覚えること、そして複数のClaudeを同時に回すことを挙げています。あるエンジニアはDocker上で20個のClaude Codeインスタンスを並列に走らせて、週末だけでプラグイン群を構築したそうです。

おわりに

Claude Codeの背景にあるのは、シンプルに作ること、未来のモデルに賭けること、そしてユーザーが既にやっていることを拾うという一貫した考え方です。

インタビューを通して見えてくるのは、AIコーディングツールの設計哲学だけではありません。エンジニアという仕事そのものが、コードを書くことから何を作るかを考えることへと変わりつつある。その流れは、もう始まっています。

参考リンク

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