個人×AIで、100人規模・新聞掲載のAIイベントを作った話──自己増殖・相互循環する「札幌すごいAIまつり」の設計
はじめに
私は個人で、「札幌すごいAIまつり」というイベントを2月15日に開催しました。
ビジコン・芸術祭・LT会・展示体験会を含めた、AIの総合フェスです。
札幌で100名を動員し、その模様は北海道新聞でも取り上げていただけました。
この記事では、札幌で開催した「札幌すごいAIまつり」の舞台裏を通して、
- なぜこのイベントが「単発で終わらない設計」になっているのか
- AIを使うことで、個人がどこまで役割を引き受けられるのか
という2点を解説します。
先に結論を書くと、
- AI体験は「自己増殖」と「相互循環」で設計できる
- AIを使うことで、個人でも「小さな組織」として振る舞える
という話です。ここからは、その設計と実装、そして思いを、順を追って紹介していきます。
1. 札幌のAI体験「自己増殖と相互循環」
今回、私が作って公開したものは次の5つです。
- 札幌すごいAI会Discord:初心者歓迎のAI関連Discordサーバ。AIを学ぶモチベ維持や、AI情報発信に使えます。
- すごいAI道場:AIの学習サイト。AI基礎、起業、クリエイティブを学べます。
- connpassの札幌すごいAI会サイト:LTなどのイベントを募集するサイトです。
- まつり公式ウェブサイト:札幌すごいAIまつりの公演内容のサイトです。
- まつりのあとウェブサイト:まつりの参加者が、AIとの向き合い方を考えて、次のステップ(AI道場/Discord/)を考えられるサイトです。
今回作ったものは、大きく分けると次の役割を持っています。
- 【学ぶ】すごいAI道場
- 【つながる】札幌すごいAI会Discord
- 【集まる】connpassの札幌すごいAI会
- 【知る・挑戦する】まつり公式ウェブサイト
- 【次へ進む】まつりのあとウェブサイト
そして、これらを自己増殖・相互循環の構造で回していきます。
1-1. 自己増殖
ここで言う「自己増殖」とは、
誰かが勝手に広めてくれる状態を、最初から設計することです。
まずはこれら全てのサイトを、可能な限り全て「無償・拡散自由・登録不要」な形で公開します。この仕掛けで、先ほどのいずれかのサイトを知った方が、このような心理で動けるようにします。
- 無償ならちょっと触ってみてもいいかな、学んでみようかな
- 知り合いに「これいいよ」って教えてみようかな
そして、これらのうち、私と交流があった人向けに、「スライド作りならこれ」「イベントはこれ」のように紹介しています。
この動きを総合して、札幌で「AI学習してみようかな」「これいいよ」という熱が、自発的に広がるように設計しています。これが、私の考える「自己増殖」です。
1-2. 相互循環
「相互循環」とは、どこから参加しても、学びと次の行動に自然につながる構造のことです。
先ほどの5つのサイトは独立したものではなく、相互にリンクを張り合って、「あらゆる経路がDiscordに流入し、Discordから様々なイベントに流出していく」という構造を作っています。
この図のイメージです。

どこかのサイトを接点にして、Discordへ入る。Discordで日々の学習を発信してみて、Discord経由でイベントを知って参加する。
そして、それらの集大成として、半年に1回定期的に行われるAIまつりで発表のチャンスがある。これも誰にでも門戸が開かれています。そしてAIまつりで「札幌すごいAI会」や「AI自体のワクワク」を新たに知った人が、まつりで持ち帰った火種とともにDiscordに入る。
こうして、様々なサイトやイベントが、Discordを中心に循環して増えていく。これが「相互循環」です。
さて、このように「自己増殖と総合循環」で設計したイベントですが、それを作り上げるのを実は一人でやっていたんです。それを次の章でお話ししましょう。
2. AIによる個人の能力拡張
端的に言うと、一人で「イベント会社+クリエイティブ制作会社+教育機関+パフォーマー」みたいなことをやっていました。
結果的に、一人50役になりました。膨大ですが、参考として表を載せておきます。
ちなみにこれらは、始めから1個1個整理してやろうと思っていたわけではないです。
「あれ、これも必要じゃん、ChatGPTこれどうやればいいんだ?」
「あれ、これもやりたい、ChatGPTちょっと壁打ちしてくれ」
というふうに、必要になったら即AIで知識を拡張することによって生み出された役割群でした。
たぶんスタートアップ社長の動きと同じだと思います。必要なもの全部やっちゃう。
※「全部読まなくてOK」です。「イベントって、裏でこんなに役割があるんだな」と感じてもらえれば十分です。
一人で実際にやったこと一覧
| No. | 大項目 | 小項目 | 詳細(何をやったか) |
|---|---|---|---|
| 1 | 総合プロデューサー | イベント思想の定義 | 「AIは魔法ではなく拡張器官」「免許不要・非営利・開放」という全体思想を明文化 |
| 2 | 総合プロデューサー | AI表現の線引き設計 | 誇張・神格化・誤解を避けるための見せ方ルールを決定 |
| 3 | 総合プロデューサー | 企画横断の文脈統合 | 映画・展示・LT・ビジコンが同一世界観に収束するよう調整 |
| 4 | 総合プロデューサー | 最終クオリティ判断 | 出す/出さない、やる/捨てるの最終意思決定を担当 |
| 5 | AIプロジェクトマネジメント | 全体タスクの洗い出し | 制作・運営・広報・当日対応を含む全作業を棚卸し |
| 6 | AIプロジェクトマネジメント | 優先度の動的切替 | 期限に応じて「完成度より成立」を優先する判断を実施 |
| 7 | AIプロジェクトマネジメント | 品質の見切り判断 | 完璧主義を避け、80点で止める基準を運用 |
| 8 | AIプロジェクトマネジメント | 個人リソース配分 | 体力・集中力・時間を日単位で再配分 |
| 9 | AIプロジェクトマネジメント | 当日トラブル即応 | 想定外事象に対し現場で即断即決 |
| 10 | AIコンテンツ制作統括 | AI映画の制作 | 企画・脚本・生成・編集までをAI込みで一貫実施 |
| 11 | AIコンテンツ制作統括 | AI音楽の制作 | 情緒設計を含むBGM・音楽生成を実施 |
| 12 | AIコンテンツ制作統括 | ビジュアル素材の生成 | KV・展示用映像・静止画をAIで生成 |
| 13 | AIコンテンツ制作統括 | 説明用スライドの生成 | 教育・解説用スライドをAIで制作 |
| 14 | AIコンテンツ制作統括 | 生成物の最終編集 | 各生成物を人間判断で統合・編集 |
| 15 | AI実演・パフォーマンス | 身体表現による実演 | 刀・尺八など身体表現とAI生成物を組み合わせて実演 |
| 16 | AI実演・パフォーマンス | 演出タイミング制御 | 映像・音・動作の同期を設計 |
| 17 | AI実演・パフォーマンス | 観客体験の設計 | 理解より没入・惹きつけを優先した体験設計 |
| 18 | AI実演・パフォーマンス | ライブ即興対応 | 会場の空気に応じて演出を調整 |
| 19 | AI教育・解説デザイン | 専門用語の翻訳 | AI用語を初学者向けに噛み砕いて説明 |
| 20 | AI教育・解説デザイン | 誤解防止の線引き説明 | できること/できないことを明確化 |
| 21 | AI教育・解説デザイン | AIツール実演解説 | NotebookLM・ChatGPT等を用いたデモを実施 |
| 22 | AI教育・解説デザイン | 対象別説明調整 | 高校生・一般・技術者向けに説明粒度を調整 |
| 23 | AIイベント企画・運営設計 | 複数企画の同時設計 | 展示・芸術祭・ビジコン・LT会を並列に設計 |
| 24 | AIイベント企画・運営設計 | 会場導線の設計 | 観客が迷わず回れる動線を設計 |
| 25 | AIイベント企画・運営設計 | タイムテーブル設計 | 破綻しない進行スケジュールを構築 |
| 26 | AIイベント企画・運営設計 | 当日運営構造の設計 | 一人運営に見えない役割配置を構造化 |
| 27 | AIコラボレーター招集・共創設計 | 出演者・展示者の個別招集 | 技術者・アーティスト等に直接声かけ |
| 28 | AIコラボレーター招集・共創設計 | 参加ハードルの明示 | 各イベントにおけるルール作成と「ここまでやってOK・NG」という範囲を提示 |
| 29 | AIコラボレーター招集・共創設計 | 主役バランスの調整 | 自分が前に出すぎない立ち位置を調整 |
| 30 | AIコラボレーター招集・共創設計 | 共犯関係の空気づくり | 一緒に作っている感覚を醸成 |
| 31 | AIコミュニティ/継続構造設計 | 次アクション導線の設計 | Discord・AI道場への接続を設計 |
| 32 | AIコミュニティ/継続構造設計 | 担い手化の余白設計 | 参加者が主催側に回れる余地を用意 |
| 33 | AIコミュニティ/継続構造設計 | 他都市展開の抽象化 | 再現可能な構造として整理 |
| 34 | AI広報・対外発信 | 記事・SNSでの言語化 | Zenn・SNSでイベントの意味を発信 |
| 35 | AI広報・対外発信 | メディア向け文脈整理 | 北海道新聞など外部向け説明を実施 |
| 36 | AI広報・対外発信 | モデルケースとしての物語化 | 個人×AI能力拡張モデルとして提示 |
| 37 | AI広報・対外発信 | 資金調達のための広報設計 | クラウドファンディング用の文脈・価値説明を設計 |
| 38 | AI広報・対外発信 | 協力企業とのコミュニケーション | 協力企業への説明・調整・対応を実施 |
| 39 | AIツール統合・ワークフロー設計 | AIツール役割分担設計 | 各AIツールの得意分野を整理 |
| 40 | AIツール統合・ワークフロー設計 | 制作パイプライン構築 | 生成→選別→編集の流れを確立 |
| 41 | ITエンジニア | ウェブサイト要件定義 | AIまつり/AI道場/まつりのあと各サイトの目的・対象・役割を定義 |
| 42 | ITエンジニア | ウェブサイト設計 | 情報設計・導線設計・更新前提の構造を設計 |
| 43 | ITエンジニア | AIまつり公式サイト開発 | イベント公式サイトの実装・公開・運用を担当 |
| 44 | ITエンジニア | AI道場の開発 | 学習導線を意識したAI道場サイトを設計・実装 |
| 45 | ITエンジニア | 「まつりのあと」サイト開発 | イベント後の記録・循環用サイトを設計・実装 |
| 46 | ITエンジニア | ウェブサイト動作テスト | 表示崩れ・リンク切れ・スマホ対応などを事前に確認 |
| 47 | ITエンジニア | 本番前リリース確認 | 公開タイミング・当日アクセスを想定した最終チェック |
| 48 | AI講師 | AI道場コンテンツ設計 | AI道場内の学習コンテンツを全て設計・制作 |
| 49 | AI講師 | 教材動画の撮影 | YouTube向け教材動画を自ら撮影 |
| 50 | AI講師 | 教材動画の編集 | 撮影した動画を編集し、視聴可能な教材として仕上げ |
要するに、
- 思想決定
- 制作
- 運営
- 教育
- 広報
という、本来なら複数人・複数組織でやる役割を、
AIを使って一人で並列処理していました。
で、全てを流用・再現可能にした。
今回作ったものは、すべて「一度きり」で終わらせていません。
意図的に、流用・再現・拡張できる形で作っています。
- 公式サイト、まつりのあとサイト→作りきったので、あとは画像など差し替えて流用するだけです。
- AI道場→いつでも使える・拡張できる状態です。
- connpass→まつり後にもイベントを月1くらいでやってます。
- Discord→サーバを管理しつつ、じわじわ伸びて150名を越しました。
- 広報や協力会社ルート→今回得たものを流用しつつ、次回拡大します。
- 出演者→今回の人にまた出ないか声掛けしつつも、次回も人集めを頑張ります。
3. なんでこんな代物を1人で作れたの?
正直に言うと、理由はシンプルです。やったら絶対楽しいと思ったからです。
でも、札幌ではその「場」がなかった。だったら、自分で作った方が一番早いし、一番楽しい。
そしてもう一つ。息子が生まれました。今、札幌にAIを使える大人が増えたら、それはそのまま、息子の生きる未来の選択肢になります。そのためならパパなんでもやっちゃうぞと。
まとめ
この取り組みは、札幌だけの話ではありません。
- AIは個人の能力を拡張できる
- イベントは単発で終わらせなくていい
- 学びと場は、自己増殖・相互循環で育てられる
この構造は、どこでも再現できます。
なので、次はあなたの住む街で、誰かがAIまつりをやり始めるかもしれません。
一緒に、楽しく増やしていきましょう。
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