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トークンに全てを背負わせない:Web3プロダクトに必要な設計

※本記事は個人のリサーチと考察であり、所属企業や特定プロジェクトの公式見解ではありません

はじめに

Web3はよく、次のように説明されます。

世代 できること
Web1 読む
Web2 読む + 書く
Web3 読む + 書く + 所有する

この整理はとても分かりやすいです。

Web1では、ユーザーはインターネット上の情報を読むだけでした。
Web2では、SNSやYouTubeのように、ユーザーが投稿し、発信し、コミュニティを作れるようになりました。
そしてWeb3では、トークンやNFTによって、インターネット上でユーザーがデジタル資産を「所有」できるようになった。

この「所有」は、Web3の大きな発明です。
しかし最近、いくつかのWeb3プロダクトを使いながら考えていることがあります。

それは、所有できるだけでは、ユーザーは長く残らないということです。

むしろ多くのプロダクトトークンは、上場した瞬間に「いつ売るか」のゲームになってしまう。
ユーザーはプロダクトの未来に参加しているというより、エアドロップやTGE後の売却機会を待っているだけになりやすいです。

この記事では、Web3におけるプロダクトトークンの限界と、その解決策の1つとして、SBT(Soulbound Token)や株式との役割分担について考えてみます。

なお、本記事は特定プロジェクトへの投資判断や法的助言ではありません。直近で自分が使っているWeb3プロダクトの状況を見ながら考えた、まだ実績のない仮説です。


Web3の「所有」はなぜ難しいのか

Web3の思想において、トークンはとても魅力的です。

トークンを持つことで、ユーザーは単なる利用者ではなく、プロダクトの参加者になれる。
初期から応援した人が報われる。
プロダクトの成長とユーザーの利益が一致する。

この思想自体は、今でも強いと思っています。

しかし現実には、多くのプロダクトトークンが次のような課題を抱えています。

課題 内容
投機化 トークンがプロダクト利用権ではなく、値上がり期待の対象になる
売り圧 エアドロップやTGE後に、初期ユーザーが一斉に売却する
ユーティリティ不足 手数料割引や限定キャンペーンだけでは、長期保有理由として弱い
ガバナンス疲れ 投票権があっても、多くのユーザーは投票しない
Whale支配 トークン保有量が多い人の影響力が強くなりすぎる
証券化リスク 配当、収益分配、利回り保証に近づくほど規制リスクが高まる
株主とのズレ 会社の株主利益とトークンホルダー利益が必ずしも一致しない

ここで特に難しいのは、本当に強い経済的インセンティブを作ろうとすると、証券に近づいてしまうことです。

たとえば、トークン保有者に対して、会社の売上や利益を分配する。
保有量に応じて利回りを出す。
買い戻しによって価格上昇を期待させる。

これらはユーザーにとって分かりやすい魅力があります。
しかし、規制上はかなり慎重に設計する必要があります。

一方で、証券化を避けようとして、単なる手数料割引やキャンペーン参加権だけにすると、今度は「それならWeb2のポイントプログラムでよくないか?」という問題が出てきます。

つまり、Web3のプロダクトトークンには、次のジレンマがあります。

強い経済的インセンティブを与えると証券に近づく。
証券化を避けると、保有する理由が弱くなる。

このジレンマが、現在のWeb3トークン設計の大きな限界だと感じています。


CLARITY法案以降の整理:暗号資産は「何の権利か」で見られる

米国では、Digital Asset Market Clarity Act of 2025、いわゆるCLARITY法案が議論されています。H.R. 3633として提出された同法案は、デジタルコモディティの募集・販売について、SECとCFTCによる規制枠組みを整えることを目的としています。

CLARITY法案は2025年7月17日に米国下院を通過しましたが、上院での審議や他の法案との調整もあり、成立への道筋はなお不確実とされています。

また、2026年3月17日にはSECとCFTCが、暗号資産に対する連邦securities法の適用について共同の解釈を示しました。この解釈では、暗号資産を主に次の5つに分類しています。

種類 概要 典型例 証券性の考え方 記事での使いどころ
Digital Commodities 機能しているブロックチェーンや暗号ネットワークに内在的に結びつき、そのネットワークの利用・維持・手数料支払い・ステーキング・ガバナンス等に使われる暗号資産。価値は主にネットワークのプログラム上の機能、需給、ネットワーク効果から生まれる。 BTC、ETH、SOL、XRP、ADA、AVAXなど それ自体は証券ではないと整理される。ただし、発行・販売時に「運営の努力による利益期待」を強く訴求すると、販売スキームが投資契約とみなされる可能性がある。 L1/L2やプロトコル系トークンを説明する際に使いやすい分類。「ネットワークそのものを動かすための資産」として整理できる。
Digital Collectibles 収集・鑑賞・表現・文化的価値・コミュニティ参加などを目的とする暗号資産。アート、音楽、動画、トレーディングカード、ゲームアイテム、ミーム、バッジ、スキン、NFTなどが含まれる。 NFTアート、ゲーム内アイテム、ミームコイン、ファン系トークン、バッジなど それ自体は証券ではないと整理される。ただし、分割所有、収益分配、運営努力による値上がり期待を前面に出すと、投資契約として扱われる可能性がある。 「羨ましい」「持っていたい」「コミュニティ内で見せたい」という非金融的価値を説明する際に使える。
Digital Tools 会員権、チケット、資格証明、権利証、IDバッジなど、実用的な機能を果たす暗号資産。多くの場合、特定サービスやネットワーク内で利用され、譲渡不能またはSBT的に設計されることがある。 ENSドメイン、イベントチケットNFT、会員証NFT、資格証明SBT、アクセスパス、KYC済みバッジなど 実用機能に基づくもので、受動的利回りや企業収益への請求権を持たない場合、それ自体は証券ではないと整理される。価値は利益期待ではなく、利用機能から生まれる。 SBTを提言する本記事の中心概念。プロダクトトークンに集中しすぎた価値を、信用・履歴・ステータス・アクセス権に分散する説明に使える。
Stablecoins 米ドルなど特定の参照資産に対して安定した価値を維持するよう設計された暗号資産。主な用途は決済、送金、清算、価値保存。 USDC、USDT、PYUSD、法定通貨担保型ステーブルコインなど 一定の要件を満たすpayment stablecoinは証券ではないと整理される。一方で、利回り、収益分配、投資性を持たせたステーブルコインは、事実関係次第で証券性が問題になる。 Web3プロダクトの実需を支える決済・送金インフラとして説明できる。トークン価格の投機ではなく、利用価値を支える土台として位置づけやすい。
Digital Securities 株式、債券、投資契約、収益分配権など、証券としての経済的性質を持つ金融商品をオンチェーン上で表現したもの。いわゆるトークン化証券。 トークン化株式、トークン化債券、ファンド持分、収益分配トークン、利益請求権付きトークンなど 証券は、オンチェーンかオフチェーンかに関係なく証券。非金融的な特典が付いていても、経済的性質が証券であれば証券として扱われる。 「経済的リターンはトークンではなく株式・証券の領域に寄せるべき」という役割分担の説明に使える。

ここで一つ、SECの解釈で示されている重要な但し書きがあります。これらの分類はあくまで資産そのものの性質を示すものであり、**発行や販売の方法を保証するものではありません。**たとえDigital Commodities、Collectibles、Toolsに分類される暗号資産であっても、運営努力による利益期待や共同事業(common enterprise)への投資として販売・宣伝された場合は、investment contract(投資契約)として証券に該当する可能性があります。分類はセーフハーバーではなく、トークンの性質と同じくらい、その提供や宣伝の方法も問われるということです。

重要なのは、暗号資産が何と呼ばれているかではなく、どのような権利や期待を持たせているかです。特に、受動的な利回り、将来利益への請求権、運営の努力による価格上昇期待を前面に出すほど、プロダクトトークンはDigital ToolsではなくDigital Securitiesに近づいていきます。Digital Toolsの領域にSBTを位置づけることで、プロダクトトークンにすべての価値を集中させず、信用・履歴・ステータス・アクセス権を分担させる余地が生まれます。

参考: SEC/CFTCの2026年3月の共同解釈では、暗号資産をこの5分類で整理し、Digital Commodities / Digital Collectibles / Digital Toolsはそれ自体は証券ではない一方、Stablecoinsは性質次第、Digital Securitiesは証券として扱われると説明されています。
https://www.federalregister.gov/documents/2026/03/23/2026-05635/application-of-the-federal-securities-laws-to-certain-types-of-crypto-assets-and-certain

この流れを見ると、Web3プロジェクトが今後トークンを設計する際には、より明確に次の問いに答える必要があります。

このトークンは、何の権利なのか?
利益への請求権なのか?
ネットワーク利用権なのか?
会員権なのか?
ステータスなのか?
ガバナンス権なのか?
それとも単なる投機対象なのか?

この問いに答えないままトークンを発行すると、ユーザーにも規制当局にも誤解を生みます。


価値は経済合理性だけではない

ただし、ここで1つ重要な視点があります。

ユーザーが何かを持ち続ける理由は、経済合理性だけではありません。

人は、必ずしも利回りがあるから持つわけではない。
売ればお金になるから持つわけでもない。

むしろ、次のような理由で何かを持ち続けることがあります。

  • それを持っていることが誇らしい
  • 他人から羨ましがられる
  • 自分の履歴や努力の証明になる
  • そのコミュニティに所属している感覚がある
  • 売ると自分のアイデンティティの一部を失う
  • お金では買えないから価値がある

これは、現実世界ではよくあります。

航空会社の上級会員ステータス。
ブラックカード。
大学の卒業証明。
ゲーム内の実績バッジ。
長年使っているサービスの古参称号。
特定コミュニティの初期メンバー権。

これらは、単純な金融商品ではありません。
しかし、人にとって大きな価値を持ちます。

Web3のトークン設計でも、この「経済合理性ではない価値」をもっと真剣に扱うべきだと思います。


トークンに全てを背負わせるべきではない

現在のWeb3プロジェクトでは、トークンに多くの役割を背負わせすぎていると感じます。

トークンに、資金調達、ガバナンス、ユーザー報酬、コミュニティ形成、ステータス、アクセス権、インセンティブ、投資対象としての期待をすべて詰め込もうとする。

しかし、これは無理があります。

なぜなら、それぞれの役割には異なる性質があるからです。

役割 本来向いている器
経済的リターン 株式、証券、契約
流動性ある参加権 プロダクトトークン
利用履歴・信用・ステータス SBT
会社の残余利益 株式
コミュニティ内の尊敬 SBT、バッジ、称号

つまり、Web3プロジェクトは、すべてを1つのトークンに詰め込むのではなく、複数の権利を役割分担すべきです。

その中で、特に重要になるのがSBTです。


SBTとは何か

SBT、Soulbound Tokenは、簡単に言えば譲渡できないトークンです。

Vitalik Buterin、Puja Ohlhaver、E. Glen Weylによる「Decentralized Society: Finding Web3's Soul」では、SBTはコミットメント、資格、所属などを表す非譲渡型トークンとして説明されています。論文では、現在のWeb3が譲渡可能で金融化された資産に偏っている一方、現実の経済活動には、信用、評判、個人ブランドのような非譲渡的関係が重要だと指摘されています。

EthereumのERC-4973では、Account-bound Token、つまり特定アカウントに紐づいた非譲渡NFTの標準APIが提案されています。ERC-4973は、ABTが通常の転送インターフェースを実装しないこと、発行・割当・取り消し・追跡のための基本機能を定義することを説明しています。

SBTのポイントは、売れないことです。

売れないからこそ、価格がつきにくい。
価格がつきにくいからこそ、純粋なステータスや信用として機能しやすい。
他人から買えないからこそ、本人の履歴や努力の証明になる。

これは、プロダクトトークンの弱点を補完できます。


プロダクトトークンとSBTの違い

プロダクトトークンとSBTは、同じ「トークン」でも役割がまったく違います。

項目 プロダクトトークン SBT
譲渡 できる 原則できない
市場価格 つきやすい つきにくい
主な価値 流動性、アクセス、参加権 信用、履歴、ステータス
リスク 投機化、売り圧、Whale支配 プライバシー、固定化、差別
向いている用途 手数料優遇、参加権、ガバナンス、ステーク 実績、称号、信用、貢献履歴
ユーザー心理 売るか持つか 育てる、見せる、守る

この違いを踏まえると、Web3プロダクトは次のように設計するのがよいと思います。

トークンは「ネットワークへの参加権」
SBTは「その人が積み上げた信用とステータス」
株式は「会社の経済的リターン」

この3つを分けることで、トークンに無理な役割を背負わせずに済みます。


役割分担の設計案

私が現時点で考える設計案は、次の3つの役割分担です。

レイヤー 担当する価値 できること できないこと
株式 会社の経済的価値 配当、残余利益、会社支配権、投資家リターン 一般ユーザーのステータス形成
プロダクトトークン ネットワーク参加と利用権 手数料優遇、アクセス権、ステーク、コミュニティ投票 利益分配、株式的リターンの保証
SBT 信用・履歴・ステータス 利用実績、古参証明、貢献証明、称号、優先権 売買、投機、換金

この整理で重要なのは、経済的リターンを株式に寄せることです。

会社の利益に対する請求権や、経営への強い支配権、投資家としてのリターンは、本来は株式や証券の領域です。
そこを無理にユーティリティトークンで実現しようとすると、規制上も設計上も不安定になります。

一方で、プロダクトトークンは、プロダクトを使う上で便利になる権利に寄せる。
SBTは、売買できない信用やステータスに寄せる。

この分担ができれば、トークンは「投資商品の代用品」ではなく、「プロダクト経済圏に参加するための道具」になります。


「儲けたい」ではなく「育てたい」へ

Web3プロダクトが本当に作るべきなのは、ユーザーにこう思わせる設計だと思います。

このトークンで儲けたい

ではなく、

このプロダクト上の自分のステータスを育てたい

たとえば、あるWeb3プロダクトがあるとします。

そこでユーザーの長期的な関係を、次の2つの軸で設計します。

  1. Life Status Score(SBT)
  2. Product Token

Life Status Scoreは、生涯蓄積される信用とステータスです。
利用実績、継続期間、健全な利用、紹介したユーザーの質、コミュニティ貢献、トークンの保有期間などをもとに積み上がります。

Product Tokenは、そのプロダクト経済圏に対するコミットメントです。
ただし、トークンを買っただけで最上位ステータスになれるようにはしません。

この2つを組み合わせると、次のようになります。

最終ベネフィット
= Life Status Scoreによる信用・ステータス特典
+ Product Tokenによるコミットメント特典

ここで一番大事なのは、Product Tokenを主役にしすぎないことです。

トークンはLife Status Scoreを育てるための加速装置にはなってよい。
しかし、Life Status Scoreそのものを買えるようにしてはいけません。

なぜなら、ステータスは買えた瞬間に弱くなるからです。


プロダクトトークンを「売りづらく」する仕掛け

ここで、もう一段深い設計上の工夫を考えてみます。

プロダクトトークンが投機化しやすい根本的な理由は、保有することで得られる価値が「将来の価格」しかないからです。
売っても何も失わないなら、適切なタイミングで売るのが合理的判断になります。

しかし、もしトークンを保有・ロックすることが、Life Status Scoreの蓄積を加速する仕組みだったらどうでしょうか。

たとえば、こんな設計です。

状態 LSS蓄積速度
トークン未保有 通常
一定量保有 +5〜10%
1年ロック +15〜20%
4年ロック +25〜30%

この設計では、トークンを売ることは単に値段を確定させる行為ではありません。
ロックが解除され、LSSのブースト効果が消え、これから先の自分のステータス成長が遅くなることを意味します。

このとき、ユーザーの判断軸はこう変わります。

このトークンを売ると、これからのLSS成長速度が落ちる。
自分のステータスを育てる速度が遅くなる。
売って得られる金銭よりも、育つ速度を保つ方が価値があるかもしれない。

「機会費用としての成長速度」を意識させる仕組みです。

CurveのveCRVや、Velodrome、Convexなど、いわゆるve-tokenomicsモデルが部分的に実現してきた仕掛けに近い発想です。
ただし、ロック報酬を「利回り」にすると、Digital Securitiesの領域に近づいてしまいます。ve-tokenomicsの非金銭版とも言えます。
報酬を非金銭的なステータス成長速度にすることで、Digital Toolsの方向に寄せた設計にしやすくなります(ただし前述の通り、分類だけで証券性が完全に排除されるわけではなく、提供・宣伝の方法も慎重に設計する必要があります)。

この設計のもう一つの効果は、トークンが"ゴール"ではなく"道具"になることです。

ユーザーにとってトークンは、儲ける対象ではない。
育てたいLSSという「本当のゴール」に対して、それを加速するための道具になります。

道具はゴールではないので、過剰に値段に注目されにくい。
道具はゴール達成のために使うものなので、保有とロックに積極的になります。

そして、長くロックすればするほど、ロック解除によって失う「ブースト効果のあった期間の累積分」が大きくなります。
言い換えれば、保有期間そのものが、売却のスイッチコストになります。

これが、プロダクトトークンを売りづらくする最も健全な仕組みだと考えています。


SBTが作る「売りたくない理由」

プロダクトトークン単体では、どうしても「売るか、持つか」の金融的判断になります。

しかしSBTを組み合わせると、ユーザーの判断軸が変わります。

たとえば、長く使ったユーザーに以下のようなSBTが付与されるとします。

  • 初期ユーザーSBT
  • 1年間継続利用SBT
  • 高信頼ユーザーSBT
  • コミュニティ貢献SBT
  • 健全なReferral実績SBT
  • Product Council参加SBT
  • 限定イベント参加SBT
  • 特定国・地域のChapter Founder SBT

これらは売れません。
だから投機対象にはなりにくい。

しかし、売れないから価値がないわけではありません。
むしろ売れないからこそ、本人の履歴として価値があります。

そして、プロダクトトークン保有者の中でも、SBTのステータスが高い人にだけ、より良いベネフィットを与える。

たとえば、

  • 限定デザイン
  • 優先サポート
  • 新機能βアクセス
  • Partner Dropの優先枠
  • コミュニティ投票の重み
  • 地域コミュニティのリーダー資格
  • Product Council参加権
  • Business機能の優先利用
  • イベント招待

こうすると、ユーザーは単にトークン価格を見るだけではなくなります。

自分のアカウントを育てたい
自分の履歴を積み上げたい
このコミュニティ内で認められたい
ここまで育てたステータスを失いたくない

こうした感情が生まれます。

これは、単純な利回りよりも強い場合があります。


ただし、SBTにも危険がある

SBTは便利ですが、万能ではありません。

むしろ設計を間違えると、かなり危険です。

リスク 内容
プライバシー 行動履歴や信用情報が見えすぎる
差別 スコアやバッジによって排除が起きる
固定化 過去の失敗が永久に残る
中央集権 運営が一方的に評価を決める
ウォレット紛失 SBTを失う、または移行できない
ブラックリスト化 ネガティブSBTが社会的制裁になる

したがって、SBTを使う場合は、最低限次の設計が必要です。

  • ユーザーの同意に基づいて発行する
  • 非公開または選択的公開を可能にする
  • 取り消し・異議申し立ての仕組みを用意する
  • ウォレット移行や再発行のルールを作る
  • ネガティブSBTは極めて慎重に扱う
  • スコア算出ロジックの概要を公開する
  • 運営の裁量変更ルールを明文化する

SBTは「信用を作る道具」であって、「ユーザーを縛る道具」にしてはいけません。


この設計が成り立つ条件

トークン、SBT、株式の役割分担は有効だと思います。
ただし、前提条件があります。

それは、プロダクト自体が良いことです。

プロダクトが使われていないのに、トークンやSBTだけを設計しても意味がありません。
ユーザーが毎日、毎週、毎月使う理由がないプロダクトでは、どれだけ凝ったトークノミクスを作っても、結局は投機に寄っていきます。

この設計が成立する条件は、少なくとも以下です。

  1. プロダクトに実需がある
  2. 継続利用するユーザーがいる
  3. サブスクリプションや手数料など、持続的な収益源がある
  4. トークンのベネフィットが事前に文書化されている
  5. SBTの意味と限界が文書化されている
  6. 株式とトークンの違いが明確である
  7. コミュニティとの約束を運営が守る
  8. ユーザーも短期売却だけでなく、プロダクト成長に参加する

特に重要なのは、できること / できないことを事前に書くことです。

トークンで何ができるのか。
何はできないのか。
SBTは何を表すのか。
SBTは譲渡できるのか。
スコアは下がるのか。
運営はどこまで変更できるのか。
株式とトークンはどう違うのか。
トークンホルダーは会社利益に権利を持つのか。
持たないのか。

ここを曖昧にすると、後から必ず揉めます。

逆に、ここを最初から誠実に書けるプロジェクトは、長期的に信頼されやすいと思います。


コミュニティがなければトークンは光らない

最後に、トークン設計で忘れてはいけないのがコミュニティです。

どれだけ設計が綺麗でも、コミュニティがなければトークンは光りません。

ここでいうコミュニティとは、単にDiscordに人が多いことではありません。
エアドロップ目的のユーザーが多いことでもありません。

本当に重要なのは、次のような状態です。

  • ユーザーがプロダクトを実際に使っている
  • 運営が約束を守っている
  • 変更があるときに説明がある
  • 初期ユーザーが尊重されている
  • 長期利用者が報われている
  • 不正ユーザーが得をしすぎない
  • ユーザー同士がステータスを認識している
  • トークン保有がコミュニティ参加と結びついている

トークンは、それ単体で価値を持つのではありません。

プロダクトが良い。
ユーザーがいる。
コミュニティがある。
運営が約束を守る。
その上で、トークンに役割がある。

この順番が大事です。

順番を間違えて、トークンを先に主役にすると、短期的には盛り上がっても、長期的には売り圧と失望が残ります。


まとめ

Web3の「所有」は大きな発明です。
しかし、所有できるだけでは足りません。

流動性のあるプロダクトトークンは、ユーザーに参加権を与える一方で、投機化しやすく、売り圧も生みます。
強い経済的インセンティブを与えようとすると、証券化リスクも高まります。

だからこそ、トークンに全てを背負わせるのではなく、役割分担が必要です。

私の現時点での提言は、次の通りです。

株式            = 経済的リターン
プロダクトトークン  = ネットワーク参加権 + LSS蓄積の加速装置
SBT             = 信用・履歴・ステータス

この中で、SBTは特に重要です。

SBTは、ユーザーに「儲けたい」ではなく「育てたい」と思わせる可能性があります。
売れないからこそ、本人の履歴になる。
買えないからこそ、ステータスになる。
積み上がるからこそ、離れにくくなる。

そして、プロダクトトークンをLSS蓄積のブースターとして位置づけることで、トークン保有そのものに「ゴールではなく道具」という新しい意味が生まれます。
ロック期間が長くなるほど、売却のスイッチコストは大きくなり、自然と長期保有が合理的選択になっていきます。

Web3の次の課題は、単に「所有できる」ことではありません。

所有したい。
持ち続けたい。
売りたくない。
自分の履歴として育てたい。

そう思える設計を作れるかどうかだと思います。

そしてそれは、トークン単体ではなく、SBT、株式、コミュニティとの役割分担によって実現されるのではないでしょうか。

まだ実績のある答えではありません。
しかし、最近いくつかのWeb3プロダクトを使いながら考える中で、少なくとも「トークンに全てを背負わせる設計」には限界があると感じています。

Web3が本当に「所有」の時代になるためには、所有の中身をもっと丁寧に分解する必要がある。

その1つの方向性が、SBTとの組み合わせだと思います。

Accenture Japan (有志)

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