文化祭で来場者向けの公衆無線LANを提供してみた
こちらは、一関高専 Advent Calendar 24日目の記事になります!
はじめに
本記事では、2025年10月25〜26日に開催された一関高専祭で来場者向けに提供した、フリー Wi-Fi サービスに関するプロジェクトについてまとめています。活動は7月頃から始まり、8〜9月の夏季休暇を経て、10月の本構築を行いました。
このプロジェクトでは、本科5年生の6人がリーダー陣となり、1〜4年生の約20数名のメンバーとともに構築から運用までを行っています。
構成
今回のネットワークの物理構成は、図1のようになっていました。コアルータには VyOS を使用し、13台のスイッチや20台のアクセスポイントを管理するために キキNavi を活用しました。

図1: ネットワークの物理構成図
インターネット接続の安定性を確保するため、4系統の出口回線を用意しました。NTT東日本株式会社様よりご提供いただいたフレッツ光の2回線に加え、学校の既存契約回線、SpaceX社の Starlink を活用し、多数の接続にも耐えうる構成としました。
また、黄色い線の部分は建物と建物をつなぐ光ファイバーとなっており、一般家庭では利用しない機材の利用なども行いました。ループ構成となっているため、ファイバーが切断された場合でも自動で回線が切り替わり、学校側の設備を通してサービスが続けられる設計としました。さらに、一部エリアでは Wi-Fi 6E規格による電波発射を行っており、6GHz帯を利用した通信を行えるようにしました。
各班の活動
本プロジェクトでは、バックボーン班・アクセス班・アクセスポイント班の3班にグループを分け、基本的に各グループのリーダーから作業の指示を行う形をとりました。各グループの活動については、次の通りです。
- バックボーン班: ルーターやスイッチングハブの設定を行い、インターネットへの入り口部分を担当しました。
- アクセス班: 物理ケーブルの敷設を担当しており、本プロジェクトではLANケーブルだけでなく光ファイバーを利用した通信も行いました。
- アクセスポイント班: Wi-Fi の SSID やパスワードの設定を行った上で、アクセスポイントの位置選定・設置を行いました。
7〜9月
7月に第1回の全体ミーティングを行いました。ここでは、事前の配属希望調査を基にグループ配属を決定し、各グループで顔合わせを行いました。また、今後の活動の予定についても共有しました。8月初めには、バッファロー株式会社様によるアクセスポイント講習会を開催し、企業向け機器の扱い方について学びました。
リーダー陣は、夏休み中も学校へ登校し、計画している経路全てのケーブル長を計測する作業などを行いました。また、バックボーン班とアクセスポイント班は、リーダー自身が講師となり、班のメンバーに対して講座を開く活動を夏休み中に行いました。
バックボーン班
同一セグメント間の通信、ルーターを介した通信をはじめ、セキュリティを向上させるために使用した、VLAN やファイアウォールの設定方法などのオンライン講習を行いました。その後、その講習をもとに、各自で分担箇所のコンフィグ作成を行いました。
アクセスポイント班
基本的なネットワークの知識について復習し、TCP/IPプロトコルや無線LANの規格・周波数帯について講義しました。また、VLAN についても説明し、実際に使用する機器の設定画面を紹介して今後の活動のイメージを掴んでもらいました。
10月~本番前
夏休み明けに第2回の全体ミーティングを行い、本番までの動き方について各班で確認する機会を設けました。これ以降は、原則各班での活動となりました。
バックボーン班
夏休み中に分担して作成したコンフィグレーションファイルの結合を行い、検証環境に設定の流し込みを行うことで動作を確認し、工事日の当日にすぐに開通できるよう準備を行いました。
アクセス班
10月前半に計測したケーブルの長さをもとに、ケーブルの作成を行いました。さらに貼り付け方法などの検証を行なった後、順次ケーブルの敷設を行いました。
アクセスポイント班
アクセスポイントの設定会を複数回にわたって開き、全員で協力しながら、全ての機器に設定を投入しました。接続性をより良くするため、Wi-Fi ローミング設定の検証はリーダー陣で行いました。
文化祭当日
1日目の朝は、分散ルーティングに不具合が生じて、一時的にインターネット接続が困難となりました。ですが、一般来場開始時刻の 9:00 までに問題を解消し、以降は大きな障害がなく安定した運用を継続できました。このときの Wi-Fi の速度は、5GHz帯で約100Mbpsほど出ていました。
しかし、1日目の終わり頃、体育館に設置しているスイッチが異常切断されたとキキNaviから通知がありました。実際に確認してみると、機器のSPEEDランプが橙色に点灯していました。これは、リンク速度が100Mbpsまでしか上がっていないことを示していました。翌日の朝にケーブルを作り直して、1Gbpsでリンクアップしたことを確認することができました。
2日目は小雨が降っていましたが、特にケーブルの切断などが起きることなく運用できました。この日の正午ごろに6GHz帯の速度を測ったところ、約500Mbpsほど出ていました。
今回は、NOCツアーも実施しており、来場した方にどのようにネットワークが構築されているのかを実際に見て回れるようにしました。NOCツアーは主に4, 5年生で担当し、1時間ごとに行いました。
接続台数
1日目は 290 台、2日目は 315 台のデバイスが接続していました。MACアドレスから判断したユニークデバイスは、454 台となりました。
(※ DHCPリース情報から判断をしています。1人が複数のデバイスで接続した場合もその台数分をカウントしています。)
フィードバック
ここからは、各班のリーダやメンバーから得られたフィードバックをまとめています。
バックボーン班
今回の講座で使用した動画や資料の内容は非常に充実していたため、これらを更にブラッシュアップして継続させていくべきだと思いました。一方で、コンフィグはローリングリリースで日々更新されていくため、適切なバージョン管理が必要だったと考えられます。また、 自身が作成したコンフィグの動作確認では、他のメンバーが作成したコンフィグが必要で、自分以外のコンフィグができていることが前提となっていました。そのため、担当の範囲を調整したり、適切なテスト環境を構築したりするなどの工夫が必要でした。さらに、Windows環境では、セキュリティの問題で VirtualBox 等のネスト機能が動かないことがあったため、どの環境下でも使えるように GNS3 サーバーを立てるなどの対策が必要になると思います。
バックボーン班では、活動内容の難易度を鑑みて、リーダー陣の5年生と4年生のメンバーしか入れていませんでした。知識や技術を受け継いでいくためにも、もっと他の学年も参加できるような活動内容にするなど、メンバーの集め方について検討していく必要があると感じました。
アクセス班
LANケーブルの配置については、十分に検討を重ねる必要があると感じました。具体的な項目は、以下の通りです。
- 窓や扉、防火扉を跨ぐ場合: 学校のセキュリティ上、夜も開放することはできないがケーブルはどうするのか、緊急時は防火扉をどのように閉められるのか、それぞれ対策を講じる必要
- 壁や天井に貼り付ける場合: 剥がれることもあるため、定期的な見回りと修正が必要
一方で、LANケーブルを起因とする問題がいくつか発生しました。70~20mほどの長距離のケーブルでは特に問題はなかったのですが、10m以下のケーブルにおいて、若干ですが 、正常に通信できないことがありました。これは、短い距離のケーブルにおける品質の基準が甘かったために起きてしまいました。一部のケーブルは、端子の部分まで中のワイヤーが届いていなかったり、テスターの電池が少なくなって正確に検査ができていなかったりしていました。ケーブルの品質を高く保つためには、その基準をリーダーが定め、メンバーに対して徹底させる必要があったと思います。また、テスターを使わず、PCなどに接続して適切な速度に上がるかを検証しても良かったかもしれません。
アクセスポイント班
講習会の日程を決める際、調整さんを使用することで、メンバーの都合に合わせて活動を実施することができました。 しかし、スイッチやアクセスポイントの設定は、メンバー全員で分担して行うことができませんでした。当日の1週間ほど前に約20台の機材が届いたため、時間的に余裕がなく、数台の機器の設定のみを担当してもらいました。当日までの計画を立てる際には、機材がどの時期に届くかを考慮して、機材に設定を入れたり設定の修正を行ったりする日程を調整するべきでした。
まとめ
今回のプロジェクトを通じて、各班のリーダーはメンバーの統率や学校側との調整など、多くの課題に直面しながらも、それらを乗り越える力を身につけることができました。参加したメンバーからは、
- 公式ドキュメントを読みながらコンフィグを書くことができた
- LAN ケーブルの作り方を覚えることができた
- APの設定方法を習得できた
など、論理的な知識から物理的な技術まで幅広い学びがあったと思います。その一方で、「まだ余力があったため、もっとタスクを振ってほしい」や「事前の勉強をもっと増やしてほしい」とった声もあり、より学びのある活動に改善できそうな余地も見られました。最終ミーティングでは JANOG Meeting の NOC や Interop の紹介なども行い、今後様々なフィールドで活躍してくれることを期待しています。
謝辞
NTT東日本株式会社様からは、インターネット回線をご提供いただき、安定した通信を実現することができました。また、バッファロー株式会社様からは、スイッチやアクセスポイントといったネットワーク構築に不可欠な機材をご提供いただき、屋外向けAPの性能を実感する貴重な機会となりました。
今回のプロジェクトにご協力いただいた、リーダーをはじめとするメンバー、学生・教職員の皆様に深く感謝申し上げます。
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