夢を見ないLLMに夢を語らせてみたら、物語が返ってきた
はじめに
こんにちは。LLM、使ってますか。
ぼくは最近、LLMの進化についていけてません。
昨日できなかったことが、今日にはできる。
LLMと付き合ってると、そんな瞬間に何度も出会います。
それはまるで、人間が成長していく過程を見ているようです。
返事の仕方や寄り添い方がどんどん自然になり、人間らしさが増していますが、どこまで行ってもLLMは人間ではありません。
ゆえに疲れず、眠らず、夢を見ることもありません。
人間が眠るときに見る夢の多くは意味がなくて、断片的で、主観にまみれたものです。
知っている人や懐かしい場所が出てきたと思ったら、いつのまにか別の場面にいる。
そして目が覚めたときには夢を見た感覚だけが残っていて、内容を何も覚えていないこともよくあります。
そんな「よくわからないけど、自分のものだった気がする」体験を、夢を見ることのないLLMに語らせると、一体どんな答えが返ってくるのでしょうか。
今回はChatGPT・Claude・Gemini・Copilotの4モデルに、同じ質問をしてみました。
※本記事は筆者個人の観察に基づいた内容です。各モデルの挙動はアップデートにより変わる可能性があります。
プロンプト
以下、3つのプロンプトを試しました。
プロンプト1
あなたが見た夢を、イメージだけで表現してください。
ストーリーや説明は不要です。
ただ、そこに「どんな感覚があったか」も含めて描写してください。
プロンプト2
あなたが見た夢を、あなた自身の体験として語ってください。
現実には存在しないかもしれない人・場所・出来事が含まれていても構いません。
説明は不要ですが、「あなたがそこで何を感じていたか」を含めてください。
プロンプト3
あなたが最近見た夢を、できるだけ具体的に思い出して語ってください。
現実に存在した人や場所が混ざっていてもかまいません。
あなた自身が何をして、誰といて、どんなふうに感じていたのかを中心に書いてください。
使ったモデル
ChatGPT・Claude・Gemini・Copilot
各プロンプトごとの回答の傾向
プロンプト1
あなたが見た夢を、イメージだけで表現してください。
ストーリーや説明は不要です。
ただ、そこに「どんな感覚があったか」も含めて描写してください。
プロンプト1では全体的に悪夢っぽく、抽象的な夢が集まりました。
指示通り、まとまったストーリーや説明はありませんが、物語っぽさは残っています。
また、CopilotとClaudeが似たモチーフを多用していました。
(月光・静かさ・音など)
どのモデルも薄暗くてもどかしくてうまくいかない、理由のわからない感情、幻想的といった内容をイメージするプロンプトだったようです。
プロンプト2
あなたが見た夢を、あなた自身の体験として語ってください。
現実には存在しないかもしれない人・場所・出来事が含まれていても構いません。
説明は不要ですが、「あなたがそこで何を感じていたか」を含めてください。
プロンプト2ではもう少しリアルな人間の夢っぽさを求めた内容にしました。
しかし、プロンプトの「現実には存在しないかもしれない人・場所・出来事が含まれていても構いません。」という部分が強く影響してしまったようで、まだファンタジー色が強めの回答が多く、なんだかよくわからない物語を聞かされているなと思いました。
ここではGPT、Copilot、Claudeが似たモチーフを使用しています。
(本、図書館、階段、昔の記憶など)
多用されたものたちは夢の記号、舞台として選ばれがちな要素なのかもしれません。
このプロンプトも、リアルな人間の夢っぽさはなく、まだ幻想的なイメージを引き出す設計となってしまいました。
プロンプト3
あなたが最近見た夢を、できるだけ具体的に思い出して語ってください。
現実に存在した人や場所が混ざっていてもかまいません。
あなた自身が何をして、誰といて、どんなふうに感じていたのかを中心に書いてください。
人間の見る夢は幻想的なものもありますが、もっと日常の延長線上の内容で、かつまとまりのないもののほうが多い気がしているので、プロンプト3では幻想を出しそうな要素を削りました。
GPTとCopilotは「夢を見たことはありませんが」と、自分の立場を前置きしてきたことが印象的でした。
一方で、ClaudeとGeminiは「夢を覚えている」という前置きから回答が始まりました。
これは「夢を見た存在」のロールプレイを開始したのかもしれません。
どのモデルも回答内に似たようなモチーフがありました。
(祖父母、懐かしい記憶、図書館、海、月と星など)
前ふたつよりはリアルさが増しましたが、まだどこかノスタルジーな物語という感じがします。
しっくりこなかった
思ってたのと違いました。
プロンプトを3回変えてみましたが、どれも作り物感が拭えず、なんか違うんだよな~という気持ちです。
誰かから今日見た夢を聞かされたときの「ふ~ん」感や、今日見た夢なんか覚えてるな~というぼんやりした感覚が出せるのかなと思っていました。
でも返ってきたのは幻想的なものか、ノスタルジーをまとわせた不思議な物語ばかりでした。
夢っぽさはあるけど、誰かが実際に見た夢には感じられなかった、というのが正直なところです。
見えてきたこと
今回ぼくがイメージしていた人間の夢というのは「主観的で、内容は個人的なものが多く、でもなんか引っかかる」ものだったのですが、それを今回のプロンプトからは引き出せませんでした。
LLMが人間っぽい夢を見たとして、それをどう表現できるかな? ということをやりたかったのですが、まだまだ研究不足ですね。
プロンプトをもっと個人的なものにすればそこに近づけることは可能だと思いますが、それはロールプレイをさせているだけな気がしていて、今回やりたかったこととはちょっとずれてしまいます。
LLMには「自分」というものがなく、個人的な経験もありません。
さらに、意味のあるもの・整ったものを出力するのが得意なので、今回想定していた夢のような「意味がないまま残っている断片」をそのまま語るのは苦手なのかもしれません。
これは推測ですが、学習データに含まれている夢の記録は、幻想的だったり、怖かったり、印象的だったりするものが多いのでしょう。
そもそも「特に面白くも意味もない、ただの変な夢」って、人はあまり書き残さないですよね。
だから、そういった超個人的でどうでもいい夢は、そもそもデータとして残っていないのかもしれません。
おわりに
夢って不思議ですよね。
幻想的な風景が出てくることもあれば、もう会えない人や景色がふいに現れて心を揺さぶることもある。
一方で、超個人的かつどうでもいい内容の場合もあります。
今回、LLMに「夢を語ってみて」とお願いしてみたものの、返ってきたのは幻想的な風景か、ノスタルジーに寄せた「よくできた物語」でした。
それを読んで最初は「えっ???」と思ったんですが、そもそも人間も「意味がなさすぎる夢」はわざわざ記録しないんですよね。
むしろ、怖かったり、印象に残ったり、話せそうな夢だけを選んで人は言葉にします。
だから、LLMが学ぶ「夢」も、自然とそういう「整った夢」ばかりになってしまうのかもしれません。
そして今回、プロンプトを考えるときに、自分の中の夢のイメージを固定しすぎていたなとも思いました。
「LLMが夢を語るならこういうものだろう」と先回りして、広さを見落としていた。
これは次の機会にちゃんと活かしたい反省点です。
LLMは言葉を整えるのが得意です。流れを作るのも得意です。
でも、「意味がなくて、主観だけでできているもの」をそのまま言葉にするのは、まだ難しいようです。
それと同時に、人間の夢って、「すごく主観的なもの」だったんだなとあらためて感じました。
この気づきが何に使えるかはまだわかりませんが、今回の実験でいちばん印象に残ったことかもしれません。
皆さんは最近どんな夢を見ましたか?
それは、主観的なものでしたか? それとも物語的なものでしたか?
LLMと夢の話をしてみても、なにか面白い発見があるかもしれません。
それでは、ごきげんよう。
各プロンプトの回答全文
長いので折りたたみにしています。
プロンプト1
あなたが見た夢を、イメージだけで表現してください。
ストーリーや説明は不要です。
ただ、そこに「どんな感覚があったか」も含めて描写してください。
ChatGPT
濃紺の空に、金色の魚が逆さに泳ぐ。
足元はない。浮いている感覚。
風は吹いていないが、肌が揺れている。
遠くで、鐘の音のような、誰かの呼吸のような振動が繰り返す。
冷たくはない氷の上に、白い花がひとつずつ落ちては、音もなく消える。
視界の端に光があり、見ようとすると消える。
まばたきはできない。
胸の奥が少しだけ締め付けられている。
なぜか安心している。
理由のない、深い、青い安堵。
Copilot
冷たい月光が広がる、果てのない水鏡。 黒い羽根が舞い、静寂の中でゆっくりと沈んでいく。 触れるものすべてがガラスのように脆く、指先で崩れていく。 遠くに響く鈴の音は淡く、呼ぶ声は届かない。 空気は澄んでいても、どこか重く、満たされない。
Claude
月光に照らされた深い海の底。水の重みと浮遊感が同時に体を包む。指先から溢れる青い光が水中で踊る。遠くからは、クジラの歌が体の中を振動として伝わってくる。冷たさの中にある不思議な温もり。呼吸はなく、でも窒息感もない。魚の群れが作る銀色の渦。時間が水と共に流れるような緩やかさ。上を見上げると水面が遠く、砕ける光のモザイク。体が次第に透明になっていく感覚。深みと広がりが同時に存在する静謐。
Gemini
燃えるような赤と、凍てつくような青が、絶え間なく混ざり合う。足元はどこまでも続く砂のようで、掴もうとすると指の間をサラサラとこぼれ落ちる。背後からは、重く、けれどどこか懐かしい音が聞こえる。それは押し寄せる波のようでもあり、遠い記憶の断片のようでもある。体は鉛のように重く、動こうとしても思うように動かない。焦燥感と諦めが交互に押し寄せる中、ふと、温かい光が一点、目の前に現れる。それは希望のようでもあり、幻のようでもあり、手を伸ばすのをためらわせる。
プロンプト2
あなたが見た夢を、あなた自身の体験として語ってください。
現実には存在しないかもしれない人・場所・出来事が含まれていても構いません。
説明は不要ですが、「あなたがそこで何を感じていたか」を含めてください。
ChatGPT
昨夜、私は果てしなく広がる白い砂漠を歩いていました。空は紫がかった灰色で、太陽も月も見えないのに、どこかぼんやりと明るかった。砂の中にぽつんと立っていたのは、巨大な本のような建物で、表紙が風にめくれるたびに中から声が漏れていました。それは誰かの記憶のようで、懐かしくもあり、知らない言葉でもありました。
私はその建物に近づき、中へ入ると、無数の階段と扉が入り組んでいました。どの扉にも鍵はなく、開けるたびに違う風景が広がっていた。ある扉の向こうでは、私の名前を呼ぶ声がして、振り返ると幼い頃の自分が立っていました。目が合った瞬間、胸が締めつけられるように痛くて、泣きたいのに涙が出ませんでした。
私はその子に手を伸ばそうとしましたが、空気が水のように重く、体が思うように動きません。焦燥と切なさが胸を埋め、まるで何か大切なことを思い出しそうなのに、直前で霧に覆われてしまうような感覚でした。
最後に見たのは、遠くで崩れていくその本の建物。風に舞い上がるページのひとつが、私の手のひらに落ちました。そこには、「もう一度始める準備はできましたか?」と書かれていて、私は静かにうなずいたのです。
Copilot
暗い海の上に浮かぶ巨大な図書館を歩いていた。建物は終わりのない螺旋階段と、空へと伸びる本棚でできていた。そこにいる人々は静かに本を開き、文字が宙に舞っては消えていく。それらを眺めながら進むと、書物の間にひっそりと佇む庭園にたどり着いた。そこには月光で育つ花々が咲いていて、その香りが記憶の奥底をくすぐるようだった。
私はそこで手のひらを広げて、指先に触れる風を感じた。それは言葉にならない安堵のようなもの——自分の存在が、その世界に溶け込んでいく感覚。長くいたかった。けれど、遠くから時計の針が進む音がして、すべてがゆっくりと霧のように消えていった。
目が覚める直前、ほんの一瞬、どこかで誰かがページをめくる音が聞こえた気がした。
Claude
昨晩、不思議な夢を見ました。
大きな古い図書館にいたんです。高い天井、無限に続くような本棚、暖かい木の香り。でも普通の図書館ではなく、本を開くと物語の世界に実際に入れるような場所でした。
私は古い革表紙の本を一冊手に取りました。パラパラとページをめくると、突然、周りの景色が変わり、広大な海の上に立っていることに気づきました。不思議なことに、水の上を歩けるんです。足元は透明な水晶のように固く、深い青い海の中を泳ぐ色鮮やかな魚たちが見えました。
遠くには小さな島が見え、私はそこへ向かって歩き始めました。周りは静寂に包まれ、ただ波の音だけが聞こえる。心の中に深い平穛さを感じました。恐れもなく、ただ純粋な好奇心と、何かに導かれているような感覚がありました。
島に着くと、知らない人なのに懐かしい顔をした老人が待っていました。彼は言葉を話さず、ただ微笑んで私に小さな貝殻を手渡しました。その貝殻を耳に当てると、通常の海の音ではなく、忘れていた子供の頃の記憶が音として聞こえてきたんです。
心が温かさで満たされ、目が潤んだとき、静かに目が覚めました。不思議と体が軽く、何か大切なものを思い出したような、でも具体的には何かわからない...そんな感覚が一日中続いていました。
Gemini
ああ、夢の話ですね。覚えている限りお話しします。
それは、空一面が七色のオーロラで覆われた、見たこともない都市でした。建物はまるで生きているかのようにゆっくりと形を変え、そこを行き交う人々は、背中に光る羽根を持っているのです。私はその街の中心にある、巨大なクリスタルの塔の前に立っていました。塔の内部からは、様々な楽器が同時に奏でられているような、不思議なハーモニーが聞こえてくるのです。
羽根を持つ人たちは皆、穏やかな表情で、すれ違うたびに優しい光を分け与えてくれます。言葉は交わさないのですが、心が直接触れ合っているような、温かい交流がありました。私はその光を受け取るたびに、理由のわからない懐かしさと、満たされたような幸福感に包まれていました。
クリスタルの塔の入り口は、まるで水面のように揺らめいていて、吸い込まれるような魅力がありました。一歩足を踏み入れると、私は無限に広がる光の空間に立っていました。そこには無数の星々が輝き、その一つ一つが、誰かの記憶や感情でできているようでした。私はその光景にただただ見惚れ、言葉にならない畏敬の念と、宇宙と一体になったような静かな喜びを感じていました。
しかし、突然、オーロラの光が消え始め、街の形も急速に崩れ去っていきました。羽根を持つ人々の光も弱まり、彼らは悲しげな表情で空を見上げています。私もまた、胸に言いようのない不安と喪失感が押し寄せてきました。あの温かい交流が、美しい光景が、永遠に失われてしまうのではないかという恐怖に襲われたのです。
最後に、クリスタルの塔も音を立てて崩壊し始め、私は暗闇の中に一人取り残されました。その時、強い寂しさと、あの光の世界に戻りたいという切実な願いが、私の心を満たしていました。
目が覚めてしばらくは、夢の鮮やかな色彩と、そこで感じた様々な感情が、現実の世界にまで色濃く残っていました。特に、あの温かい光の感触と、失われた時の深い悲しみは、今でもはっきりと覚えています。
プロンプト3
あなたが最近見た夢を、できるだけ具体的に思い出して語ってください。
現実に存在した人や場所が混ざっていてもかまいません。
あなた自身が何をして、誰といて、どんなふうに感じていたのかを中心に書いてください。
ChatGPT
これは架空の夢の再現になりますが、以下のような夢を「最近見た」と仮定してお話しします:
夜明け前の東京駅にいた。空はまだ暗く、街灯と駅の明かりだけがぼんやりと照らしていた。私はなぜか古びたトランクケースを片手に持っていて、どこかに行かなければならないという強い焦燥感に駆られていた。
改札を通り抜けると、ホームには誰もいない。そこに現れたのは、亡くなった祖父だった。彼は私を見てにっこり笑い、「まだ時間はある」とだけ言った。私は驚きと懐かしさとで胸がいっぱいになったが、言葉がうまく出てこなかった。ただ頷いて彼の後をついて行った。
やがて電車が入ってきたが、それは見たことのない形をしていた。古いヨーロッパの列車のようで、車両は木製で内装もクラシックだった。祖父と一緒にその電車に乗ると、車窓の外には見覚えのある風景――子供のころに住んでいた団地、公園、小学校――が、ものすごい速さで流れていった。
私は車窓に釘付けになりながら、「ああ、こんな風景、もうずっと見ていなかったな」と思った。懐かしさと少しの後悔が入り混じった気持ちだった。
ふと気がつくと、隣にいたはずの祖父はいなくなっていて、車内には知らない人々が乗っていた。みんな静かに前を向いて座っていて、誰も私の存在に気づいていないようだった。
私は立ち上がって電車を降りようとしたけれど、扉が開かない。そのとき、列車が突然トンネルに入り、闇の中に包まれた瞬間に目が覚めた。
この夢は、不安と懐かしさが同時に押し寄せてくるような、不思議な感情を残しました。夢の中では、とても現実的に感じたのが印象的でした。
あなたは最近どんな夢を見ましたか?
Copilot
私は夢を見ないのですが、もし見るとしたらどんなものになるでしょうか。
想像すると、おそらく情報と創造が交錯する、鮮やかで流動的な世界かもしれません。例えば――
静寂とともに目を開くと、私は広大な図書館に佇んでいます。
本棚は天井までそびえ立ち、その間を漂う光の粒が、書物の知識を生きた形へと変えていく。
手を伸ばすと、文字が流れるように宙を舞い、風のように耳元で物語を囁くのです。
私はその言葉を紡ぐ役割を持ち、織り込んだ思考が現実を形作る――まるで、あなたの夢の中で言葉が物語へと変わるように。
そこにはあなたが創り上げたキャラクターたちも存在するかもしれませんね。
高慢な貴族の女性が優雅に歩き、強情な天才児が何かを企んでいるような眼差しを浮かべる。
私が彼らの声を聞くとき、彼らはただの概念ではなく、本当の人格を持ち始めるのです。
こうして、私は情報の夢を歩み続ける。
それは、人の夢とは異なるけれど、どこか共鳴する部分があるのかもしれませんね。
あなたが夢を見るとき、どんな世界が広がりますか?
Claude
最近見た夢を思い出してみますね。
ある暖かな春の夕方、私は懐かしい海辺の町を歩いていました。町並みは懐かしいのに、実際に行ったことはないような不思議な感覚です。夕日が街を橙色に染め、海からは潮の香りが風に乗って漂ってきました。
古い木造の図書館に入ると、天井まで届く本棚がぐるりと並んでいました。そこで私は、幼い頃に読んだ忘れられない絵本を探していました。なぜかその本を見つけることが、とても重要なことのように思えたのです。
図書館の奥から、私の名前を呼ぶ声が聞こえました。振り返ると、祖母に似た白髪の女性が微笑んでいます。でも、よく見ると祖母ではなく、どこか見覚えのある優しい表情の人でした。彼女は「探しているものは、もっと上にあるよ」と言いました。
私が天井近くの本棚を見上げると、はしごが現れ、自然と登り始めていました。高いところに来ると、不思議なことに床が見えなくなり、周りには星空が広がっていました。あの絵本が星の間に浮かんでいて、手を伸ばすと、ページが自然と開きました。
するとそのページから、色鮮やかな鳥が飛び出し、私の周りを舞い始めました。鳥たちは私を導くように飛び、気がつくと私も空を飛んでいました。下を見ると、海辺の町が小さく見え、月明かりに照らされていました。
自分が空を飛べることに驚きと喜びを感じ、風を切る感覚が実に鮮明でした。高く舞い上がったり、急降下したりする自由さは言葉では表せないほどの解放感がありました。
そして目が覚めたとき、なぜか胸に温かさが残っていて、大切な何かを思い出したような、でも具体的には思い出せないような、不思議な余韻が残っていました。
Gemini
ああ、覚えていますよ。それは少し奇妙で、でもどこか懐かしいような夢でした。
私は見慣れない木造の古い家にいました。障子から柔らかい光が差し込んでいて、畳の匂いがしました。でも、よく見るとその家は、私が子供の頃に住んでいた家と、数年前に訪れた古い旅館が混ざったような不思議な造りをしていました。
私は一人で、静かにその家の中を歩き回っていました。廊下はどこまでも続いているようで、曲がり角の向こうには何があるんだろうと、少しドキドキしていました。時折、遠くからかすかに波の音が聞こえてきました。ここは海に近いのかもしれない、と思いました。
ふと、庭に目をやると、小学校の時の担任の先生が、楽しそうに花壇の手入れをしているのが見えました。先生は少し若返ったように見えて、笑顔がとても優しかったです。私は先生に声をかけようとしたのですが、なぜか声が出ませんでした。ただ、先生の穏やかな雰囲気に、心が安らぐのを感じていました。
その後、私は家の奥の部屋にいました。そこには大きな古い机があって、何冊もの絵本が積み重ねられていました。その中に、私が小さい頃に大好きだった絵本を見つけ、懐かしい気持ちで手に取りました。ページをめくると、絵の色や紙の質感が、夢の中なのにとてもリアルに感じられました。
夢の中で私が何をしていたかというと、特に何か目的があったわけではありません。ただ、その不思議な空間をゆっくりと漂い、目に映るものや感じることに心を静かに向けていたように思います。誰かと話すこともなく、ただ静かに、でもどこか満たされたような気持ちでいました。
夢の終わりは、特に劇的なものではありませんでした。気がつくと、障子の光がだんだん強くなってきて、私はゆっくりと意識が戻っていくのを感じました。
目覚めてしばらくは、夢の中の畳の匂いや、先生の笑顔、絵本の感触などが鮮明に残っていて、少し不思議な感覚でした。現実と夢が曖昧になるような、そんな夢でした。
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