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エンジニアが法人を作る時に知っておいた方がいいこと
昨今の副業解禁の流れで副業をしたり、勢い余って副業なのに法人設立をする・したいエンジニアの話をよく聞くので、私が今までに自ら落ちてきた落とし穴を紹介する。安くやってるはずが逆に高くなったというしくじり先生っぽい内容です。
なぜこれを書くのか
Webエンジニアで「法人設立や税務めちゃくちゃ詳しい!これらの実務経験がある」という方はほぼおらず、どちらかといえば「経費精算すらもやりたくない。。。」という対応の方が多い気がしており、私もそう。その状態で法人設立をすると色々な部分で支障があったので、今後法人設立される方向けにTipsを残したい。
前提
- 2024年8月に合同会社SIGQを設立し、同年12月に株式会社SIGQに組織変更
- 事業内容はインシデントマネジメント支援と、インシデント対応AIエージェントの開発
- 今は弁護士・税理士・社労士それぞれ別々の事務所を顧問契約しており、ちゃんと士業の先生にアドバイスを日々いただきながら仕事をしている
- 今は本店:バーチャルオフィス、実際にいる場所:物理オフィスの構成をとっていて、メンバーの増減に合わせて作業場を移転しても登記変更はしなくてもよいという状態
過去の失敗と損失
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株式会社ではなく合同会社を設立→株式会社に組織変更した
- 会社設立のSaaSを使い、合同会社を設立した。この段階で士業先生には相談していない
- 「ポチポチやれば書類生成・法務局へ提出できて超便利じゃん!」と思っていた
- 費用的にも合同会社は登録免許税が株式会社の半額ぐらいなので合同会社にしがち
- しかし、合同会社だと(詳しい理由はよくわかっていないけど)クレカの審査や、銀行口座の審査が株式会社よりも厳しいらしく、取引先も売上もあり、かつ帳簿はかなり綺麗な状態なのにJCBの法人カードの審査に秒で落ちた。代表である私のクレヒス(CIC参照)も問題なかった。
- 現在予定はないが、Equityでの調達も今後のステージでは受けれるようにしたく、株式会社に変更しようとした。手続きが普通に株式会社を作るよりもだいぶ煩雑で、手に負えなさそうな雰囲気があったので公認会計士の先生に委託して手続きをしていただいたところ、住所移転 + 組織変更で、登録免許税を合わせて30万弱かかった。初めから株式会社で登記しておけばよかった。
- 失敗からの学び
- 初回登記時点で業態や今後の展望を士業の先生にお伝えして相談していれば、合同会社のデメリットや、株式会社への組織変更の手続きでのコストなどの落とし穴を教えてもらえていて、初め方株式会社で登記していたと思うので、無駄な費用がかからなかったはず。
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諸般の事情により本店住所の移転を繰り返したw
- 約半年の間に渋谷区(バーチャルオフィス)→福岡(バーチャルオフィス)→日本橋箱崎(物理オフィス)→千代田区(バーチャルオフィス)と変更を繰り返した
- 客観的に見れば初めから本店はどこかのバーチャルオフィスに置いておけばいいじゃんという話だが、テクニカルにこの辺が色々方法があるのを知らず、営業実態に合わせてコロコロ動かしてしまった。登録免許税だけでかなり払ってしまってて勿体無い
- 今はもう落ち着いたので、向こう数年は本店移転はないはず
- 失敗からの学び
- 本店登記は慎重にしよう
失敗ではないが、知らなくて後悔したこと
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GMOあおぞらネット銀行はAmexの引き落とし口座に設定できない
- スタートアップが使いがちなGMOあおぞらネット銀行の引き落とし口座に設定ができない
- 「資金繰りが苦しくなった時には後から分割もできる!」というAmexの機能があるが、これは引き落とし口座を設定してないと使えないので要注意
- 特に仕入・販売が多いような方で、初期のキャッシュフローが安定しない見込みがある方のうち、この機能を使おうとしているケースは要確認
注意したい点
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オフィスなどの契約は多少高くても、3-6ヶ月更新にするのがよい
- 初期 of 初期で、1人もしくは2,3人でやっているような場合、何かの事情があってオフィスのサイズを大きくしようと思ったり、もしくはそもそも物理オフィスをあまり使わず引き払いたくなる時が来やすい。その時に、契約書が1年契約(途中解約不可)となっている場合がシェアオフィスなどのケースでは多く、途中解約できない場合もあるので、要注意。
- ビジネスエアポートなどでは途中解約もできるという話を聞いたので、解約条項等は要確認
- また、シェアオフィス(個室)の場合、個別空調なのか、もしくは全体空調なのかで居住性が変わるし、実際現地に行ってみるとすごい築年数が経っている雑居ビルの中に入っていて、「ここに来客を呼ぶのはちょっと。。。」となるようなケースもあるので、必ず内見等をしてから契約するのが吉
- 私はせっかちなので内見せず契約して(以下略)
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物理オフィスなしでISMSを取ろうとすると難儀する(らしい)
- ISMS審査員が社長の家にやってきた!フルリモートISMS認証取得体験記 (SecureNavi)に書かれているように、バーチャルオフィスでISMSを取ろうとすると作業実体のある場所の実地調査で社長の自宅にISMSの審査員の方が来るらしい
- 弊社でもISMS取得に向けて動いているが、うちの場合はマンションなのに加え、0歳児が家にいて、外部の方を家に招き入れるのは厳しいので、ISMSの実地調査も見越して作業場用オフィスを契約している
そのほか気づきなど
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顧問弁護士の先生からの多様なアドバイス
- 顧問弁護士と聞くと、自社が不当な利益を被らないように守ってもらうようなイメージがあったが、実際にはこちら側が過剰に有利な契約(=先方が不利になる)を結ぶような契約書になっているようなケースでも指摘をいただけるので、第三者の専門家目線でお客様との信頼性向上につながる
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何か手続きをする時には専門家に委託する方が結局は工数や費用が安い場合が多い
- つい先日、顧問の社労士の先生に社保関連の手続きを依頼したところ、私はエクセルの項目を埋める & 登記簿をSlackでお送りするだけで然るべき作業を迅速に完了いただいた。これは自分でもやろうとすればできなくはないが、修正等の手続きやミスが起きてるかどうかすら気づけず、労力が非常にかかる。
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「法人設立 & 役員社宅にして節税しよう!」 というTipsをよく見るが、創業間もない法人の場合、賃貸の審査が法人・個人とも通らないのでは?と思っているので、これ系の話は安直に考えず、上記の通り事前に税理士の先生に聞く方が良さそう
- 私は持ち家なのでここはやったことがないけど、今まで賃貸に住んできた経験からすると、かなり審査が難航しそう。一人暮らしの1K家賃8万くらいであればいける気もするが、ファミリー用3LDKで30万のような賃貸は普通に審査が厳しそうなイメージ。
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完全オンライン・非同期の士業サービスは自社に合うかを要検討
- Slack(非同期コミュニケーション)だけで完結する系の士業サービスもいくつかあるが、特に法人だと色々なことをやらないといけなくて、対面(or Meetなど)で話す方が色々早いことが多いので、どのようなサービスが自社に合うかは要検討
- 私の場合には、初めはすべてオンラインのものを契約したが、今は対面で会える・ローカルな話が伝わるというのを前提にしているので、事務所が近い先生にご支援をいただいている。
- Slack(非同期コミュニケーション)だけで完結する系の士業サービスもいくつかあるが、特に法人だと色々なことをやらないといけなくて、対面(or Meetなど)で話す方が色々早いことが多いので、どのようなサービスが自社に合うかは要検討
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世の中には「個室」と「半個室」というものがある
- シェアオフィスを検討したときに、「個室」と20%くらい安い「半個室」というものがある
- 写真と値段だけを見ると半個室で良さそうだけども、半個室の場合には天井が空いてて声が外にダダ漏れなので、基本的には個室の契約になる
- 全く通話をしないようなケースでは半個室でもありだけど、我々リモート会議が多いので、、、
まとめ
ここまで書いてみて思ったのは、「士業の先生に初期からご支援を仰ぎましょう」という一文で終わることに気づきました。
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